324 準備にはリラックスも入ってる(はず?)
どうぞ。
まだまだ夏の暑さは残っていて、けれど吹く風には涼しさも混じっているから、着る服にけっこう迷う季節だった。
「アカネっちー! こっちこっちー!」
「うわ、先に合流してる……」
「安心して、大した話してない」
「千紗、そのにやにやで信用できると思うー?」
演技を披露するデパートを先に見ておいて、誰がどんな位置から見ても楽しいように偵察するぜ、なんて言いつつ……仲良し四人組で遊びに行こうとした。ところが、墨帖さんがその場にいたのを星奈が巻き込んで、カオスなお出かけになった。
私の方が先に合流していたら、ある程度話の方向性は誘導できたんじゃないかなと思っているけど、そうもいかなかった。
「ねね、アカネっち。やっぱり墨帖さん、アカネっちのこと全身大好きだよ!」
「降夜さん、そういうふうに言われると僕が……」
「ハイレグ、好きなんですよね」
「そ、それはその、そうですが……」
今日は少しだけ涼しいから、春に来ていたフィッシュテールのスカートを穿いている。今日はパニエではなくてガーターベルトが見えているから、かなりの攻めっ攻めスタイルだ。
「えと、揺城先輩。私たちがいるのに、攻めで来たの……?」
「そうだよー。見せつけて牽制するっていうか」
「僕はあなた以外にはなびきませんが」
「うわベタ甘ぁー、入り込む隙間0.01ミリもないじゃんかー」
それで、といろいろ聞いたのだろう星奈に、情報を明かすように迫ってみる。ふふん、とドヤ顔の星奈は、楽しそうに語り始める。
「まず足がむっちりしてていいんだって。私たちも筋肉あるし! って言ったら、まだ柔らかさが足りないように思いますがって言われたー」
「へー。JKの脚より私の脚の方がいいんですね」
視線を逸らしている墨帖さんは、ティーン向けカジュアルファッションの店頭にある、マネキンの方を見ている。
「マネキンもえっちですけど、私の方がよくないですか?」
「針の筵ですね……」
どうにか鉄面皮を保とうとしていた。
二階に上がってしばらく歩くと、一階部分に広く開いた場所、それを囲むように二階部分にもベンチが配置された場所があった。
「む、ここ。このスペース、よく催事場になってて……ヒーローショーとか、マジシャンの人もやってる」
「だよね。前にやったとき、ウチらまだ中学生で……そのあとごたついてて、ムリだったんだっけ?」
「ごめんね、いろいろと」
「問題児多すぎでバラッバラな方が悪いし。烏野選手って他人行儀で言われてる時点でなんかさー、バラバラ感すごいよ?」
思いっきりグサッと刺された。ちょうど脂の乗った選手が少なかったこともあるけど、協調性がなさすぎた私たち世代には合同練習なんて、とコーチたちが判断したのだ。そういったわけで、個人としてはひとりか二人やったけど世代全員では一度もなし、演技が洗練されてきていい感じの高校三年のときは新体操から離れていて――といった具合に、デパートでのパフォーマンスは二年くらい途切れていた。
最後の年は大学生の部にいた人がやってくれて、人数はちょっと少ないながらもかなり質がよく、何人かが入ってくるきっかけにもなったらしい。
「ボールやバトンはかなり高く飛ばしていましたね。二階で見ていても迫力がありそうです」
「たまーに手を出そうとする人とかいるので、ちょっとだけ離してもらいますけどねー。私もたしか、小っちゃいとき見て興味を持ったとかだった気がします」
「えっ、そうなの!? アカネっちの幼少期、ぜんぜん聞いてなかった!」
「そりゃー言ってないもん。って言っても、小学五年生くらいから始めたから、ぜんぜんおっそいんだけどね」
ベンチに座って、映画の縦型ポスターや大型チラシを見ながら、ちょっと話すことにした。
JKと女子大生の脚は違う(変態目線)。なんか理想化されがちですけど、JKの脚ってそんなに良くはないんですよね。まだちゃんと脂が付いてないので、むちっと具合が足りないんだ。まあ筋肉はあるんで、喰うときには美味しそうかなと思ったりしないでもないんですが。




