第11話 意外な一面。
少し短めです。
放課後を告げるチャイムが鳴る。
それと同時に駆け出していく部活動生。いつも誰かしらつまずいてこけそうだな、と感じながらもやはり部活をやっているおかげか、今までにこけた人は見たことがない。
そんな帰宅する者たちの波には流されずそのままじっと席に着いておく。
なぜか?
理由は二つ。
一つ目は一度調子に乗って「あの波に流されたら速攻で帰れるんじゃね?」なんて思って池田と流れてみたら池田はまだしも、自分は波に流される、ではなく時には押しつぶされるわ、盛大にこけるわで全く良い思い出がない。
まぁ、自業自得なのだが、その時の周りの目といったら。心配してくれているかもしれない、なんて思った自分が馬鹿だった。あの時の新参者を見るような冷たい目。ヒェッ。今思い出しただけでもブルブルと身震いしてしまう。
もちろんあれ以来一度もその波には乗ってない。
そして二つ目の理由。
これこそが今日のメインディッシュ。
そう、佐山さん。いや、雫と一緒に帰ること。
そろそろ部活動生も教室からいなくなり、もちろん部活に入っていない生徒たちはあの波に乗るわけもなく、少し遅れてぞろぞろと帰りだす。
それに合わせて雫と帰ろうとするが、ここでまた池田に声を掛けられる。
「今日も一緒に帰れねーの?」
「今日も雫と帰るんだよ」
「そっか」
「なんでそんなに悲しそうなんだよ」
と笑いながら言うと「いや、何でもない。それじゃあな」と、言って帰っていった。
先週から毎日こんな感じなのだが、雫と帰っているため最近は池田と帰っていない。
一度三人で帰らないかと誘ってみたが断られてしまった。
まぁ、彼女が出来た事に嫉妬しているのだろう、なんて思いながら教室のドアで待っていた雫に声を掛け、帰宅する。
校門から出て、本来の二人の帰り道ならば雫は左から、自分は右から帰っていた。
だが、一緒に帰るようになってからは一日交代で互いの家まで一緒に帰っている。
今日は僕の家の方面に帰る日だ。
毎日話すはずなのにどうしても話始めるこの瞬間だけは、一番最初に、出会った頃に戻ったかのようにどちらも話さなくなる。
しかしそんな沈黙も束の間。
「…遼君の好きな食べ物とかってある?」
相変わらず遼君呼びの破壊力は抜群だが、さすがにもうそろそろ慣れてくる。しかし、少しだけ赤面になってしまうのは仕方がないことだろう。なるべく雫にそのことがばれないように答える。
「うーん、肉じゃがとか、あと、お味噌汁とか?」
「……意外と家庭的なんだね」と、苦笑いしながら彼女は答える。
「物心ついた時から親の仕事が忙しくて、なかなかそういう料理を食べてこなかったんだよ」
「そう、なんだね…」
雫が少し重い空気になっているのを察してフォローを入れる。
「あ、いやいや!別に親との仲が悪かったわけじゃないんだよ?!それに別にそこまで辛いとは思ったこともなかったし」
「あっ、そうだったんだ…なんだかごめん」
「いやいや、全然いいんだよ」
そういうと雫は「そうだ!」と何かひらめいたように声を掛けてきた。
「今度また家に遊びに来なよ!そしたら肉じゃがとかお味噌汁とか、たっくさん作ってあげる!」
「ほんとに!それは嬉しい、、な」
しかしここである人物を思い出す。
そう。お義父さんだ。またネズミを追い出すとか言いかねない。…お母様にお土産でも買っておこう。
そんなことを考えながら少し冷や汗をかいていると、何か異変を感じ取ったのか雫が声を掛けてくる。
「どうしたの?」
「あ、いや、雫のお料理が楽しみだなぁ、って思ってね」
「え!うれし…(ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる)…いなぁ……」
途端に雫が顔を赤らめ下を向く。
「雫…おなか空いたの?」
「……うん。肉じゃがとか、お味噌汁の話してたらお腹空いてきちゃって…」
「意外と雫って食いしん坊なんだね」
と笑いながら言うと、「ちがうもん!」なんて返してきたが、近くのクレープ屋さんに行くか聞いたら即答で「行く!」の返事だった。
雫の新たな一面を知れた帰り道だった。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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次回から波乱の第二部が始まります!!お楽しみに!




