306 祭りのあとはすごく静か
どうぞ。
イベント期間が終わってみれば、街づくりイベントの方はほぼ失敗で、「わたモフしっぽ」集めは成功だった……けど、最後に出てきたらしい「ふわっふわの偽神」は、TTとBPB本隊の連合軍でオーバーキルされていたそうだ。
「うーむ、街づくり失敗とはまた……。珍しい事態ですぞ」
「いちばん成績良かったのが「シルヴィーシルフ」って、ちょっとびっくりだね、シェリー?」
「なんで私の功績みたいになってるのよ……私何もしてないわ」
「隠れ家の喫茶店のようでしたが、完成度はトップでした」
すっごく前に一度だけ見た、風の妖精ではなくて鍛冶の小人の職人ばっかりが集まった集団だ。前はパウンドケーキがよく焼けたから、とおすそ分けを持ってきていた。シェリーも、「毎回くれるなら材料くらいあげないと」と言って、「聖女」として受け取ったNPCのみんながくれた食材をほぼすべて渡していた。横流ししている、と怒られるかと思いきや「料理人を抱えていて、美味しく調理してから毒見も済ませて渡してくれる」とへんな形で評価されているらしい。
「変身ラッシュに悪役ムーブ、ちゃんとわかってたねぇ。スパチャもえらい勢いで飛んでたから、私の方でナイスパ言っといたよ」
「あっごめん、お礼言うんだったよね」
「戦闘中はある程度、仕方ありませんぞー。読めていればできるだけ、ですな」
「配信してる主は私だから、責任はこっちで持つよぉ」
やっぱり私には配信難しいかな、とちょっと凹みつつ、成果を振り返る。
「それで、ワルイダーは壊滅したんだよね?」
「いったんは、ね。ただ、もっと力を付けてリベンジする宣言をしてたから、派手に負けたから大人しくする、って意味だと思うよぉ」
「そっかー。まあ、別に死んでないもんね」
ふつう壊滅とか全滅とかいうと「全員死んだ」という意味になるけど、ゲームで一回負けてもキャラクターデータが消えたりはしない。一回死亡したから、逆に超希望合体ミライザーグレートこと「ヴァイロス」は、壊れた装甲を完全再生させてフルパワーで戦えるようになっているだろう。
「と、いうわけで! 新大陸は、プレイヤーのものにはなりませんでした……ということになりますなー。どうやら環境改変や流通ルートの確保まで、さまざまに組み上げられるシステムがあったようなのですがー……」
「ワルイダーだけが原因、とは言い切れないんだよねぇ。私たち「アマルガム陣営」は完全放置だったし、勝手に進めてたうえに隠れてたのがあそこくらいだった、とぉ……」
私は忙しかったからと放置していたし、配信でやっても盛り上がる作業じゃないから、ということでとくに取り上げられなかった。
「私は、近くのデパートでやる演目終わったら、しばらくログイン長めにできるかなー。冬のにごフェスに白バニーさんが呼ばれるわけないし!」
「にごフェスのコスプレブースは、冬でもああいった恰好をしておりますぞ……」
「ヴぇっ」
「さすがに次はXRスペースでやると思うよぉ」
イベントはふたつ終わって、イベントトークンの交換もほぼ終わった。
「ん? そういえば……器臓盗んでいったワルイダーって、誰に使わせてたんだろ?」
「ああ、たぶんドンだと思うよぉ。壊しちゃったけど」
「こっ……や、使っちゃったら出せないんだっけ。まあいいや」
「億単位でも割り切れるのですなー……ま、このくらいはよくあることと思うほかありませんな」
ジョブを増やす機能がある、宝石を削り出して作った人工心臓は、けっきょく壊れてしまったようだった。別に後悔してはいないけど、儲けが出る前に盗まれたうえに壊されたので、スキルレベルの経験値になった以外は大損だ。
「いったんは、これでおしまいですね……また次の配信企画があれば、わたくしも呼んでください。では、失礼します」
「おつかれさま、レーネ!」「おつかーれー」「おやすみなさい」「ありがとうございましたぞー!」
レーネがログアウトしたので、寝るのが早い順番にログアウトしていく。
「それじゃ、私も失礼するわね。またいつでも呼んで、盛り上がりに貢献できたら嬉しいわ」
「おやすみー。じゃ、とっこにサフォレ、私もログアウトするね」
「ええ、お疲れさまですぞ」
「ゆっくりしてね、フィエル」
いつもの二人を残して、私はログアウトした。
一章に出てきた人たち、名前だけ再登場。ナレ死してるドンは……次回でちゃんと触れようかな。




