第九十話 自立式人形の弱点
突然のマアサ達の登場に少し動揺した様子を見せたアルドンサであったが、彼女はすぐにいつも通りの無表情に戻った。
「まぁいいわ。雑魚の一匹や二匹増えたところで私の勝ちは変わらない……この世界は私の手の中にある。さぁ私の掌の上で踊りなさい!」
彼女が再び両手を広げ、大量の人形が姿を現す。
「さて、あなたたちはいつまで大地に立っていられるかしら? と言っても、なぜか生きちゃっている人たちもいることだしわからないけれど……」
彼女は両手を器用に動かして、たくさんの人形をいっぺんに操る。
彼女の体からは、途方もないほどの魔力があるように思えた。
「とりあえず、やられる前に仕掛ける方が得よね!」
まず、攻撃を仕掛けたのはオリーブだった。
彼女は、事前から準備していたらしい森林結晶を発動させた。
「先手必勝ってね!」
放たれた緑の光は、アルドンサへとまっすぐ飛んでいくが、彼女は表情一つ変えないでそれを受け止めた。
「あれ?」
「まったく……あのヒトハに感謝することがあるとすれば、この上なく丈夫に体を作ってくれたことかしら……まぁそんなことどうでもいいんだけど」
すすでも払うようにぱっぱと服についた粉をはたきながら、アルドンサは人形をオリーブの方に突撃させた。
しかし、その前にアリスの盾が出現し、その動きを阻んだ。
「それじゃ、次は私が行かせてもらいますわ!」
続いてマアサが大規模な魔方陣を展開させて、あたりを焼き尽くす勢いの炎が彼女へ向けて飛ばされる。
しかし、これも難なく受け止めた彼女は、何時の間にか誠哉たちの背後に回してあった人形を使って、オリーブに攻撃を仕掛けていた。
「キャッ!」
背後からの鋭い痛みに次の攻撃の準備をしていたオリーブの動きが止まった。
「私がみている目の前で準備するなんて、あなたも落ちたわね。昔はもうちょっと優秀だったのに」
「それは悪いですね。来た時にすでにこんな状態で……この施設に入った時から用意していた森林結晶以外はこんな有様で……でも、私には仲間がいますので、大丈夫じゃないですかね?」
今のでかなりダメージを受けたはずなのに、オリーブは倒れることなく呪文を唱え始めた。
その周りをアリスの盾が囲い、彼女に攻撃が届かないように配慮する。
そうしているうちにアンナは、彼女の背後に回って聖剣を抜いた。
「これで!」
「甘い。甘すぎるわ」
勇者の会心の一撃を自信の左手で受けた。
ぱっくりと割れた、腕からは血は全く出てこない。それどころか、すぐに再生していった。
「なるほど……遠隔、直接ともに耐えきれるほど硬いってわけか……めんどくさいな」
「わるかったわね。めんどくさくて……まぁこっちの勝ちは決定事項なんだからさっさと負けなさい。疲れちゃうわ」
余裕の表情を浮かべる少女を倒すすべはいまだ見つからない。
だが、まったく方法がないというわけではないはずだ。
「ユキ、オリーブ。あいつの弱点とか知らないのか?」
「残念ながら私は知らないね」
「うーん……どこかにお姉さまが造った手動操作へ切り替えるスイッチがあったと思うけれど……どこにあるかさっぱり……」
「そうか……だとすれば、スイッチを探さないといけないのか……」
アルドンサは、その話を聞いて興味がわいたのか少し眉を上げた。
「面白い話ね。私も知らなかったわ……でも、どこかしら? 少なくともこの服をひん剥いてもそれらしきものはなかったわ」
「おいおい……」
まぁ実際問題、ユキは場所を知らないらしいし、本当に人目につく場所にないのかもしれない。
とすれば、手の届く場所じゃない可能性もあるのだが、それはありえないだろう。なぜなら、スイッチが切れないようなら、そういったものを造る必要がないからである。
こうしているうちにもアルドンサは、次々と人形を召還していき、次々と攻撃を仕掛けてくる。
今のところは、アリスの盾がちゃんと機能しているからいいが、それもいつまでもつかわからない。
勝負は、途方もない長期戦の気配を感じさせていた。




