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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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334 バレットスピード・ファイト!

 どうぞ。

 うちのギルドのブレイン二人に、敏捷の原理をちょっと聞いたことがある。事実上光速にたどり着くことはできないとか、早ければ早いほど空気抵抗が大きくなるとか、「早くなる」ことにはデメリットがあるはずなのに、VRMMOではいくら早くなっても何も起きない。


 いったい何が起きているのか、と二人に聞いてみても、答えはあいまいだった。


「うーむ。ステータスというのは「結果を起こす力」であって、過程とは関係ありませんからなー。あたしの理解ではその程度のことしか言えませんぞ」

「とっこの説明通りだと思うよぉ。“計算上そうなることが決まる”。ほかの計算式に代入する数字だから、その数字に意味があるわけじゃないよ」

「じゃあえっと、物理演算? とも、あんまり関係ない?」

「起こる結果が計算に入ってたら関係ある、って感じかなぁ。ジャンプしてめっちゃ空気を切り裂いてる感じがするのは、あれは雰囲気づくりだし」

「まあ、厳密に計算が行われていたら、フィエルさんは一回ジャンプしただけでばらばらに吹き飛びますからなー」

「えー……」


 針弾は、がんばった私と同じくらい早い。敏捷でいうと千超え、〈アクセルトリガー〉でかわせるところを考えると1060ちょっとだろうか。


 キャラは、敏捷の数字そのままで動かせるわけではなくて、筋力と器用とのバランスでちょっとずつ出せる速度が変わっていく。筋力は低くていいけど、器用が低いと自分のスピードが制御しきれなくなったりするから、【愚者】のステータス補正はわりかし合理的だ。


「ザッザ」

「めんどくさいなー……これも楽しいけど」


 一発ずつのいちばん早い針弾と、降ってくる軌道のちょっとだけ遅い針弾、すさまじく早いけど狙いは雑な針弾をどばっと出す爆弾。久々にポーションを使うくらい、相手は危ない手をいっぱい出してきている。ガンマンと射手とスナイパーの全部を備えた、たぶんホウイさんがいたらもうちょっと楽な相手だったんだろうな、と思うくらいの難敵。


 足元に打ち込まれた針弾は、基点だ。その後の爆弾を食らわせるための布石として、砂ぼこりがもうもうと舞い上がる――ぼんっ、ぼんと小さく鳴った爆弾の落下を聞き逃さず、あえて地面に伏せて砂ぼこりを煙幕にした。そして、〈アクセルトリガー〉で思いっきりボールを蹴り飛ばす。


 爆弾がドカンッと弾けた瞬間に、〈ヴォルカナイト〉を使った。ボールはものすごい勢いで移動しているから、それを蹴るために私も引っ張られる。針の雨が降って、私が隠れたままだったらそこにいたであろう場所が剣山地獄になった。


「ザー、ッザ」


 砂ぼこりが薄れ始めた瞬間に、カクタスドールは私がそこにいないことに気付いた。私はもう、後ろにいる。


「遅いよー」

「ザッ!!」


 いかにも刺さりそうな針だらけの体を、ボールを間に入れて蹴る。ぼむんっ、という音にはあんまり手ごたえを感じないけど、浮かせた隙に出した分身が使った〈熔充送戯〉が敵を深く切り裂く。固定アンカー用らしい足の針を伸ばして、浮かせたボールに無理やり着地する……弾倉代わりらしい腕の大きな針の列は、右に五つ、左に十いくつか残っていた。


「ザァッザ!!」

「勘違いしてるみたいだけど」


 直接撃ち込まれた針の雨を、〈ランダマイズスロー〉で迎撃した。


「ちゃんと迎撃できるんだよー?」


 最速の針弾は、私にとっては(・・・・・・)無視できない威力だ。矢の一発で倒れてしまうような紙装甲だから、これだけ必死に避けているし、真正面からの迎撃もしない。まっすぐ撃ち込まれた針弾を〈ヴェンジェンス・キッカー〉で跳ね返し、目に突き刺さったそれを見ながら、ボールを収納した。


「ザーザ……」

「それにー。舞台は仕込みが肝心、ってね!」


 落ちていくサボテンは、さっきとほぼ同じ位置に到達する――時計の〈ホット・アラーム〉がちょうど起動して、〈熔充送戯〉の十六連撃がもう一度命中した。腕が吹き飛んだサボテンを、ボールごと蹴り上げて空中へご招待する。


 残った針弾を撃ち込んでボールを壊そうとしている……ひとつ壊れたけど、次のボールが続いた。


「ザッ、ザ……!!」

「ふふふ。このボール、消すと殖えるんだよね」


 サイオウクワガタが落とした「明星エントロピー:ターミナル次代」は、破壊されても数が元通りになる、とんでもない性能を持った武器だ。しかも、セットになったボールのうちひとつが破壊されるごとに強化される〈片割り悲嘆歌(そろうか)〉も発動して……与えるダメージは、最大で十倍にまで膨れ上がる。


 どぶむん、とまた蹴ったボールの高さはじゅうぶん、私は構えに入った。


「〈どど怒涛潰終(どとうついつい)エル〉!」


 すぅーっと浮かんでいった私はボールの上にまで導かれ、数珠つなぎになったボールたちを蹴る。ズドドドドドンッッ、と恐ろしい勢いで衝突したボールたちは、カクタスドールが元いた岩山を粉々に破壊し尽くした。


「……〈リンクボルト〉」


 腕を一瞬でつなぎ直したのか、軌道が整ったからか。最期の針弾を〈アクセルトリガー〉で横に避けて、私は幻影軌道を順番にゆっくり降りていった。

「カクタスドール」

三等級

植物・花


 タウルヴァンス大陸の砂漠地帯に広く生息する、サボテンのモンスター。ジャックオーランタンのような顔のある人間サイズのサボテンで、ジョブでいうと〈猟師〉あたりに近い戦闘スタイル。ほんの数種類しか技を持たないが、場所によってはほとんど気付けないまま全滅することもある、きわめて危険な相手になる(後述)。


 花が咲いているときは全ステータスが強化される凶暴化状態、実がついているときは種を体内に埋め込む「寄生」の状態異常を扱うことができる。基本的には花付きがもっとも危険で、花粉の煙幕による猛毒と粉塵爆発による大ダメージを矢継ぎ早に繰り出す文字通りの怪物と化し、戦闘時間が長引くと実のついた個体を呼び出すこともある。また、目がいいため感知距離が非常に長く、五百メートル近い距離の狙撃を初撃とすることもある。


 テストプレイ時にこの強すぎる性能が話題となり、また比較的街の近くにも出現することから「プレイヤーがまったく介入できない状態で街のほとんどが壊滅する可能性がある」として、街の近くにはサボテンを食べる昆虫やトカゲが山ほど出現する設定が成され、かれらに狩られまくることになった。また街の近くの個体は、「敵に向かって自分の組織の一部が付着した岩を投げる」という非常に目立つスポッター設置行動を行うよう調整されたため、これに気付いて対処することができれば、初見で即死することはない。街から離れている場合はこの行動を行わないため、クソモンスとして有名。

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