赤い傘
5月31日㈮人間界編
誰もいない放課後、下駄箱を出た時雨が降っていた。傘立てには、赤色の傘が立っている。サキはその傘を手に取り、差した。周りの音は全て、雨の音で掻き消されている
「(寒いなぁ、家に帰ったらミルクティーでも飲むか)」
そんな時、頭の上から何かが降ってきた
「(傘に穴でも空いてたか?)」
上を向いたが、何も無かった。サキが前を向いた時、傘の内側が牙だらけになった。サキを食べようと、大きくなった。すると強風が来て、手から傘が離れてしまった。傘は転げ落ち、川の方へ
「あ…待ってぇ!」
サキは傘を追いかけ、傘を取り戻したが、力尽きて道端に蹲った。その時に、傘はサキを食べようと牙を出した
「あ!わぁ!」
また、手を離してしまったサキは傘を少しだけ諦めようかと思っていた。だが、その傘がないと帰れないのであった。落ちた傘を手に取り、駅の方へ向かった
「ふぅ、ずぶ濡れ…」
サキは駅のベンチに座った。横に畳んだ傘を置いて
「…君は、どんだけ人を食べたのかな?」
サキは暇すぎて、傘に話しかけた。返事は来ないが
「わしは、沢山食べた。数え切れないほどね…」
ひとりぼっちの駅、土砂降りの雨、遅延する電車。この時間が刻刻と過ぎていく
「…暇だ。暇すぎる!心にぽっかり穴が空いたようなキ・モ・チ」
そんな時、駅に学生のカップルが雨宿りに来た
「うわぁ、濡れちゃったね」
「うん。ハンカチいる?」
「ありがとう。急に降ってきたからどうしようね」
「コンビニ行って傘買う?」
「濡れちゃうよ」
サキはそのカップルを見つめていた。サキはそのカップルに近づいた
「あの…」
「はい!」
「この傘あげましょうか?」
「え?ありがとうございます。でもあなたの傘ですからね」
「あ、わしは電車に乗るだけですのでどうぞ」
咄嗟に嘘をついて、カップルに傘を渡した
「ありがとうございます。たっくん良かったね」
「うん。また、会った時お礼しますね」
そう言って、カップルは駅を出て行った。サキは瞬間移動で家に帰って来た
夜、ハルト王子が帰ってきた
「おかえり」
「うん」
そんな時、ニュース番組を見ていたらこんなニュースが飛んできた
『今日の夕方頃、坂神高校二年生の古川拓也さんと川上理恵さんの行方が分からないことで警察が調査しております。警察によると……』
「物騒な事件だね」
「あぁ、ご飯できたぞ」
「あーい」
『…との事です。最後に目撃されたのは水凪市にある遠川駅の駅近くと言われています』
「あれ?ここってさ、俺たちの最寄り駅じゃ…」
「…」
サキは夕方頃にあったカップルを思い出した
「…まさかね。いただきます」
この数時間後、サキの通学路の川で、ふたりの足とあの赤い傘だけが見つかった
登場人物
サキ
ハルト王子
傘
古川 拓也
川上 理恵
アナウンサー
天気:曇り時々雨




