ふたりの男の覚悟
8月16日㈮人間界編
昼頃、何でも屋月夜堂にて。外では雨が降っていた。現在、ハルト王子はひとりであった。そんな時…
─ピンポーン
スーツ姿の男が尋ねてきた。男は居間のソファーに腰掛け、ローテーブルにシルバーのアタッシュケースを置いたのだ
「これを届けて欲しいのだ。場所は…」
「…?」
ハルト王子は疑いもせず開けた。中には、チャック袋に入った白い粉
「…覚せい剤」
「私はまだ覚せい剤と言ってないが?」
「はっ!いやっ!違う!俺は!各 製剤と言ったんだ!」
「素人なら、まずは薬物…もしくは何かしらの粉と思うはずだが?」
「…」
ハルト王子は黙った
「君…もしかして、一度やってッ」
「違う!俺はやってない!あれは無理やり…」
「…君の過去を詮索するつもりはない。だが、君は覚せい剤と知っている。この場合、どうするか…わかるな?」
「…俺に、どうしろと?」
男は姿勢を正して言った
「今日の午後五時、この今いる建物から出て、四軒先のビルと五軒先の建物の間に路地裏がある。そこに売人の男がふたりいるから渡して欲しい」
彼は葛藤していた。依頼を取るか、法律を取るかを
「もし、君が断るというなら…君の情報を世に放つ」
「…そ、それは、どういうことで?」
「君は一度、覚せい剤取締法で、懲役一年執行猶予三年を受けたと聞いている。これは確かに過去の話だが、世間に放てば…どういう反応になるのだろうね?」
ハルト王子は冷や汗をかいていた。そして、唾を飲み込んだ
「えぇ、わかりましたよ。やれば…やればいいのですよね」
そうして、彼は男の依頼を受けることに。時は経ち、午後五時になっていた。まだまだ、雨は止んでおらず、ハルト王子は傘を持たずにアタッシュケースだけを持って歩いていた。男は彼の後ろを着けていた。ハルト王子は指示された路地裏の入口に来た
「(よしこのまま…え?)」
ハルト王子はその路地裏を通り過ぎ、別の路地裏へ入っていった
「(え?間違えたか?でも、今人がいるか確認したぞ…まさか!)」
売人たちや男は彼のあとを追った
「待て!裏切りやがって…逃げたって無駄だ!」
その路地裏は行き止まりであった。ハルト王子はアタッシュケースを男たちの方へ投げた。ハルト王子はタバコを取り出し、火をつけた。だが、タバコの火は雨で消えた
「金は要らねぇ。俺は社会的に死んでもいい。だから、こんなことはやりたくない」
「…」
彼の瞳は覚悟の決まった瞳をしていた。だが、そんな目をしても、男たちの怒りは収まらなかった
「くっ!お前がひとりでいる時間帯を狙ったのに!意味ねぇじゃねぇか!てめぇら!やるぞ!」
男たちはハルト王子に近づいた。そして、顔を叩いた!
「?!」
段々とエスカレートしていき、殴ったり、蹴ったりの暴行を彼に加えていた
「はぁっ…はぁっ…これで終わりだ!」
そんな時、売人のひとりが男の肩に手を置いて、何か耳元で話していた。すると、男はアタッシュケースを手に取り、開けたのだ
「これは覚せい剤と言ったが…実はな、まだ試作品でな」
売人の男が注射器を取り出し、その粉を注射器に入れだした
「だからよォ…わかるよな?試作品の実験台になってもらうってことが!」
「?!」
ハルト王子は、羽交い締めにされた。彼はそのあとの出来事が、全てスローモーションに見えた
そんな時、三人の警察官が来た。葵頼 香月とその他二人であった
「大人しくしろ!君たちは包囲されている!…!」
警察官たちは驚いた。ハルト王子の目は焦点があっておらず、口からゲロを吐いていた。もう既に、やられたあとであったのだ。香月が呆然としていた時、男たちは逃げ出そうとした。だが、香月の仲間により捕まった
「香月さん!捕まえました!仔宍が、もうひとりの男を追いかけてます!」
「ありがとう、無果花!」
香月は彼に近づいた
「目が虚ろだ。体温が高い。薬物を打たれたのか?」
香月はハルト王子の袖をめくった。そこには無数の注射痕があった
「(今、我々がここに来る間にこんなにも打たれるはずがない。まさか、過去にも同じようなことが?)」
香月はサキに復讐するため、警察官になった。ハルト王子は何でも屋月夜堂のひとりであるが、復讐対象ではない。ただの一般市民である。香月は思った
「(彼は、確かに何でも屋月夜堂の仲間だ。でも、もし私が警察官じゃなくても、目の前でこんなことが起こっていたら彼を助ける!)」
そう思ったのだった。香月は警察無線で救急車を呼んだ。ストレッチャーで運ばれていく彼。一般市民が犯罪まがいなことを目の前で巻き込まれていた事を見た香月。これは復讐ではなく、警察としての正義の使命感が彼の心の炎を燃え上がらせたのだ
登場人物
ハルト王子
依頼人の男
売人1
売人2
葵頼 香月
無果花 亜麻之
仔宍 勇生
天気:雨




