313 人力パワーは意外といろいろできる
どうぞ。
投げつけたカードが分身に変わって、影の上に着地する。ブワッと払いのけられた分身は、壁面に着地した。
「コウモリじゃなくて、フクロウかー。静かだね」
「羽音がしない仕組みになっていますから。私はいったん引っ込みます」
「おっけー、ありがとね!」
立体的な動きが苦手なフィーネは、壁や天井を跳ね回る戦いを苦手としている。またちょっと成長したフウカとライガは、当然のように空中を走っていた。
「いいよー、つよい!」
「キュウク!」「コロロル!」
イヴはすでに投げ出されて、河に水没している。どこにいるかはよく分からないけど、これもあの子の作戦のうちなのかもしれない。体重はそれなりにあるけど、スキルを編み出して泳げるはずだ。
飛ばしたカードには追尾性がないから、器用がかなり高い私が投げていても、ほとんどを回避されている。かなり器用に飛んでいるし、回避っぽい技も使っている、かなりの強敵だ。
「アズリ、止められそう?」
「ギュウグ……」
この感じだと「不可能とまでは言わないが、そうとう難しい」だろうか。早いし避けるしで、呪いも当たらないのかもしれない。頼めばだいたい何でもしてくれる印象だけど、今回は難しいようだった。
「なら、体張るしかないかー。地下だからボール使えないけど……もうしょうがないし、分身の数増やしちゃおう」
カードデッキを杯の美酒にひたし、そのまま美酒を飾剣にもかけて、〈スクリーンフェイス〉を使う。いつもの八体分身ではなく、その倍……十六体の分身白バニーさんが、わっと躍り出た。
「MPは……意外と、いつもと似た感じ? コスパいいんだねー、カードって」
素材が犠牲になりまくっていることから目を逸らしつつ、残ったカードを投げまくる。フウカとライガの攻めからも逃げおおせ続けている影のフクロウは、雷の魔法すら当たらないくらいの精度があった。ちょっと怖くなってくるくらいだ。
「でも! 戦場で発射される無駄弾もいっぱいあるし……使っていいよね!」
二体の「ハヤテノミズチ」がさっと逃れた一瞬に、〈ランダマイズスロー〉を投げ込む。一人あたりカードデッキふたつ、百八枚を十六分身で投げたから、1728枚のカードが空中に舞っていることになる。視界の色が変わるくらいの攻撃の嵐に、フクロウはとうとう翼の端っこに攻撃を受け、にぶった一瞬にいくつものカードを食らった。
「キュオウ!」「クルゥック!」
攻撃が止んだ瞬間に突撃したフウカとライガが、交差するようにフクロウを切り裂く……もう少しだけ、浅い。追尾性が高い魔法を、と思っていたらイヴからの通信が入った。
『マスター。水底で二枚貝に捕まってしまい、脱出できなくなりました』
「え、作戦じゃなかったの!?」
『体内にダンジョンを持つ、特殊なモンスターのようです。そちらが終わり次第、救援をお願いしたく』
「いいけど……もうちょっとかかるかも」
意外なタイミングで攻撃を仕掛け、どや顔で勝利宣言してくれると思っていたけど、そんなことはなかったようだ。
「フウカ、ライガ! 速攻で終わらせたいから……どんどん吸収しちゃって!」
「キューウ!」「ココッ」
風と雷をそれぞれ宿していて、近い属性のものを取り込むともっと強化される二人は、もっと成長すると、自分を有利にするためにと天候を変える魔法も覚えるらしい。それを、今は私が使う。
「〈ウェザースコール〉っ!」
屋内では雨は降らない、なんてことはない。曇天に雷雨、暴風という連想ゲームみたいな形で二人は強化されて、速度とパワーを上げていく。分身たちがカードや斬撃や魔法を飛ばすたび、フクロウは全力で避け続けているけど、少しずつ判断力が鈍っていく……ほんとうはAIに疲れなんてないんだろうけど、疲れ具合でパターンが弱体化しているのだろうか。
ついに当たった一撃が、ドドドドッと続いた攻撃とミズチたちのとどめにつながる道を拓いた。フクロウはふわっと消えて、どうやら上にあった巣に集めていた骨を集めていたフネカリたちが、勢いづこうとしている。
「次行くよ! ごはんもっとあげるから!」
分かっているのかいないのか、くるっと丸まってフネカリたちは収納されていった。
ダンジョンはけっこう途中で枝分かれしていて、なんかへんなところで連鎖的な入れ子構造に出くわしたりもします。まあ【愚者】の幸運を以てしてもそんなに出会えないんですけども。




