320 第三:「剣なきもの-Ⅰ」(1)
どうぞ。
「……ごめんやけど、言うてはることがよぉ分からへんわぁ。もっぺん言うてもろてもええやろか」
「だから! ヴぁたしが言っているのはだね、我が息子ブントロを世界が認める勇者にするために! 君たちに剣を打てと、そう命じているのではないか!」
「重ねてのご無礼になりますが。ブントロ氏のレベルはおいくつで? ジョブは」
「あの子はまだレベル5だ。ジョブは〈剣士〉! 十二の子供にしてはよくやっているではないか、将来性もバッチリではないかね?」
肥満体の金満家「フアト=ガロンジュール・ラブルンハ」は、【愚者】の陣営「ランブル・タンブラー」に所属する【常人】であった。一日で五億ディールを動かせるという、プレイヤーでもなかなかいないほどの豪商であり、今回「タイトルタイルズ」に持ってきた依頼の前金も一億ディールである。
彼との取り引きは、そもそもの伝手ができたフィゴ・サ=ヴィオでの活動についても有利になる、悪くはないものと言えた――その内容が「勇者を捏造する」というものでなければ、の話だが。
「うちら旅人は、いっぺん死んでもそんなに問題あらへんけど……息子さん、どんだけ努力しても追い付けへんで。誕生日プレゼントに最高の剣が欲しいっちゅうことやったら、百万も払ろてもらわんでも喜んで受けるんやけど」
「ヴぁたし個人が動かせる金額、前金一億に報酬六億! これではイカンと、君たちはそういうのかね……これは、金の問題ではなさそうだね?」
「うちらにも人の心くらいあるねん。偽物の勇者作って、そんでどうなるん? 聖剣には本物があるんやで、意味ないやろ」
「名誉! またとない機会を迎えた世界で、息子に世界一の栄誉を与えたいと! そう思うことが父親としてイカンというのかな!」
金銭でどうにかなる問題は、多いと言えば多いが……どうにもならぬ限界もある。現実でも縁故や才能に依存する問題はそうだが、ファンタジーの世界ではよりその傾向が強くなるだろう。
「ほんならご説明さしてもらいますけど……。今んとこいちばんええ武器を打つのにかかるお金は、だいたい六千万。それ以外の装備も整えたら三億。これで、武具はどうにかなりますけど」
「ほう、案外安いではないか。それで、“けど”というのは何だね?」
「装備してはる人がどんな力を持ってはるかにもよるし、弱い人を強うするより、強い人をもっと強ぉする方が簡単なんよ。畑に新しぃ野菜植えるんと、畑もなんもあらへんところに一から野菜実らせるんと、どっちが手間かかるやろか、て話やね」
武具とは、結局のところステータスの足し算をするアイテムである。単純な加算であれ、パーセント加算であれ、基礎となる本人のステータスが低ければ、さしたる意味を持たない。本体攻撃力が5のところに「攻撃力100+12%」と書かれた武器を装備したところで、ステータス上の数値は118となり、本人がもたらした数値の変化は1あるかどうかといったところにとどまるだろう。
レベル5の子供が装備できる武器としてはこれでも最高峰に近い補正であり、かつ攻撃力118など大陸に行けばいっさい通用しない程度の数値でしかない。死にに行くどころか、エサとして放り投げるようなもの、とした方が適切だろう。
「まずは合計レベル二百超え、中級から上級の複合系統ジョブもあった方がええと思いますけど。息子さんを思わはるんやったら、まずは基礎を何とかしてあげることやと思うわ」
「毛ほども役に立たなさそうな気遣い、痛み入るよ……フィゴ・サ=ヴィオでの君たちの活動が、今後もスムーズに進むといいのだがね!」
脅迫か、と……ある意味で予想通りの展開に、涼花は平静を崩さなかった。
「そちらさんにいろいろ卸さしてもろてるモン、いっぺんに全部止めたらえらい損害になると思いますけど。ざっとで目ぇ通してもらえます?」
「くだらん脅しを。……こッ、んぬごっ、ど……むぅおぉ……!」
「取り引き、止めさしてもろても構へんけど……どうやろ。この仕事は受けへん、って断るくらいやったら、許してもろてもええかなて思とるんやわ、うち」
享楽主義者の集まり「ランブル・タンブラー」は、封印カードで生きたまま輸送され、市場の奥で〆て解体された食肉・魚介の味を知っている。フィエルが教わったというこの方法は、昔から存在するものだとはいうが、いくらでもカードを作れる【愚者】がまじめに働くはずもない。自分たちで消費することも、飲み代のツケを払うために店に持ち込むこともあろう。
そして、最近になって増えた、金がなければ買わぬような小物や小さな家具のたぐいも、質や効果でいえば旅人の作ったものの方が優れている。技術の寡占がなければ、NPC産のものはすでに駆逐されているだろう……こういった物品が一瞬にして市場から引き上げられれば、困るのは誰か。
「弱い訓練相手を売ってほしい、死なへんくらいの冒険をさせて磨きたい、っちゅうことやったら、そんなに積んでもらわへんでも受けるで。うちらも鬼ちゃうし、けちな仕事で大金せしめよなんて思てへんから」
暴力を使う必要はない……対抗することも叩き潰すことも、一瞬で終わる。そして、この戦いで使うべきものは金銭だ。カネで頬を引っぱたき、カネで脅せると思っているのなら、失うカネを提示すればよい。こちらが金銭で買えないものについて告げたように……あちらも、金銭以上のものを喪うのだから。
「まず十万でどうやろ? お得やで」
なんかAI使用がどうのこうので揉めてるくさいですね。デジタル音痴すぎてそもそも使い方わかんないのと、スマホにもパソコンにも何も入れてないんで、これからも使わないんじゃねーかなと思っています。そもそも文章とか単語選び、ネーミングなどなど、自分の脳みそを上回らない時点で使う意味ないよね。
今回の「フアト=ガロンジュール・ラブルンハ」でいうところの↓
フアト=FAT
ガロンジュール=ガロン(アメリカで使われる嵩の単位)+熱量≒カロリー=「アメリカンに食いまくったときの熱量」
ラブルンハ=腹ブルン→は/らぶるん→ラブルンハ
→「めっちゃ食いまくって腹揺れてるおでぶさん」
みたいなのが一瞬で出力できるんならね、使うんですけどね。でもたぶん、今出せるのって文字単位での分解・再構成とか複数言語にわたった単語の合成とか意図を込めた単語の選定とか、まだまだ弱いんじゃないかなと。プロンプト一発でもっと面白いネーミングを出せた人がいらしたら、ぜひ記事なりにまとめて読ませてください。




