彼女は…八尺様である
8月8日㈭人間界編
雲一つない京都の田舎町。田んぼと山に囲まれた辺鄙な村にて二人の男女がそこへ来ていた
─ガラガラガラッ
「ただいま!」
京都北部の田舎町。米と野菜が取れる素敵な村。ここは遊野 穂乃花の実家がある村。マサキは夏休みということで、お世話になっているマスターのご実家に来ていた。ついでに京都へ旅行に来ていた。彼女の実家は古風な家であり、今は金持ちとは言えないが、昔の蔵や大きな木々が残っていた。蔵には歴史的な書物があるらしい
「マスター!ご飯!」
「はいはいって、あんたねぇ他人の家に遠慮というものが無いのかい?」
「んーないッ!あったら着いてきてなかったし。パパさんもこんなに賑やかで嬉しいでしょ?ねっ?パパさん」
穂乃花の父親は縁側で新聞を読んでいた
「え?…あ〜そうだな。穂乃花の彼氏さんは賑やかでいいな」
「か、彼氏?!違うから。サキも訂正してッ!」
「えぇ〜彼氏?見えます?見えます?ねぇ、嬉しいな!」
穂乃花は少し照れていた。喫茶店のマスターとしている時は大人びていたが、ここに帰ってくると子供らしい雰囲気になっていた
「ところで、飯はまだぁ?」
「……はぁ、母さん。何か食べるものある?」
「ごめんね、なんにもないみたいで。マサキさんでしたって?このお金で八百屋さんまで、お使い行ってくれる?」
「え〜お使い?いいですよ。こんな美人さんに頼まれたら断れませんよ!」
穂乃花の父親は咳払いをした
「あ…」
「ありがとうね。もしお釣りが出たら、好きな物買っていいからね」
マサキは、首から掛けれるがま口財布を貰い、そのにお金を入れた。そして、玄関に向かった
「あんまり走らないでね。この前、ワックスかけたから」
そう言われた矢先に、マサキは玄関土間にスライディングするように転けていた。
「いでで…ワックスすげぇ…ん?なにこれ?」
玄関の右側にある下駄箱の上には、ひとつの家族写真が飾ってあった。そても古そうな写真だ。マサキはそれを手に取ろうとした
「あ、サキ。スマホ忘れているわよ」
「あ、ありがとう」
穂乃花からスマホを受け取り、マサキは玄関を出た。外では蝉の鳴き声しか聞こえない。マサキは誰もいないことを確認し、鼻歌を歌っていた。
─チリン…チリン
後ろで自転車のベルの音が聞こえた
「ん?自転車?」
マサキは振り返った。だが、自転車の影ひとつなかった。でも、ひとりの女性が立っていた
「…?!(いつの間に、こんな近くに!気配が感じなかったぞッ!)」
彼女はこちらを向いていた。彼女の見た目は、白いワンピースを着ていて、麦わら帽子を被った女性だ。黒髪が非常に似合う女性でもある。背が異様に高く、マサキよりも高い。こちらの目線を合わせるように、背中を曲げていたのだ
「…な、なんだよ?まるでわしが小さいみたいな扱いをするじゃあないか?日本人男性より背は高いんだぞッ!わしは195センチだぞォ!でかいだろう!」
そんなことを言っても、彼女はビクともしなかった
「や、やめて。恥ずかしい…そんなに見つめられると恥ずかしいよ…」
「ぽぽ」
「え?」
「ぽぽぽぽ、ぽぽ?」
「”貴方は、誰?”わしはサキ…思ったよりも、めっちゃ綺麗だね。タイプだ。なーんてね!冗談だよ!」
「…ぽッ」
「いや、そんなに照れないでよ!いや、怒らないでの間違いかも…」
そんな時、見知らぬ村人に声をかけられた
「おい、あんた!何してんだっ?!」
「え?何が?」
「?!あんた!そいつから離れろ!」
「え?なんでッ!」
「あ、山田さんちにあったよな。あれとか」
「うんうん」
村人たちは、ふたりを引き剥がすようにマサキの手を引っ張った。そして、とある民家の二階に押し込まれた。窓には新聞紙で目張りがしており、その上に御札が貼ってあった。四隅には盛り塩があった
「え?なっ!これなに?塩…食べていい?」
「それは盛り塩と言って、食用ではない…だから!塩は舐めるなッ!」
「では、私が説明しようか」
少し年季の入った男性が何かを説明しだした。マサキは真面目に聞いているつもりはあるが、頭では理解してなかった
「お前さんが出会ったのは、八尺様と言ってな。八尺…現代で言うと2メートル40センチという意味だ」
「2メートル40センチ…様。フッ!」
「おい!」
「実態はどんなものかは誰も知らない。見たものは、数日以内に殺される。それだけだ。まずこの部屋から出るな、誰かが声をかけてきても無視をしろ。窓や扉は開けるな。わかったな?」
「…あ、はい」
「理解は…どうせしただろう。私たちはちゃんと言った。これを守るのは自分次第だ」
そうして、村人たちはマサキをその部屋に閉じ込めた。
数時間は経ったのだろうか。エアコンが付いてない部屋はとても暑い
「あ〜これってさ、誘拐と監禁だよな。ここから出たら、誘拐罪と監禁罪で訴えてやる!」
「サキ、大丈夫かい?」
「そうだ、大丈夫か?」
扉の外から穂乃花とさっきの村人の声が聞こえた
「大変だな、ご飯をやるからこの扉を開けなさい」
「そうだ。お前の好きなショートケーキがあるぞ」
マサキは立ち上がり、扉をさして言ったのだ
「あなたを…誘拐罪と監禁罪で訴えます!理由はお分かりですよねッ!覚悟の準備をしておけッ!貴方は犯罪者!弁護士と裁判所を準備しときますので、待っててください!この犯罪者!」
扉からは返事が来なかった
「なんか言えや!とてつもなく恥ずかしいだろゥ!」
「…扉を開けてくれる?何をしているのか分からないけど、お願いね」
マサキは扉を睨んだのだ。そして、意味の分からないことを言ったのだ
「マスター…その扉には爆弾をしかけた。扉を開けた時、開けた対象者はここで終わりだッ!」
声は静まり返り、ドアノブを開ける音はしなかった
「へっ!これはハッタリじゃあないぜ!本当に取り付けたのだッ!…これって、自分がドアノブを捻った時…ヤバい感じ?」
そんな時、窓が叩かれた音がした。
「うおッ!な、なんだよ!風かァ?驚かせんなよ」
マサキは呑気にその窓を開けたのだ。目の前には真っ黒なつぶらな瞳をしたあの女がいたのだ
「やっと、み・つ・け・た」
「うわぁぁぁ!!!」
マサキは驚いた。だがしかし、顔を顰めマシンガンを構えた
「死んねぇぇ!!」
引き金を引こうとした時、一瞬だけ脳裏に綺麗な女性が見えた気がした
「!…『和子』さん!」
無意識だった。マサキはその人のことを知らないはず。そんな女性の記憶が無いのに、なぜ…なぜそんなことを…
「…な、なんだ。誰だ。和子って…」
いつの間にか、目の前にいた女は消えており、女がいた場所には古びたロケットペンダントがあった。そこから音が聞こえたのだ。その曲はエルガー作曲の愛の挨拶であった
「…愛。くっだらねぇ、はよ寝よ。うぅ、寒い。本当に夏か?」
マサキは窓を閉め…窓を閉めた時、間違えて壊してしまったようだ。熱風に当てられながら、寝床に着いたマサキ。窓がないのか、あの曲が響いていた。マサキはそれを聞きながら眠りについた
登場人物
マサキ
遊野 穂乃花
穂乃花の母親(遊野 幸恵)
穂乃花の父親(遊野 治)
八尺様
村人たち
天気:晴れ




