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《黒の毎日》  作者: 主s.s
104/132

母親と息子 その1

7月13日㈯異世界編

今朝、ハルト王子はやっと退院することができた。異世界学校は夏休みに入って十三日目。偶然にも人間界は三連休であり、一度実家に帰ってみることになったのだ。今は馬車で移動中だ

「…あのさ」

「ん?何?あ〜言わなくてもわかるよ。そのドレス似合ってるよ」

「違うよ。なんでさ…俺、退院したばっかだよね。まだ、松葉杖とコルセット付けてるしさ。なんで?」

馬車の中には、ハルト王子、サキ、弟のリカイとレオが乗っている

「まぁ、いいじゃん!」

「良くないよ。俺実家に行きたいだなんて希望してないよ」

「それは知っている。希望したのはわしだから」

日本語で喋っていると、やはり異世界語しか知らない弟たちは空気のような扱いになっていた

「あのさ、ふたりが話している言語はなんなのですか?」

「あ〜これは…まぁ、暗号言語的な」

「そうなんですか。便利そうですね」

事故も事件を起こらず、無事にハルト王子の実家に来ることができたサキたち。彼の実家は光の王国という国の城である

「おぉ!おっきぃ!初めて見る!」

城の中は物珍しいものばかりで、サキは興奮していた

「おお!何だこのカーテン!あ!アンティークな蛇口!だぁぁい好き♡」

「サキ、荷物…」

「エルジェ様」

召使いがハルト王子の背後に立っていた

「ファミル様がお呼びでございます。お荷物の方は自室へ運んでおきます」

「あ、うん」

サキが翻訳して、ハルト王子に伝えた。そうして、ふたりはハルト王子の母親ファミルの部屋を訪れた

「あ、あの人がお母さん?」

サファイアのような青い瞳に赤い髪の女。彼女はこの国の女王である

「…ごめんなさいね。エルジェとふたりっきりにしてくれる?」

「あ、はい。ハン兄。いい母親持ったな!」

そう言って、サキは部屋を出て行った。その部屋にはハルト王子とファミルしかしない

「『エルジェ』」

「!?」

その言葉は異世界語ではなく日本語であった

「お、お母様?一体…」

「キュウとアリアから全て聞いたわ」

「お、お母様…あの」

彼女は席を立ち、ハルト王子の近く来たかと思えば、彼の(ほほ)を平手打ちした

─パシン!…そんな音が部屋に響いた

「貴方は昔から変わらないわね。出来損ない」

「…」

彼女は続けて言った

「言葉、ひとつも覚えられないだなんて…肥溜め以外ね」

彼女の目はまるで、名前を与えられてない家畜を見るような冷たい目だ。息子として見ていない。その瞳の奥には愛はない。その目は昔から変わっていなかった

「貴方のような役たたずは初めて見たわ。そこら辺にいる野良犬の方が、まだ役に立つんじゃないかしら?野良犬を息子として飼った方がまだましだったかしら?」

「あ、あの…」

彼女はハルト王子に喋らせる隙を与えなかった。そして、机に戻って行った。ハルト王子は言い返さなかった。言葉が通じないからじゃない。それがいつもの光景だからだ。母親は椅子に座り、仕事の書類にペンを走られた

「お母様」

「何か?」

「いえ、なんでもありません。失礼します」

そう言って、彼女の部屋を出ていった。昔はあの後に本が飛んできたり、花瓶が割れたりすることがあったが、何故か今日はなかったことに対して、ハルト王子は疑問に思った。きっと明日、何か大きなことが起こる。そう彼は思ったのだった

To Be Continued(つづく)

登場人物

サキ

ハルト王子

リカイ

レオ

ファミル

召使い

天気:晴れ

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