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《黒の毎日》  作者: 主s.s
126/170

六道坂

8月4日㈰人間界編

─ミーンミンミン…ミーンミンミン…

─コツ…コツ…コツ…

早朝八時、山の中ではひとりの足音と(せみ)の鳴き声しか聞こえない。『六道坂(ろくどうざか)』それは、一見(いっけん)ただの石造りの階段のように見える。だが、その坂にはひとつの伝承があった。それは、その坂で一輪の花を見かければ呪わ、最後は死ぬ事だった。呪われた人が死んで行ったため、どんな呪いが降りかかるのかは伝えられていなかった。その山にひとりの者が入って来ていた

「…はぁ、あの少しだ」

現在、サキはその山の中を歩いていた。この山の前任の所有者、吾郎(ごろう) 辰太朗(たつたろう)はその不可思議な伝承に気味が悪いと思い、サキに権利書を受け渡したのだ。生い茂った山道を歩き、サキはあの坂の前に来ていた

「…」

サキは辰太朗から軽くその伝承について聞かされていた。そして、その階段を登った。一段、二段と上がって行った。そんな時、背後からなにか視線を感じた。サキは振り向いたが何も無かった。不思議に思ったが、再び階段を上がって行った。そして、石段を登りきった先に、古びた和風な屋敷が建っていたのだ。その家は前の所有者が昔住んでいた屋敷であった

「…」

そんな時、誰もいないはずの屋敷の門が開いた。そこからひとりの女性が出てきた。二十歳前後の女性だろうか。肩まで伸ばした黒い髪に、透き通った白い肌をしている。

「…」

サキはその女性を観察するように見ていた。こんな山奥で、白いキャミソールワンピースを身にまとっていたからだ。隙間からは赤い下着の紐が見えていた。彼女はなかなか喋らなかった。

そして、彼女はサキを屋敷に招き入れた。とある、一室のお座敷(ざしき)に通された。机を間に向かい合うように座らされた。最初に彼女が口を開いた

「失礼、あなた…この山に来たってことはなにか、記者をしているの?」

「え?いえ、この土地の所有者。吾郎(ごろう) 辰太朗(たつたろう)さんからこの山を譲り受けた…新しい所有者と言ったところです」

彼女は少し驚いた顔をしたが、すぐに顔を元に戻した

「そう。なら、この山の伝承も知っているのかしら?」

「伝承…ですか?少しだけですが」

「あなたが、この山の所有者になったからには、この伝承を断ち切って欲しいの」

「なぜ?ただ譲り受けた人に?」

「私はあなたに期待しているの。だから…」

「わっかりました…でも、その伝承ってなんですか?」

「そうね、ここでは分かりにくいと思うから移動しましょ」

そうして、ふたりはあの坂に来た。ふたりは石造りの階段を見下ろしていた

「ここは?」

「ここは『六道坂』そう呼ばれているわ。ここで、この場所に見合わない花を一輪見たら引き返せと言われているの」

「なぜ引き返せと言われているのですか?」

「引き返せなければ呪い殺される。それだけよ」

「そうなんですね…ところで、その花はどんな花なんですか?」

彼女は、とある一輪の花を指さした

「例えばあんな自然界ではありえない青色とか…」

「…!?ま、まさか!」

サキはさっき彼女かいつまた言葉を思い出した。まさしくその花が見つけたら引き返せと言われている花だ

「(ま、まさかこの女ッ!人を呪うためにこの土地にッ!)うっ!」

すると、サキは急にうずくまった。腹と背中から押しつぶされるような感覚。汗が吹き出し、体にある全ての体液が搾り取られるような感覚だった。そして、口から黒い泥のようなものが吹き出した

「おゥッ…ウェッ!グェッ!ブヘッ!ゴホッ…ゴホッ」

女はサキの背中をさすっていた。サキは階段を見下ろそうとした時、自分が吐いた泥のような物で足が滑ってしまった。そして、階段から転げ落ちた。全身が打ち付けられて落ちていった。痛みを我慢して、サキは上半身を起こした。手を退かすと、あの青い花が押しつぶされていた。押しつぶしたことにより、吐き気や腹痛などが無くなった

「…」

サキはその花を掴もうとしたが、触った瞬間に崩れ落ちた。彼女は、坂の上から見ていた。サキは服をはらいながら立ち上がった

「…はぁ、もしかして今のが呪い?」

「大丈夫?」

「…」

サキは彼女を睨んだ。そして、地面に落ちた帽子を拾ったのだ

「…?(まさかな…)」

サキは昔とあるひとりの妖怪の話を聞いたことを思い出していた

「なぁ…君もこんなところに執着せずに別の家に行きなよ」

「…それってどういう意味?」

「人間を守るのはいいけどさ、君の幸運を待っている人がいるんだからさ」

「…」

「座敷わらしさん」

「…!?」

「最初からおかしいと思ってたんだ。なんで、こんな古びた屋敷に人が、それも女がいるのか。なぜ、坂の伝承をよく知っているのかってね…だって、ずっとここにいたから。だから、全てを知っている。そうだよね?」

「…よくわかったわね」

「わしが所有している限り、この山には生き物は一切近寄らせないから安心しな」

そう言って、サキは山を降りて行った。彼女はサキの背中を見守りながら、どこかへ消えていった

彼女は座敷わらしである。この坂で呪いで死人が出ないように数年前からこの地にいたのだ。彼女はここから離れることはできない。

六道坂は、いつも静かである。だが、一輪の青い花を咲かせて、ひっそりと獲物を狙って待っているからだ

登場人物

サキ

白いキャミソールの女/座敷わらし

天気:晴れのち一時

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