第10話 昼食と観覧車と。
ご飯は佐山さんがオムライスを注文していたのでそれに合わせて同じものを注文した。
しかしいざ、テーブルに乗ったものはオムライスでも何でもない。
表面がトロトロしていて、色は紫。目が付いている。…ナマコジャン。
佐山さんはそれを見た途端、ぱぁっと目を輝かせパシャパシャと写真を撮っていた。
「…さ、佐山さん、これは一体、なんなの?」
「え?ダズ二君オムライスだよ?」
お、オムライス、これが。
やはり最近の流行はわからん。
写真を撮り終わった佐山さんがこっちを見て言う。
「そろそろ食べよっか!」
「そうだね、じゃあいただきます」
「いただきまーす!」
…正直全く食べる気にはなれないのだが、せっかく注文したものなので食べなくてはならない。
そう思い一口スプーンで掬い口に入れる。
ここで幸いだったのが、中身が普通のチキンライスだったことだろう。
と、思っていた自分がいました。
……予想外にうまい。うますぎる。
表面のトロっとしたものは色はあれだが、食べてみると普通というか、トロトロふわふわで、逆の意味で普通では無かった。
下手したら、というか下手しなくてもそこら辺の喫茶店で食べるオムライスよりも何倍も旨い。
トロッフワの卵に、チキンライスのケチャップの具合が何とも言えない。ケチャップって、多すぎても少なすぎてもまずくなるってのに、ここのは完璧じゃないか。最高のオムライスじゃん。色と形を除けば。
人は見かけによらない、というが、食べ物も見かけによらないんだなぁ、と感心する。
無言でスプーンを使いひたすら食べていると佐山さんに声を掛けられる。
「天根川君!ケチャップが口の周りにたくさんついてますよ!」
「え、うそだぁ」と口の周りを舐めると確かにケチャップの味がした。
「まだ取れてないですよ!」
と、真正面に座っていた佐山さんがテーブルに乗り出して備えてあるティッシュで口の周り拭いてくれた。
しかしここで不意にも吹き出してしまう。
なぜなら、自分の口の周りに着いたケチャップを取るのに必死で全く気が付かなかったのだが、佐山さんを見てみると、おそらく自分以上であろうケチャップの装飾を口周りに施していたのだから。
「え!なに!なんで笑ってるの!?」
「じ、自分の口の周り触ってみなよ笑」
「えぇ、なんなの……よ」
自分の口周りに着いたケチャップを確認した佐山さんは口周りに着いたケチャップに負けないくらい顔を真っ赤にさせる。
そして、自分で拭こうとしていたが「さっきのお礼」と言ってティッシュを持ち佐山さんの口周りを拭く。
拭いている途中ずっと佐山さんがソワソワしていたため、まるで何か悪いことをしているかのような気持ちになってしまった。
結局それからまたお互いに意識しすぎて、中々会話が続かなかったのは目に見えているだろう。
ちゃんと最後までオムライスはきちんと頂きました。
昼食後はなんとなく気まずい雰囲気が漂ったものの佐山さんが午前中のハイテンションに逆戻りし、気まずい雰囲気はどこかへ飛んで行ってしまった。
少し恥ずかしがっている佐山さんもいつもと違って可愛いのだがまぁ、やはり元気な佐山さんが一番である。
……そう思っていた時期が僕にもありました。
あの後、もう一度あの地獄のジェットコースター三種盛りに続きナマコがグネグネ回る乗り物やその他もろもろに連れてかれ、胃の中は大パニック。もちろんそんなことに気を取られることなく佐山さんは乗り続けた。もちろんそれについていかない訳にもいかず、最後まで乗り切りました。
もしもここがレベルアップのある世界ならば胃だけレベルマックスになってる自信がある。
辺りは暗闇に包まれてきて、本日のメインともいえるだろうダズニーシー名物のパレードが始まる。
そんな中、僕と佐山さんは観覧車の中にいた。
ここはパレードも一望出来て、それにパレードの方にみんな行ってしまうので人がかなり空いている。
という事を佐山さんから聞き行ってみると案の状すっからかん。
本当に佐山さんは詳しいなぁ。と感心しつつ、今この状況に非常に緊張している。
佐山さんと二人きり。前にも一度あったがあれはノーカウントだろう。
そんな中、佐山さんが口を開く。
「今日はごめんね。テンション上がっちゃって…本当にごめん、なさい」
「いやいや全然!僕も楽しかったよ!」
「……ほんと?」
いや待てい。反省した様子プラス上目使いはさすがにやばい。自分の中の何かが目覚めようとしていたが、必死にそれを抑える。
「ほんとほんと。ていうかめっちゃ楽しかったよ!」
「そっか…それなら雫うれしいなっ!」
「し、ずく?」
「……あ!ごめんまちがえた!私!私!」
「……その、佐山さん、その呼び名でもう一回自分の名前呼んでくれる?」
「…え?なんで?」
「お願いします佐山様」
と言って頭を下げて頼み込むと、「わかったから顔上げてよぅ」と言ってくれた。よっしゃ。
「改めて言うと、恥ずかしい……じゃあ言うよ?」
「う、うん」
「あ、それと一つだけお願い入れてもいい?」
「もうそりゃ何なりと」
「…わかった……」
ゴクリ。今か今かとその時を待つ。キュン死する覚悟を持って。
「あ、あのね、雫ね、雫の事、しずくって呼んでほしいのとね、あと、そのぅ、天根川君の事、遼君って呼んでもいい、かな?」
……もう幸せ過ぎて死んでもいいかもな。
雫を生んでくれたこの世界とご両親に感謝していると、佐山さんに「ちょっと!?遼君大丈夫!?」なんて声を掛けられた。うん、しばらく遼君呼びは封印だな。
「あぁ、ごめん雫が可愛すぎて昇天しそうになってた」
と、声を掛けると次は雫が昇天しそうになっていたので意識をこちらの世界に戻してやる。
「あ、ごめんなさい、雫って呼んでもらえてつい……」
何度も言ってごめんなさい。本当にこの子可愛すぎます。
「あ!それとやっぱり遼君呼びはやめてくれないか?心臓がドキドキしすぎて……」
急に雫がしんみりとした雰囲気になる。
「やっぱりだめだよね、ごめんね、遼君……」
うん、言っても効果ないみたいだし、かわいすぎるからもう何でも良し。
…カワイイは正義である。
「ごめんごめん、ちょっと意地悪しただけだよ。その呼び方でいいよ雫」
「ほんと!?」
背景がキラキラと輝きそうなほどの視線を向けられたのでよしよしと撫でてやると案外すんなり「へにゃぁ」なんて言いながら受け入れてくれたので良かった。
ちなみにこんなことをしている間にも観覧車は3周ほど回っていたのだが、なんとなく雰囲気を察した従業員のおじさんが何も言わずそのまま乗せてくれていた、という事は後々知ることになる。
ちなみにパレードを見逃したことも言うまでもないだろう。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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次回はイチャイチャ帰宅しているところになります。お楽しみに!




