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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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321 第四:「聖剣検証」(1)

※おっさんが読書してるだけの回です


 いや、考察系のやつがランキング上位らしいって聞いたんで……まあその、どうぞ。

 情報集積ギルド「ミルコメレオ」のギルドマスターであるアルトマンは、プレイヤー随一の【賢者】として「礎石集会」にも加入している。ディーコノジーヴにある超大型図書館にも入ることを許され、そこで書籍を自由に閲覧する権利も得ている。


(そも、剣という物品はこのハーダルヴィードにいつから出現したのか。人類史とは違って、この世界には神が実在するわけですから……ねえ)


 鋭いものによってより大きなケガをすることを学んだ古代人が、鋭く割れる石ころを使って打製石器を作った……それが凶器の出発点であるとすれば、自然な発想からの収斂進化は、この世界でも起こり得る。しかし、ギリシャ神話におけるプロメテウスのように、天上に存在するものが地上にはなく、惨憺たるレベルの違いを知って持ち込まれる、といったこともあったのだろう。


(コーパスをわざわざ作らなくてよいのは、〈学士〉のありがたいところですね)


 書物を読むとき、あるいは遺物の碑文を解読するとき、単語に注目してピックアップできる特技を持つ〈学士〉は、頻出や多数出現などのソートも作ることができる。アルトマンは、「剣」という単語がいつの時代からどの程度使われているのか、この数日調べ続けていた。


 分かったことはいくつかある。報告すべき事項は、もう少し絞られる。


 まず最初に……驚いたことに、「原初の剣」という単語は、文字通りの「いちばん最初にこの世に現れた剣」という意味ではなかった。創世の七柱には含まれず、神とは見なされていない「戦火と殺戮の巨人」。かれは天を衝く巨体を誇り、一歩を踏み出すたびに火の雨が降り、息をするたびに炎が上がる、厄災そのものであった。しかし、巨人が神と見なされていないことには理由があった。その身に戒めと思しきものがいくつも巻き付き、刺さり、はめ込まれており、かれが振り落とす火の雨にはそれも含まれていたからである。


 ゴブリンを強化する実験に使われたという「原初の剣」は、天上の罪人であろう巨人を戒めるための、刑罰としての処置のひとつだった――かれが持つ身の丈に迫る凶器はすでに「剣」と表現されており、この段階で地上にも似たものが存在したことが示唆されている。


(出土品。木の棒に鉱竜の甲殻を貼り付けた、手斧に近い“剣”ですか……)


 恐れを取り払う意義を持つ物品は、原初の段階において、ヒトの手に余るモノを使用して製作される傾向にある。超古代、先史時代における剣は、現実における歴史とはまったく違うものだった……生活必需品からの正統な進化という意味では、よりよい進化をより早く遂げているともいえるやもしれぬ。


 そして、先史時代のあるタイミングで、世界を変革する出来事が起こった。


(……「宝物」。ドロップアイテムの出現!)


 人が貨幣を生み出し、信用という概念で以て実態に乏しい取り引きを始めてしばらくしたころ、創世の七柱とは違う「人の神」が新たに生まれた。「玉貨と天秤の神」が正教会の司教たちの夢に現れて以降、モンスターは死ぬときに「虚空より現る宝物」を落とすようになった……それがドロップアイテムである。


 ドロップアイテムの文明水準は、そのときの世界の水準と同じだった。ただし、過去に存在したものは現在にもまれに出現することがある。そのモンスターと完全に縁がないものは出現しないが、生息地や捕食・被捕食関係で縁を持つことはある。人から略奪するものたちが人の持つ物品をドロップするのは、そういった理屈によるものだった。


(しかし、「聖剣」という文言……これはなかなか出てこない)


 聖なる剣、神聖な剣、祝福を受けた剣、天より賜りし剣、神に授かった剣、などなど似たようなことばを用いてみても、スキルによる感知にはあまり引っかからない。もともと、聖剣に触れた書籍や伝承はそう多くないのだろう。


 何より注目すべき事項があるとすれば、そう――


(グノーシア正教会の説話集には、いっさい出てこない。聖剣は、正教会の権威とはまったく関係ないところにある、ということですか)


 どのような宗教であれ、己が教義に説得力を持たせ、信徒を増やそうという試みを行うものである。そのひとつに、「この宗教を信じていたので、こういう良いことがあった」というお話を集めた、説法に使われる教科書ともいえる「説話集」がある。


 現実におけるそれのように、誰がどのようなことをして列聖された、神を信じ抜いた男がある日救われた、一晩一心に祈り続けた少女が奇跡を起こした、といった説話は山ほどある。むろん、戦争に関する説話もあり、異教徒や亜人を倒したものが功績をたたえられたという話もあった。


 が、どの説話にも「聖剣」が出てこない。


(“聖なるもの”という概念にはかならず、神や精霊の存在が関わってくる。この世界でもそれは同じ……聖人認定は正教会が行い、神の言葉を聞く巫女も正教会が抱えている。だというのに……)


 仮定:「“聖なる剣”は、神が関わっていない剣である」。


 疑問:「“聖なる”というワードには、神が関わっている」。


 この矛盾を解消できるキーワードは、今のところ見つかっていない。


(可能性があるとすれば、ふたつ。「外なるもの」のうち、神に匹敵し神を名乗った存在の示唆……そして、あとひとつは)


 人類史でも頻繫に行われてきた、歴史の陰。


(……異教徒の虐待と抹殺、でしょうか)

 まだ検証も始まったばかりなんで、読めていない本とか行ってない図書館が考慮に入ってない点に注意。コーパス作らんでええやん! とか言ってるけど、逆にCiNii(論文が載ってる一次資料がどこにあるか検索できるサービス)ないのが響いてて、たどり着けてないものがわりと多い。

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