309 灰白……ワルイダーの最期(3)
どうぞ。
ぬるりと伸びる触手を切り裂き、執拗に二人を捕らえようとするそれを深くまで傷つけていく。赤いウニの化け物は、とげの塊であり砲台であり触手塊でもあったが……そんな化け物でも、攻撃がきちんと通じている。
「剣士どの! なぜオデの攻撃が通じておるのか、訊いてもよろしいかのう!」
「悪役を名乗るきみたちには不愉快かもしれないけれど……きみの中にも魔の力があって、それをきみの意のままに扱えるからさ。まるでヒーローみたいだって、思うかい?」
それは、カメンシリーズの王道設定だ。光は闇の中から生まれ、闇を切り裂いて夜をあまねく照らす――そして陰から新たな闇が生まれ、いたちごっこが続く。対象年齢がもうすこし幼い大選隊シリーズは、そんなに複雑な設定はしていない。そもそも、親殺しや自罰といったテーマなど、子供には不要だからだ。
「ぶほほほ。意のままになる力ならば、悪の心で振るえばよいだけの話だど!」
「心意気やよし! ボクの光に並ぶ闇よ、今だけは高め合おう!」
「ぶほほほほ!! よかろう、オデの力を貸してやるど!」
切るたび、殴るたびに炎が高まっていく。燃え盛り温度を上げて、その色さえも変えていく……青は白になり、白が黄金に変わって、全身の色をさえ染め上げていく。
「ヴァイロス! ドンは巣に封じ込めてきた、誰も触れられない。まだ手伝えることはあるな!」
「きゃつを翻弄してやるのだど! オデとお前の序列は同じ、仲良く……きゃつをぶちのめしてやろうかのう!!」
「おうよ!」
いくつものアンカーが突き刺さり、びんと引っ張るとあらぬ方向へ引っ張られて、ウニがめちゃくちゃに引きちぎられた。対人戦では使っていない、あまりに外道すぎる技だが……もとより巣作りや封印を得意とする〈ラビュリント・スパイダー〉のジョブに就いた鬼蜘蛛は、こういった技の方を得意としている。
「声をかけながら戦った方がいいのか? それとも、意識はこっちにはないのか」
「残念ですが、構成情報のほとんどが失われた状態ですので……。こちらは奪った側ですが、戻っていくものはわずかです」
本来ならば、ツェレブルムが生まれた瞬間に本人は消滅する。本格的な乗っ取りを開始したとたん、本人から切り離されたことが効いているのだろう。そして何より、彼女を強く覚えている二人が、フィノミナからの情報吸収・改竄を受けないままにいること……ここが最も有効に働いているに違いない。
「叩きのめしてください。私たちすべての仇のようなものですから」
「フン……事情は分からないが、いくらでも残虐にやっちまっていいってことか」
ドドドドッ、と連続して撃ち込まれたアンカーが、連鎖的に大爆発を起こした。再生しようとした触手を引きずって放り投げ、光や炎に焼かれるそれを固定する。
「“狩り”にはルールがあるからな……取った獲物を賞玩するんだから、死体がなくなっちまうような得物な、バズーカやら発破やら使いやしないがね。決めたからにはな……」
尖った鉄片が詰め込まれた爆弾が、ウニを真っ二つに引き裂いた。
「俺たちからドンを奪おうとするやつは、“殺す”。これは宣言だ、お前に言ってるんじゃあない……やると決めたことを脳みそに刻み付けたんだ」
裂けたウニは、形を保てなくなったのか、もとの花畑と影の姿に戻る。影が一瞬で数十にも分裂して、あちらこちらから襲いかかる。
「おいおい。蜘蛛のふところに飛び込むバカがいるとはな」
「ぶほほほほ! 分からせてやれ、鬼蜘蛛!!」
網に引っかかった影たちは、ぐるりとまとめ上げられて、まるで藁納豆のような形にされている。内部で増えて網を破ろうとしているが、外で何が起きているかは理解できていないようだった。
「みんな、耳と目を塞いでくれ! ちょっとうるさいぜ……!」
鬼蜘蛛の解「崩の解:高さゆえ崩落は烈しく」は、本人が仕掛けた任意のアイテムを爆発させる。範囲で指定するのが無難で、今回もそれを選んでいた。むしろ、そうでなければならない理由がある……解のダメージには、仕掛けたものすべてが計算されるためだ。
「お前が来ないように……会議が邪魔されないように、厳重に仕掛けたからな! お前を焼くすべての焔は!! お前が招いたものだッ!!」
メガトン級爆弾かと見まがうほどの大爆発、そして爆縮。そのあとには、チリひとつさえ残ってはいなかった。
「悪はきっちり、因果応報で死なないとな」
花園から発射された砲弾が、鬼蜘蛛の背中をぐちゃぐちゃに破壊した。ダメージ超過で消滅した肉体は、その場にいるワルイダー最後の幹部を見つめる意識を残している。
『……超希望合体ミライザーグレート、か。なんだそりゃと思ったが』
景色がぐにゃりと歪んで、デュデットワのセーブポイントに戻る。
「最後の希望に、……」
全力で跳躍し、鬼蜘蛛は空を駆けた。
「……託せるわけないか! 悪者はしつこいからな!」
同じ人の解が二回目出てくるのって初……? アンナととっこの解は出てたっけ。
鬼蜘蛛さんは「怪人は能力だけで獲物を狩るの!!」という厄介オタクな美学にこだわってるので、本来〈猟師〉のジョブで扱える武器とか爆弾・仕掛けはあんまり使っていません。ほぼ糸系、引っかけとか引っ張りとかのやつ。でも作ってないわけじゃないし、ギルメンと狩りに行くときは使いまくって狩りが楽になる。でも「蜘蛛が代々……えっ時代ごとの一話怪人にカマキリいませんでした?」とかニワカかますと「カマキリモドキだろボケ〇すぞ!!」ってブチギレられる。




