糸使いの古代人
8月10日㈯人間界編
昨日、ふたりは各自旅行から帰ってきたところだった。そして、今日。夏休み期間が沢山あると言うのに、何でも屋月夜堂の依頼のことを全くもってやってないという現実にまずいと感じ、ふたりは早速取り掛かることにした。
そして、とある廃墟の倉庫。サキとハルト王子は差出人不明の依頼の手紙を持って、そこを訪れていた。倉庫の周りは草で生い茂っており、真っ赤に錆びている扉が目の前にあった
「本当にここで合ってる?どうしても、わしが間違えたとしか思えないんだけど」
サキはタバコを銜え、火をつけた
「…俺も一本くれないか?」
「一本…ねェ〜?あ〜げない!」
サキがその扉を開けた時、目の前には光が差し込まれた空間と空中に舞った埃の粒が見えた
「…ゲッホ!ゴッホ!ゴッホ!ヘックション!あ、タバコが…」
サキはくしゃみの勢いで、口に銜えていたタバコを地面に落としてしまった
「あ〜あ、もったいない。銜えたばかりなのに」
そして、そのタバコを広い上げた。ハルト王子はそれを集中的に見ていた
「…」
「…いや、あげないからね。欲しかったら自分で買いなさいよ…てか…鼻ムズムズするな…ん?なにこれ」
視界に何か糸のような光るものが見えた。最初は光が反射した埃かと思い、サキはそれを近くで見るため倉庫の中へ入った。だが、しかし…
「…!!あ、足がァ!足がァァ!!」
何故か、左足が切断されていたのだ。痛みが無く、気づいた時にはもうそうなっていたのだ
「(な、何がッ!何がどうなっていやがる!何も気づかなかったッ!何か、この空間には…)何かあるのかァ!?ハン兄!気をつけろッ!敵がァ!敵が近くにいるかもしれねェ!警戒しろォ!」
ハルト王子は周りを見回した。だがそこには、光に照らされた埃とふたりが動く反響音しかない
「…何も無いぞ?何もッ…」
足元に何かが落ちていた。彼はそれを見て驚いた。金属の腕、そうサキの義手であった
「い、いつの間にわしの腕がッ!ハン兄も気をつけろ!」
「もう、遅いよ」
「え?…なッ!」
彼の左手の人差し指と中指が切断されていたのだ。切断された傷口から、血液が地面に滴っていた
「…!!(何がどうなっているんだ?!気づかないうちに切断されているだなんて…ありえるのか?)」
そんな時、奥から足音が聞こえた。裸足のような足音が
「「?!」」
そいつは男なのに、長い髪をポニーテールして括っていた。そして、褌のようなものだけを身につけていたのだ
「な、なんだあいつは?」
「…!」
たが、サキはその格好に見覚えがあったのだ
「古代人!お前は!古代人なのかッ!?」
「ノホホホッ!正解ですよ!私の名はファールン!あの方たちから貴方たちの話は全て聞いてますよ!」
そいつは声高々に言っていた
「トゥエリ様とアリア様から貴方がとてつもなく強いということを聞いています。…あの、雑魚のセリメンは強いとか言っていたが、あいつが弱すぎただけですけどね」
「サキ?知り合いなのか?」
サキは顔を顰めながら、言ったのだ
「異世界の学校で、古代時代をやった時…わしが出会った、トゥエリとセリメンが教科書に載っていたんだ。そして、今思い出したけど…こいつも教科書に載っていたんだッ!」
「ま、まさかこいつは…古代人?!」
「えぇ!その通り。まさかこの私が教科書に載るレベルに有名だなんて…嬉しいことだ」
「こんな変態が…教科書に載るだなんて…」
「まあ!私を変態扱いするだなんてッ!アリア様からはサキ・ロリールを殺せと命令されたが、私は先にこの…男?…女……この金髪を殺す!」
奴は、腕を胸の前にクロスして、何かを放つように腕を勢いよく広げたのだ
「刻み込まれる!避けろォ!」
奴から出た糸はハルト王子に向かって飛んできていた。サキは左半身が使えない状況だが、右半身で彼を押したのだ
「…サキ」
サキの身体は刻まされたかのように、崩れ落ちた
「…」
「くっ!避けられたか。でも、本来の目的はサキ!貴方だッ!私はセリメンとは違う!ふたりまとめてここで殺してやるッ!」
「本当にトゥエリやアリアから話を聞いたのかと疑いたくなる言動だな」
「なにぃッ!」
サキは人の形をして立ち上がっていた。サキの体は細胞、皮膚、骨とあらゆるところが既に再生していたのだ
「どういうことだッ!ここまで再生するとは…少し、興味が湧いてきたぞッ!」
「ふーん。それは嬉しいけどよォ…周りはちゃんと見た方がいいぜ」
そう言って、サキは指を鳴らし、その指先から炎を出した
「何をする気だ?」
サキはその指を前に出した。すると、まるで空気が燃えるかのように空中が燃えたのだ。そして、炎は何かを伝うようにファールンへ向かって行った
「き、貴様!この私がッ!この倉庫に糸を張り巡らせていることを知っていたのかッ!」
「ああ!知っていたさッ!ハン兄の指が切断された時に確信したんだ!糸を結界のように張り巡らせて、その糸に当たれば、切断させるというちゃちなトラップをなァ!」
「クソがァァァ!!!」
奴は糸から伝ってきた炎に包まれ、体が燃えて行ったのだ。
「サキ、大丈夫?」
「あぁ、お前こそ…その、左指大丈夫なのかよ」
「後で病院行くからいいよ」
「それは…病院で解決できる問題なのか?」
サキは、ハルト王子の切断されて、地面に落ちた指を拾い上げ、布に包んだ。そして、ふたりは燃えているやつを背に、その倉庫を出て行ったのだった。
だが奴は、まだ生きていた。炎で燃やされただけでは死なない。それが古代人なのだ
「くっ!なかなかの強敵だな。だが、今日はここで止めよう。この傷を癒してからではないと次が保てんぞ」
そう言って、奴も倉庫から出て行った
To Be Continued…
登場人物
サキ
ハルト王子
ファールン
天気:晴れのち時々曇り




