337 第二:「王編十六章が十一・“忘却の大河を逝く蒼の花弁”」(4)
どうぞ。
西部外縁のベンチに座っていると、何度か見た強い人たちがやってきた。かなり本気で戦う予定で集まったような、ほんとうにガチの集団のように見える。
「助かった。俺たちは、どうしても警戒されるからな」
「いいですよー。虫のお肉といろいろお酒、あと虫こぶ? です」
「虫こぶか……。環境が厳しいのは、分かっていたが。よく食べるな」
「美味しいみたいですよ」
割ってから中の毛が生えた部分を取り除くのがいちばん美味しい食べ方で、できれば洗った方がいいらしい。
単刀直入に、とディリードさんは横に座った。ちょっと距離があるけど、彼氏持ちなのはこの人も知っているみたいだから、気遣ってくれているようだった。
「知っているかどうかは知らないが……俺たちは、ディーコノジーヴに出入りできる。そこで、三司教のひとり「クルズルフ=グルウナフ・ティゴノリオン」に、依頼を受けた」
「司教の人と、知り合いなんですね……」
宗教都市ディーコノジーヴは、モンスタージョブを習得したプレイヤーはそもそも進入禁止になっている、かなり厳しい場所らしい。BPB本隊はそれを実績でねじ伏せ、司教とも知り合いになったおかげで入ることを許可されている、と聞いたことがある。ゾミアさんも付き添いくらいは呼んでくれるけど、実力を求められたことはまだなかった。
「簡潔に言うと、外なる世界から魔王の手先が攻めてきている。俺たちが露払いをするから、幹部本人を倒してほしい」
「ん、ディリードさんが最強なんじゃあ……」
「敵の能力は「忘却」。リアルタイムで、ものやスキルを消す。数の上限はあるだろうが」
「あっ、なるほどー。いつですか?」
「明日の予定だ」
六体くらいのキメラが周りにいて、それが目印になってはいるけど、本人……「王編十六章が十一・“忘却の大河を逝く蒼の花弁”」というモンスターは、人型でちょっと小さい。ちょうど私が得意なタイプで、能力もめんどくさい。
「司教は情報を隠したいようだが、配信をしてほしい。露払いには「水銀同盟」も来てもらう……カメラを借りるといい」
「BPBがカメラ使ってたら、私にも貸してください。辻映りしちゃいます」
「……主役を取られるな。まあ、いい」
「ところで、どうして隠したい情報を明かしちゃうんですか?」
今後は隠せなくなるからだ、と表情を変えずに言う。
「幹部は十六人、これが定期的なイベントとして行われるなら、正教会が情報を隠しきれるわけがない。今回誰も知らないのは、地図が消えているからだ」
ディリードさんが示した地図とその地点の写真には、見覚えがあった。
「これ、〈デザストル・クロウ〉使ったところですか?」
「そうだ。あの後すぐあたりから、影響範囲の地図が消えている。誰も立ち入っていないんだ。あんたは地図をよく確認しているか?」
「いえ、あんまり……」
「フェルニコラズがほぼ南端。そこから北に進んでゲノ=メニエフとハイムノアがあるが、よく見ると不自然に避けている地点がある」
ずっと東にばかり進んでいて、中央部から西部にはひとつも街が見つかっていない。ちょっとだけ近付いた場所にフィゴ・サ=ヴィオがあるけど――
「この河。これなんですね」
「砂漠地帯の、地下の川だ。地上部分に木が並んでいるから、よくわかる」
実際に水がないと使えない能力のようだ。水流の魔法なんて山ほどあるけど、やっぱり本物を使った方が範囲も広くなるらしい。
「〈道化師〉は山ほどいるが、強いのはフィエル、お前くらいだ。頼んだ」
「任されました!」
さっと立ち上がって、荷物をその場に置く。
「それじゃ、失礼しますね。明日の準備があるので」
「……二十一時だ。リアルの予定もいいが、こっちも大事にしてくれ」
皆さんに手を振って、私はログアウトした。
じゃ、デート書くね……




