326 第四:「勇者検証-正誤」(2)
どうぞ。
状況を整理する。
(最初の「勇者ジュリオ」は、たぶん地下を旅してるよねぇ。あの人がいちばん真っ当に勇者してるし、ちゃんと応えてくれそうだけど……あの人の心は、もう死んでる)
フェルニコラズの街で、呼び出された偽神を止めるために魔剣の力を完全開放し、自分をも巻き込むことですべてを封印した、まさに勇者と呼ぶべき人物「ジュリオ」。しかしながら、彼は背負いすぎた――同情の余地などひとつもない人々をも救おうとし、自責の念で心を押しつぶされてしまった。彼にはもはや何もする気がなく、遠回しな自死のような旅路をひた歩いているものと推測できる。しかし、彼が死ぬことはないだろう。
(二人目。「享楽の勇者ヅィーブル」は……操りやすそうで操りにくい。【愚者】なら良かったんだけど、情報だと【常人】だし。良くも悪くもコミュニティーに縛られてる【常人】だし、交渉しづらいんだよねぇ)
情報によれば、剣と対話し戦いのルールも聞き出したという、もっとも勇者選抜に詳しく迫った人物であるはずだった。しかし彼は、ハイムノア地下のマフィアで十年以上チンピラをやっていた人物であり、あくまで街で起きたことにしか関わろうとしない。あの街で起きたなにがしかを止める気概はあるにせよ、すべての事件がハイムノアで起こる道理もない。事実上、彼は不戦敗扱いになるだろう。
(三人目、「天空大聖剣ウル=グランザー」のパイロット、リルゥ。どうとでも使えるんだろうけど……正教会の目が痛いなぁ。ワルイダーは何も言ってこないだろうから、あの子は実質正教会の駒)
フィエルが正教会とつながっているという風説は根強く、実際にコンタクトを取ることもたやすい。好感こそ持たれていないにせよ、ある程度の信頼は勝ち得ているが……だからといって、あちらの意見を突っぱねること、あるいは勝手に連れ出したり利用したりすることは、大きく機嫌を損ねることにつながるだろう。
盤面を乱す駒は、今のところふたつ。
(フィゴ・サ=ヴィオの富豪が、息子に剣を打って勇者にしてくれって言ってきた、か。完全にでっち上げでも勇者認定されるかどうかは、試してみてほしかったんだけど……あの人、案外人が死ぬの嫌がる人情派だからなぁ)
フトッタなんちゃらという名前の富豪は、息子が勇者になったという名誉を得るために密かに「タイトルタイルズ」と接触し、聖剣と見まがう名剣を与えて偽物の勇者を擁立しようとした。これは、たいへんに意義のある問題提起だった――システムにおける勇者とは聖剣を持つものなのか、勇者と認められた人物であれば力はあとから付いてくるのか。たしかに、勇者と呼ばれる人物の持つ魔剣は、プレイヤーから見てもなお尋常ならざる異常能力を発揮するが……それは剣に依存しているのか、それとも「勇者である」とされたものに異常能力が芽生えるのかは、検証すべき事項だろう。
(……最後は「赤い剣」。正直、あれは運営側のジョーカーみたいな気がしてるけど、カメンシリーズでもよくあるやつだよねぇ。出来レースで勝たせる前提で、異様に強く設定されてるやつ)
個人と剣そのものが結びついた「勇者」というシステムのなかで、唯一といっていい肉体を使い捨てるタイプの剣。先ほどの「剣と人のどちらが本体なのか」という疑問をややこしくしているのは、間違いなくこの「赤い剣」だろう。剣に異常能力が宿っているという証拠として機能するが、勇者をでっち上げようとした富豪の行動がさらに意味不明なものとなる。
(どっちかが間違ってるのか、どっちも正しいのか。もしくは、ルールなんて最初からなくて……エントリー人数も決まってないのか)
だとすれば、とアンナが考えた混沌は。
(プレイヤーが適当に強い剣を持ち出して宣言すれば、勇者ってことになる……?)
――その日のうちに、訪れることとなった。
今のところの勇者を『仮面ライダー龍騎』でたとえると……って思ったけど、考察混じりだし根幹のネタバレになるからやめときます。でも「赤い剣=克死の龍剣」がいろんな意味でオーディンなのはアンナが看破した通り。よそで使おうと思ってたネタとか、前フリで出したネタも使うので、まだ剣も勇者も出るし脱落者も……




