311 それは煉瓦を取りこぼすかのごとく
どうぞ。
グダグダに終わったゲーム内イベントは、その後の経過において、べつだん大きな影響をもたらすことはなかった。まず街があるか否かでNPCが来るかどうかが判定され、その出来栄えを判断されるという前提が覆った以上、評価の揺らぎなど起きようがない。学校に通っていない人物は、テストの点数についてとやかく言われることなどそもそも起き得ないようなものだ。
では何が起きたのかといえば、鉱竜の版図が徐々に広がり始め、地下にある異常結界空間「反転構造」がいくつか崩壊を始めた……たったそれだけだった。
(……正教会が干渉するようなことは、なかったようですね)
すでに滅びた「フェルニコラズ」地上部分の港を後にする船は、ラビウム島における正教会の支部がある「ディーコノジーヴ」に向かっていた。ラビウム島全域で活動している〈教会騎士〉ゾミアは、これらの事案がグノーシア正教会にはさして関わりのないものであると認定し、撤退した。
無辜の旅人同士の対決は、正教会にとってはそれほど注目すべきものではない。支柱たる神の声によれば「旅人が街を築こうとしている」とのことだったが、その声を発したのは「観劇と哄笑の神」……人の世が成立したのちに生まれた「人の神」の一柱、しかも面白いものを見るために、と観察対象を突っつき回すようなことをする、タチの悪い神だった。信頼性はそれほどない。
「教姉ゾミア。あの破壊の痕は、すべて人のもたらしたものだそうですが……」
「教弟ノルド、そう心配することはありません。【使徒】は、旅人に対してはほとんど無敵なのですから」
基本的に、旅人は隠しステータス「罪科」を恐ろしいまでに溜め込んでいる。巷で「聖女」と言われる彼女がなぜそう言われるのかと言えば、無意識的に感じられる罪科の数値が極端に低いことに加え、各種補正による初期好感度がとても高くなっているからである。
(とはいえ、それは……キャラと言いましたか、肉体の話。体を切り替えられる場合は、主にその罪の主犯になった方が罪を背負うことになる)
フィエルという、はじめて罪科が十億を超えた旅人のことを思い出す……あれは、自分の築き上げた信頼を使って他者に罪を犯させたため、「フィエル」というもっとも信頼のあるものがもっとも大きな罪を背負うことになった。主犯としての加算も含めかなりの数値だったが、不動産に対する損害賠償はかなり進んでいる。
「空を切り裂く光。あれほどのものが使えるとは……」
「せいぜい偽神程度のものでしょう。真なる神や、外なるものの中でも……【異神】が顕現すれば、その違いは分かります」
ノルドはまだ、経験が浅い。真に恐るべきものを目にしたことも、信仰を疑うほどの惨状に出くわしたこともない。ほんのわずかな揺らぎはあれど、それが正教会を裏切ることにつながるほどとは思えない……以前のような大事件は、避けなければならない。
「何より、あれらの痕跡はありませんでした。それだけでも、喜ばしいことです」
「間違いありません。船室に戻ります、教姉ゾミア」
沈療死施が、タウルヴァンス大陸で活動している疑いがある――目撃者による通報は、けして軽んじてよいものではない。
(あれらの力を借りねばならないとして、……ノルドにはもうすこし、人を疑うことを身に付けさせなければなりませんね)
潮風に揺れる髪は、感傷をさえ流していくようだった。
しばらくふつうのゲームやってなかったので、しばらくはふつうのゲームの方でお話を回そうと思います。せっかく「外なる世界」とかあれこれ便利設定があるのに、内部で強い相手を出せてないのだ……




