第九十一話 防御陣形
「私に考えがあるんですけどね? 聞いてくれます?」
アリスが造った盾の裏で、オリーブが何かしらの魔方陣を描きながら口を開いた。
「何ですの? というか、ずっと何の準備を?」
「まぁこれもそれ関連なんですけれどもね……余裕がないから手短に話しますけれど……」
オリーブは、簡単にしかも皆に上手に伝わる形で作戦を話し始めた。
概要を一通り聞いた誠哉は、一つうなづいた後に小さくつぶやいた。
「それで行こう。面倒だけど、それが一番確実かもね……」
「えぇ私もそう思いますわ」
「私も同感です」
「私もそうね」
皆の返事を聞いた誠哉は、すっと立ち上がった。
「わかった。オリーブを中心にした陣形を組む。アリスは前で防御、アンナとマアサが両脇、ボクが後ろを固める。絶対にオリーブに攻撃を当てさせるな」
「えぇもちろんですわ」
「わかってるって」
「主も気を付けてくださいね」
そんなことを言いながら、言われたとおりの陣形へと動きだし、オリーブはさらにたくさんの魔方陣を展開し始めた。
「森林結晶、解。全陣観測、起。森宮探索、起……」
次から次へと呪文を羅列していくオリーブにそれほどの魔力があるのか一瞬、心配になるが、彼女が観測者であることを思い出して、納得する。
観測者は、神に等しい存在……その認識が正しければ、魔女など目ではないぐらい豊富な魔力を持っているのだろうと……
*
オリーブが魔方陣を展開し始めてからどれほどの時間が経過したかわからないが、相当な時間が経過しているのは事実であろう。
現に、オリーブを含めた全員の顔に疲れの色が見えた。
彼女が放ってきた人形を追撃し、また別方向からの攻撃を回避する……ずっと、そんな流れが続いていた。
これにより大きく消耗を見せる誠哉たちに対して、人形に攻撃をさせて自身は全く動こうとはしないアルドンサの表情はいつも通り涼しいものであった。
「オリーブ。準備はまだなのか?」
「ちょっと待ってくださいね。もう少しなんですけれど……いくつか同時進行でやってるもんだから」
誠哉がいらだちを見せるのも無理ないだろう。
現にアルドンサの攻撃から、オリーブを守り続けるのは、難しいし、彼女の弱点であるスイッチを見つけることもままならない。
しかし、ここで見つけた糸口を簡単に途切れさせるわけにも行かなかった。
今、オリーブが使おうとしているのは、探索魔法の一種でそれを使えば相手の体の中までわかってしまうという恐ろしいものだ。
つまり、それを使って彼女の弱点を探そうという魂胆である。
だが、その魔法は通常よりも多くの魔力と時間を消費するためにこうしてしばらく、誠哉たちが周りを固める必要が出てきたのだ。
「どうする……このままじゃ……」
「面倒なことに全員共倒れだ。なんて言いたいんですか? 主らしくない弱気ですね」
「そうか? ボクは至って正常運転のつもりなんだけど?」
「そうですよ」
そうだろうか……と口の中でつぶやいてみる。
そう考えると、いつもよりは若干弱気かもしれないが、そんなに気にするほどではないはずだ。
「どうしたものか……」
「雑念を考えないでとりあえず、敵の攻撃を防ぐことだけに集中してくださいまし!」
「わかったよ」
後ろから飛んできた攻撃を弾きながら、今度は前に踏み込んでオリーブの背中に迫ろうとしている人形を叩き落とす。
「でも、これじゃきりがない気がするんだけど?」
「まぁまぁとりあえず、もう少しだと思うよ?」
「そうだといいんだけどね……」
誠哉は小さくため息をついて、再び攻撃をはじく作業に戻る。
こうしている間にも人形の数と攻撃回数は徐々に増えており、防御の限界が近づいていることを肌で感じていた。
「早くしてくれよ。オリーブ」
誠哉は、ちらりと後ろで魔法を唱えているオリーブの背中を見た。




