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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
7章 月臨、花の降る

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308 灰白……ワルイダーの最期(2)

 どうぞ。

「どうやって入ってきた! いや、何をしに来たんだ!?」

「あなたたちのボスに起きている“それ”を、止めに!」


 空調業界でそれなりのシェアを占めていた「モートー電機」には、あちこちにフィノミナが潜伏していた。かれらの目的は、新たなフィノミナ感染者を増やし続けること……奇しくも、『キラくるドリーム☆すてらちゃん!』に語られる通り、「明確な目的意識を持って行動するフィノミナの組織」は存在したのだ。本社はすでに叩き潰し、夜層に逃げ込んだ「ねこ★ろーぐ」を名乗るフィノミナも討伐が済んだが、関連するフィノミナ感染者がいなくなったわけではない。


「……空調からの二次感染と、種子を埋め込まれたタイプかしらね。〈賜祭礼伎(ツェレブルム)〉になろうとしている……!」

「何を言っとるのか分からんど! ドンに近付くものは……」

「その人が消えてしまうの!! 種を引き抜いて!!」

「お、お姉ちゃんが……!!?」


 さっと振り返った巨漢は、倒れ伏してうめいている女性の胸から、奇妙にうごめく種子を思いきり引き抜いてぶん投げた。びしゃあっ、と壁に叩きつけられた種子は、しかし壁から何かを吸い取っていた。


「無機記録で補完しようとしてる……! この人たちをログアウトさせないと!!」

「任せてください」


 山羊のツノとメイスが目立つ「誘納(いざな)いちご」は、巨大化したメイスの形を振るって「秘密結社ワルイダー」の拠点を丸ごと破壊した。意識を失っていたプレイヤーは生き埋めになり、死亡状態になってその場から消えていく。ここに復帰セーブポイントを用意していた場合もまた、最寄りの街に転送されるだろう。


 バーニアを吹かして空中に浮遊する巨漢は、がれきにゆっくりと着地する少女たちを見て、大声で詰問する。


「何をしておるんだどぉ!? そ、そんなに……危ない、ことなのか」

「あなたも……いや、あなたが影の方を」


 学校の空調システムに製品を売り込むことで、「モートー電機」は効率的かつ爆発的に感染者を増やした。全国にいくらでもいる感染者が、いつ浸食されて人でなくなるのか、それ以上の大事件を起こすのかは、もはや予測不能である。この巨漢……おそらく女子大生かそれに相当する年齢からみて妹、高校生あたりの年齢に位置する少女は、学校でフィノミナに感染したのだろう。そして、それを「お姉ちゃん」に二次感染させた。


「よく聞いて、妹さん。あなたのお姉さんは、化け物に寄生されているの。いま乗っ取りが終わろうとしている。終わったら、お姉さんはこの世から……記憶からも消えてしまう」

「なっなぜオデの正体……いや、これはゲームだど!? そんなことは起こるわけがない、いきなりギルドホームをぶち壊しておいて……」


 がれきの下から、女性の体が押し出されてきた。そして、色が薄くなった彼女の代わりになるように、色を奪った赤い影がニタァッと笑う。


「とても激しい感情の動き……中でも、「現状の否定」。そういう気持ちになると、あの化け物は宿主を完全に乗っ取る動きに入るの。でも、そうはさせない。あなたのお姉さんは、私たちが守るわ」

「わ、私のせい……? お姉ちゃん、現状の否定って……」


 がれきを押しのけて現れた植物は、昆虫をめちゃくちゃにつなぎ合わせて花畑を模したような、あまりにもおぞましい姿をしている。赤い影がそこに融合したかと思うと、平べったい花畑の化け物から紅の菌糸が無数に伸び、液状のウニのような怪物が形を成した。


「部外者は引っ込んでなさい、さっさと終わらせてあげるから!」

「い、いや、……だど。ドン(・・)は……オデたちのドンは、オデたちの手で守らねばならん! お前たちこそ部外者なのだど!」

「何を言って――」

「身内にも関わらせてくれないか? この、意識がないのに体が残ってる意味がわからん……HPが回復もしない、あんたらの言ってることが本当だと信じていいのか?」


 鬼蜘蛛は、いつの間にかドンの透明度が増した体を抱きかかえていた。


「まあ、いいわ。蜘蛛のお兄さんはともかく、あなたは……あれを倒せる力を秘めている。できることを全力でやってみて。直接戦うのが得意なのは、あの子たち二人だけだから」


 多くの場合、フィノミナ感染者の家族は浸食が重傷か手遅れの段階まで進んでおり、かれらの方が感染源であることも加えて、身内をまず排除することが急務となる。しかしこの巨漢(少女)は、すでに浸食が終わっている……浸食段階はきわめて重篤だが、脳や神経系はほとんど侵されていなかった。


 不完全なツェレブルムは、ぎらりと輝いてビームを掃射する。


「くだらん! オデの猿真似にすぎんと教えてやるど!」


 敵は未知の怪物だが、ヴァイロスの扱うものは念入りに磨いてきた既知の力である。脚部に合体している「メガゾード・メディスネーク」は、ビームの弾道をある程度曲げる力を持つ……「メディ」は「治療薬(メディシン)」ではなく「悪い魔女(メディア)」のことを指しているのだ。


 いくつも炸裂するミサイルやビームは、戦闘機の使うフレアの上位互換のように振る舞い、敵の撃つものを止めていった。接近して殴りかかり、CMで見たことのある月の剣士と肩を並べる。


「なんて根性なんだ……! きみ、名前は?」

「ヴァイロス――いや。オデは」


 伝播する喪失(ヴァイロス)、という名前は今にふさわしくない。


「超、希望合体……ミライザーグレート!!」

「わかった。ともに未来を切り開こう、ミライザーグレート!」


 切り裂いた光に並ぶように、ミライザーもまた炎の剣を手に取る。


(正直、まだ意味わかんないし、……ぜんぶは信じられない、けど)


 しかしながら、ミライザー自身の中にあるものもまた、ゲームの仕様とは違う現象を引き起こしている。炎は蒼く輝いたりなどせず、傷痕を焼く状態異常を引き起こしたりもしない。どんどんと熱量を増やすことも、MPをいっさい消費していないことも……あまりに異常な出来事だった。


「この名に懸けて! オデは必ず……ドンを取り戻すど!!」

 墨帖さんがよくスポーツクラブに来ているのは、すでに「財田案件」に片足突っ込んだ立場として「感染者は未覚醒っぽい」ということを定期的に視察・報告しているからです。あそこ感染者が七人、うち五人が成長中っていう魔窟だし……。一人がまさかの幹部クラスだった、ってこともあってまだ目を離せない模様、OKが仕事してくれればいいのにね。

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