人は成長するから良い
8月20日㈫修行編
時刻は午前七時、サキは飲まず食わずで柱を登っていた。夜は寝ずに柱を登っていたのか、今はとても寝不足である
「や、やっと七十メートル地点…」
指先を動かそうとしても、疲労で動かせなかった
「うっ…(あと三十メートル…)」
必死で指を動かし、柱を登って行った。塔の中では、サキが柱を登る音しか聞こえなかった
「(疲れた…でも、頑張らなくては!登りきれたら、ルカ先生は褒めてくれるかな…)」
サキはルカに褒めてもらう、そんな思いを持って、今登っていたのだ。昨日はたくさんの弱音を吐き、くだらないことを考えていたが、今は違う。『この柱を登る』そんな思いだけがあった
「はぁっ…はぁっ…昨日よりも油の量が減って、登りやすいな」
今は、ルカは頂上にはいない。ルカは近くにある、寝泊まりをしている城のバルコニーで紅茶を飲んでいた。そのバルコニーからは精神死柱がよく見える
「(『精神力』それは、精神が力となって現れたもの。精神が揺らげば、その力は弱くなる)」
ルカは紅茶を一口飲んだ
「(サキ、あなたはその力の才能があるわ。これから会う敵は、今までの敵とは違う。あなたのハッタリや心理戦は効かなくなるわ)」
午後十二時、ルカはサキの様子を見に来ていた。下を覗いた時、サキは八十メートル地点にいた
「(思ったよりも早いわね)」
ルカは、サキのボロボロになっている服や手袋を見ていた
「(あんなに頑張って…すごいわ。昨日までのあなただったら、諦めていたのに)」
サキは頂上にいるルカに気づいたようだ
「あ!ルカ先生!」
サキは昨日とは違い、自力で柱を登った。その姿はまるで、まだ地を踏まぬ赤子が、一生懸命に母親の元へ進もうとする光景であった
「(ここまで成長して…いや、でもこれが本当のサキなのかもしれないわね)」
それから三時間が経過し、サキはやっと頂上へ到達した。登頂時間、三十三時間
「はぁ、やっと到達…」
「おめでとう」
「あ、ルカ先生!褒めッ」
「さ、前座は終わりよ。次からは本番よ」
「えぇ!うっそん!お昼過ぎてるよ!お昼ご飯は?ねぇ?ねぇ!」
ルカはサキに背を向け、歩いて行った。サキは知らなかったが、彼女は少し微笑んでいたのだ
「フッ、あなたが感情豊かに育っていてよかったわ」
「え?何?また嫌味?」
「いいえ、違うわ。褒めているのよ」
「…え?あ、恥ずかしいな」
「まっ、まずはその汚れた服を脱ぎなさい」
「え?それってどういう意味で…」
「隅々まで洗ってあげるわ」
「えぇ!!」
そうして、サキはルカと一緒にお風呂に入ることになった。サキの期待は外れ、ルカは服を着たままサキの身体を洗った
「…(期待はずれだったが、まぁ…こうやって誰かとお風呂に入るのは初めてかも)お”ぉ”ん”目の中にシャンプーがァ!」
「我慢しなさい。てか、薬は飲んだ?」
「あ、はい。飲みましたよ」
「ならいいわね」
「痛い!痛い!皮膚が剥けるゥゥゥ!」
サキの悲鳴は、お風呂の中でとても響いていた
To Be Continued…
登場人物
サキ
ルカ
天気:曇りのち晴れ




