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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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323 第五:「天空大聖剣ウル=グランザー」(2)

 どうぞ。

 それは、主のために存在する剣であった。よくよくタウルヴァンス大陸の伝承を集めてみれば、「人に味方する機械竜」といったようなものもあるのだが、大陸はあらゆる分野での天才が多かった土地である……何かしらの人形あるいはゴーレムの発展形、あるいはモンスタージョブの暴走とみられたまま、歴史に埋もれていた。


「これは、聖剣詐欺というか……なぜ聖剣なんだ?」

『吾輩は聖剣である。それ以上の理由はない』

「そ、そうか……それは失礼したな」

『さあ、我が第二の主よ。吾輩の内に入り、吾輩をいかようにでも動かしてくれ。吾輩は、君の命じるままに動こう』


 向こう側の空間は、マシンドックのような仕組みは何もない、ただの竪穴だった。そこに浮かぶウル=グランザーは、胸のハッチを開ける。


「でも、私……おうちもないし、みんな死んじゃったから、何もすることないよ」

「街に行って、誰かと暮らすのはどうだろう? 我々「秘密結社ワルイダー」は、君のためにどのような手間も惜しまない」


 ワルイダーの構成員に、孤児はおそらくいないが、精神的に孤立しているものはいる。そのような人々の居場所でもあるギルドであっても、しかし……NPCの孤児を育てることについて、責任を取れるとは言えない。


「街……かぁ。街にいても、いいのかな」

「私の知り合いには、正教会の重鎮と仲の良いものもいる。大丈夫だ」

「うむ。今もログインしておるようだど」

「すぐに来てもらおうか。……聖剣よ、この少女の考えを確認するために、翼を貸してはもらえないだろうか! すぐに済む話だ!」

『よかろう。彼女をただ遺跡に閉じ込めるわけにもいかない』


 ハッチの内部が光り輝き、ワルイダーの構成員とリルゥを内部に取り込んだ。竪穴をゆっくりと上昇し不滅遺構を脱出、砂漠の空を飛ぶウル=グランザーは、あくまで静かだった。


「おじさんは、何の仕事をしてるの?」

「おじさんではない、お姉さんだ。……今は静かに学び、より大きな組織を作るための準備をしている」


 大首領(ドン)ダ・ダークは、鎧から白く美しいドレスに着替えて、リルゥと手をつなぐ。


「さて、彼女は――来ているな、仕事が早い」

「横のが〈教会騎士〉か。転移ゲートはあるはずだが、連絡してすぐ……な」


 人間らしい服装で来いという注文に応えてか、ギルド「水銀同盟」の道化フィエルは、黒いパンツスーツで立っていた。横にいる女性はおそらく〈教会騎士〉、彼女が知り合いだと言っていた本人だろう。


「聖剣よ……君は小さくなれるのか? あるいは、彼女の中に潜めるか?」

『吾輩は、ひとつの“解”だ。ゆえに、このように――』


 すうっと光の粒子が寄り集まり、リルゥのペンダントの中に収納された。


『小さく収まることもでき、緊急時には意志に関係なく出てくることもできる。我が主よ、力が必要なときにはいつでも呼んでくれ』

「うん、わかった!」


 その光景を見ていた二人は、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「えっと、ワルイダーで子供を保護したって聞いたんですけど……変身ですか?」

「評判はあまり良くないようだけど、なぜ素直に引き渡すのかしら」

「それは、俺から説明しようかな。それほどおかしなことじゃない……」


 鬼蜘蛛が前に出た。


「どんな外道だって、「こうなりたくなかった」って思うもんだ。俺が望んでこうなったと思うかい? あんたにこうなれと言うと思うか」

「……子供にやさしい感じ、「カメン・ナイトランナー」みたいですね」

「あんたも観てたか……。まあいいんだ、子供には優しくする、それが俺たちのルールだってことさ」


 抽象的でぼやけたことしか言わない男は、ドンが少女を引き渡すところを見届けて、ゆっくりとワルイダーの仲間たちのところへ戻る。


「リルゥ。新しい暮らしと、新しい友達や仲間ができて……みんなを絶対に守りたいと思ったとき、聖剣を使うといい」

「ドン、でも私……何にもないよ」

「お世話をしてくれる人や、友達ができるさ。暮らしていくために仕事も覚える。新しいお布団に慣れたとき、仕事が少し早くなったとき、それが君の手に入れたものになるんだ」

「じゃあ、そのときに……それがなくなりそうなとき、聖剣を叫ぶんだね」


 白いドレスの女は、踵を返す。


「そうなるな」

「ドンはどこ行くの? この街に住んでるんじゃないの?」

「フフフ、我々は彷徨うもの、陰にあるもの。また会おう」

「あっ……!」


 ふっと転移して消えた「秘密結社ワルイダー」は、事実上「天空大聖剣ウル=グランザー」の支援者となった。


 正教会と「水銀同盟」「秘密結社ワルイダー」、三つの陣営から支援されることとなったウル=グランザーは……しばらくの間、沈黙を保っていた。

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