森の迷宮編 エピローグ
一連の事件が終わり、迷宮の中央に設置された施設を出た誠哉たちは、のんびりと森の中を歩いていた。
かつて、感じていた不穏な気配はなく、ただただ広大な森がひろがるだけである。
「それで? みんなはこれからどうするんだ?」
誠哉が問いかけると、ふとみんな足を止めた。
「私はいったん魔王城へ戻りませんと……いろいろと仕事がたまってますの」
最初に口を開いたのはマアサだ。
続いて、アンナが口を開いた。
「そうだった……どうやって、国王に報告すれば……」
「ありのままでいいと思いますの? それでは不服なんですの?」
「いや……何とも言いにくいというかなんというか……まぁ道中で適当に考えるとして、とりあえず王都へ向かわないといけないわね」
二人が何をやったのか知らないが、アンナはいかにも困った様子を見せていた。
そんな中、口を開いたのはアリスだ。
「私はその……いったん、村に帰ります。フーリのことも気になるし」
少し気まずそうにしているのは、気のせいではないのかもしれない。
誠哉としては、最初からずっといた彼女が離れるのはさみしいし、かなり防御面で頼ることになっていた。
おそらくそれを感じているのだろう。
「いいよ。行ってきなよ」
だからこそ、あえて彼女の背中を押す。
「はい!」
彼女の顔がパッと明るくなり、満面の笑みで返事を返した。
「それで? オリーブとユキは?」
「そうですね……私は私のやりたいことをしたいと思います。世界の平和がどうとか大きなことばかりにとらわれて、本当に何がやりたかったのか忘れてましたね。植物学者……そう真の意味でそう名乗れるようになりたいですね」
確かに節々で見せた様子から植物が好きだというのは本心なのだろう。
オリーブは誠哉の前に出て、こちらを向いた。
「だから、ここでお別れですね。私は、じっくりと森の植物を観察しますので……まぁ適当に家でも建ててるので、見つけられたら遊びに来てくださいね」
そういうと、振り返って森の中に消えていった。
「まったく、面倒なくらいせっかちだな」
「えぇ。でも、そういったところが本当の彼女ということなんだと思いますわ……と私もさっさと城に戻らないと今頃、あの鬼メイド長が……」
「誰が鬼ですか?」
口をへの字に曲げて、文句を垂れていたマアサの背後に魔王城のメイド長が現れる。
ぎこちない動きでその場から撤退しようとするマアサの首根っこを引っ付かみ、彼女は魔王城の方へと歩き出す。
「皆様、お嬢様がお世話になった。感謝する」
それだけ言うと、マアサに有無をも言わせずに立ち去っていく。
その光景を見た皆は、苦笑を浮かべていた。
「さて、私もそろそろ行きますね。さよなら、また会う日まで!」
アリスは、満面の笑みを浮かべたまま一気に高度を上げてとびだって言った。
「まったく、アリスも結構せっかちだな……」
「面倒なくらいに?」
「先に言うなよ」
こうして、この場に残されたのは、アンナと誠哉、ユキの三人となった。
*
ユキの案内で迷宮を抜けるころにはすでに陽は落ちかけて、あたりは暗くなり始めていた。
初めのころ、すごく迷っていたことを考えると、かなり早く抜けられたほうだろう。
「そういえば、セイヤたちってどうするの?」
「ボクはただ気ままに旅をするだけだよ。まぁ元の世界に戻れたら一番いんだけど」
「私はセイヤ兄様についていきます!」
いつの間にか、ユキにセイヤ兄様などと呼ばれているが、それはいったんおいておく。
アンナは、誠哉の手をつかんだ。
「ねぇだったら、一緒に王都へ行かない? どうせ、行先決まってないんだからさ」
「そうだな。ユキはどう思う?」
「私は、世界を見てみたいです。なので、私も一緒に!」
「よしっ! 決まりだ!」
この時、当然ながら気づいていなかったのだが、さらなる歴史の改変が行われていた。
それは、この旅にどの程度影響を与えるのだろうか?
それは改変した張本人である観測者ですらわからない。
誠哉たちは、近くの町へ向けて歩き出した。




