第9話 駅前と底なしの体力
今日は土曜日。ついにデートの日がやってきた。
…緊張して昨日は眠れなかったのは秘密にしておこう。
駅前に8時集合という事だったのだが、朝、特にすることもなく少しだけ、本当に少しだけ早く来るつもりだったのだが30分早く来てしまい、もともと7時45分に来るはずが、7時15分に来てしまった。
……さすがに暇である。まぁ、来てしまった自分が悪いのだが。
どこか、暇をつぶせる場所を探そうとするが、朝も早いので開いている店が少ない。
それでもお店を探すことで暇つぶしをしようと近くの駅前が見える喫茶店を探す。すると駅前側がガラス張りの良い感じの雰囲気の店を見つけられた。
中に入ってみるとなかなかモダンな雰囲気の喫茶店で、開店直後なのだろうか、人もあまり、というか一人しか居ない。
現在時刻7時20分。あと25分ほど時間をつぶして集合場所の駅前に行こう。
そう思い、ガラス窓の席に移動する。先程の一人の客はガラスに近い、というか自分が取ろうとしていた、駅前がばっちり見えるポジションを陣取っていたので、ほかの見えやすいスポットに移動しようとした、が。
さっきから、ガラスに近い席のよく見るとマスクをしている客がちらちらとこちらを見ている。
なんだかその視線に既視感を覚える。
だがまぁ、何かの勘違いだろう。そう思った時、ばっちりとその客と目が合う。
切れ長の綺麗な目。艶やかな黒髪。いかにもクールそうな雰囲気。
つやつやと光沢のあるベージュ色のロングスカートに、上はドット柄のフリル付きのブラウス。
いままでは制服とパジャマしか見たことがなかったのだが、私服も最高に良い。
すこし見惚れつつ声を掛ける。
「……佐山…さん?」
と声を掛けると、
「ヒ、ヒトチガイデス、ヨ」
「うん、その声佐山さんだね、おはよう。…それとその洋服すごく似合ってるよ」
とりあえず、なぜこんな早い時間にここに居るのかは、謎だが、そんなことがどうでもよくなるくらいに、可愛かった。
「…あ、ありがとう。それとなんでバレたの…?」
「…いや、バレバレだよ?」
「へぇ!?」
「へぇ!?って、好きな人だったら一発でわかるよ」
なんて言って返すと、佐山さんは頬を赤色に染め下を向いた。顔が赤くなっているのを隠しているつもりなのだろうが、耳まで真っ赤なのでバレバレである。
「じゃあ、早いけど行こうか」と笑いながら声を掛けると「うん」と一言だけ返してとことこついてくる。
そしてついてきながら彼女は小さな声で彼女は言った。
「私だって好きだもん」と。
佐山さんは僕が聞こえてないと思っているのだろう。でも。
…僕、地獄耳なんだよなぁ。
結局どちらも相手に真っ赤な顔を見られないよう反対を向きながら、しかし手はしっかりと握りながらダズニーシーへと向かった。
「うわぁ!見てみて!天根川君!!ダズ二君だ!キモかわいー!」
やはり何度見ても、キモイ、という感想しか浮かばないのだが、まぁ、佐山さんと来れたんだし、いっか。
そう思いながらさっきからダズ二君と触れ合っている佐山さんに声を掛ける。
「ほら佐山さん、ダズ二君も他のところに行かなくちゃいけないから離してあげよう?」
というと名残惜しそうにダズ二君を離し自分のもとに駆け寄ってくる。
そして、興奮しているのだろう。僕の腕にしがみつき、自分の豊かな物を押し付けていることに気づいていないようで
「次どこ行こっか!」
と声を掛けてくる。
まぁ、悪くはない。…嘘です最高です。
しかし、そこで一つの事に気が付く。
ダズニーシーで遊んでいるうちに敬語がなくなりいつも以上に距離が近くなっている、という事に。
敬語はもともと「彼氏になっても慣れ慣れしく天根川君とは話せませんよぅ」なんて言ってきたから敬語のままだったのだが、風邪の時と今回で完全に使わなくなったようだ。
でも、こっちの方が可愛いから良し。
そんな中、時間を見るともう11時45分。少し早いが混む前に早めに昼食をとっても良いだろう。
そう思い返事をする。
「ちょっと早いけど、お昼ご飯にしない?」
「うーん、まだまだ遊び足りないけどいいよ!」
……まじか。
実はダズニーシーに入ってからというもの、来た時間が早かった事と、たまたま人が少なく乗り物などがかなり空いていた。
そのせいなのだろうか、それとも本来の佐山さんがこんな感じなのだろうか、ひたすら乗り物に乗りまくっている。
いきなりジェットコースター三種盛りに、ナマコがグネグネ回る乗り物や、ナマコ型のマグカップの乗り物に乗ったかと思えば、ナマコの船が前後に揺れる絶叫系の乗り物に乗り、またジェットコースター三種盛り。
まるで徹夜して園内を暗記したのかというくらい乗り物を暗記していて、効率よく回っていた。
だが、それに付き合わされている自分の気持ちも考えてほしい。
絶叫系は別に苦手ではない。しかし、何連続も乗るというのはさすがに来るものがある。
しかし、佐山さんはというと…。
「ご飯食べたら何乗ろうか!またまたジェットコースター!?ねーねー!」
「……とりあえずご飯を食べ終わったら少しだけ休憩しよう。ね?」
「むーん。…わかった」と、不服そうに答える。
……底なしの体力とはこのことを言うのだろう。そう思った僕だった。
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電車の中での出来事。
「そういえば佐山さん、なんであんなに早くに来てたの?」
「あぁ、それはですね、いつものストーキングの癖で二時間前には天根川君を見るためにいつも待機してて……」
微妙な空気が流れる。
「あ、あのー。えーと。だ、ダズニーシー楽しみだね」
「そ、そうですね」
「「…あはははは」」
「いつも」って言ってたよね。……佐山さん学校の時だけじゃなくて休日まで……
僕は何も聞いてない。僕は何も聞いてない。よし。大丈夫だ。…たぶん。
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今回も読んでいただきありがとうございました。
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次回で遊園地編は終了です。お楽しみに。




