331 強さを目指すなら強いのとぶつかるべき(らしいよ)
どうぞ。
ログインして、カードを買いにTTの大陸支部……「フィゴ・サ=ヴィオ」という草原とオアシスの街に来た。ほど近い岩場を隔てるとすぐに砂漠で、草原地帯の生き物と砂漠の生き物が両方いるから、狩りをする拠点には向いた場所だ。
「はー。あのおっちゃん、結局なんも買わはらへんし! 丸損やわぁ、いや何にも損してへんけど。意味わからへんわ」
「息子を勇者にしようとした、って言いましたけど……いろんな意味でおかしくないですか?」
「それはもう、さんッざん言うたやんか。おかしいねんて」
「なんでしたっけ、スパイス? の人も、けっきょく勇者になれてないとか」
強い剣を持ち、自分は勇者だと宣言すればそうなる――という、あんまりにもぶっ飛んでいてむちゃくちゃな理論を掲げたどこかの富豪は、検証の結果、たぶん息子さんを勇者にはできなかったであろうことが判明した。思い出したけど、「素パイスー」という新しい変態ギルドの人も、とくに変化していないらしい。
「器臓は売れに売れとるし、封印カードの売れ行きも回復しとるね。安い魔石はワルイダーがほぼ独占しとるけど、新しぃ開拓した方の商売で儲かっとるし」
「ぼちぼちでんなー、じゃなくて儲かってまっせ! って返事できるんですね」
「商人がそこ素直に言うたらアカンて、今どのくらい儲かっとるかは「ぼちぼち」でごまかすねん」
「ややこしいなー」
商売の秘密は、何も機密情報だけではなく、今どのくらい羽振りがいいかもあまり見せびらかすべきではないらしい。それはそうなんだろうけど、涼花さんはほかにも何か言いたいことがありそうだった。
「あ、そうそう。うち、ちょい強ぉなったんやけど……一戦付き合ってくれへん? 強い人と戦っといた方がええかなと思て」
「ん、派手に壊してもいい感じのやつですか?」
「ええよー。コストはまあまあかかるんやけど、すぐ作れるもんやし」
「んーと。〈呪術師〉で作ったやつ……「忌餓穴喰」ですか」
そうそう、とうなずいている。
「前までは呪いを保存せんと一発で使い切っとって、それで火力は足りとったんやけど……やっぱり、個人で戦えへん後衛のまんまではいられへんのよ」
プレイヤーは死なないから、プレイヤーを殺しても無駄だと思われがちだけど……予定をきっちり詰めている商売人は違う。予定時間に間に合わないようにと暗殺されて、取引を逃すことが何度かあった今は、涼花さん一人でもある程度戦えるようにならなくてはいけなくなった。
「っちゅうわけで、ちょっと胸貸して?」
「ハグですね」
「ちゃうて! あっ、案外心地ええわぁ……アンナちゃんと毎日こうしとるん?」
「ですよー。バニースーツ固くないですか?」
それ含めてやんか、と涼花さんは堪能していた。いつも和装だからちょっと分かりにくかったけど、私よりも胸があるし、体ももっちり系だ。
「おっとっと、見失うとこやったわ。今日は空けてあるねん、一晩中でも戦えるで。荒野のところ出よ、久々に白バニーさんが戦っとるとこ見たいし」
「ふっふっふー、いいですよー。ぜひ、楽しんでもらわなきゃ」
ふたりで並んで街を出て、私たちは荒野で向かい合った。抹茶色のバニースーツから着替えて、いつもの白バニーに身を包む。赤と青の和装ドレスを身にまとう涼花さんは、黒字にオレンジと紫のグラデーションが美しい、チョウのような振袖風のミニドレスへと着替える。
「足出すぎとってあんまり好きやないけど、強いねんなぁ。いつも足出せとるフィエルはんはほんま、えらいもんやわ」
「自信持ってるとこですから!」
さて、と――吹いた風に揺れる服のすそが、何かを隠しているのが見えた。
涼花さんはリアルもむちむちで脚がちょっとふといのを気にしているので、露出が多い服装は苦手。フィエル「はん」って読んでるのは「いろいろとよーやるわー」という思いあってのことですね。肩幅がっしりめなのに肩回りの露出多いのとかなんでなん……?(元新体操選手だからしゃーない)とか思っている。




