第八十九話 誠哉VSアルドンサ 開戦
目の前の少女、アルドンサ・マリ・モンテジョルは冷めた目でこっちを見ていた。
「どういうつもりだ?」
「どういうっていうと? もっと、具体的に言ってちょうだい。たとえば、なんでクーデターなんてくだらないことを考えて歴史をいじり、いろいろと狂わせたのか? とか」
「いろいろと違ってるが、大体そんなところだな。いや、違うか。面倒だけど、訂正するよ。なんで、自分の主である一葉を裏切ったりしたんだ? そして、どうしてボクの記憶を操作した? ボクが一葉の兄だからか?」
アルドンサはクスクスと笑うだけで、答えようとしなかった。
「答えろ!」
「あら、結構強く出てくるのね。確かに、あなたはあの神様の兄だけど、それだけが理由じゃない……気づいてしまったのよ。この世界は、別にあんな一葉に任せる必要はないのよ。まぁ本人は、わざとそう仕組んでいるなんて言う言い訳をしているけれど、あんなみじめなことになるまで想定通りなわけがない。つまり、私の方がはるかに優位に立てている。そうは思わない?」
「さぁどうだか?」
どこまでが一葉の計算のうちかわからない。
すでに彼女がどういった人物だったのか、思い出せないし、自分の過去のことなどまったくわからなかった。
ただ、一葉という名の妹がいたと思い出されただけで、ユキの話を聞いている段階ではまったく理解できていなかった。
「まぁ私が気づいてしまったシステムっていうのは、この世界がゲームと呼ばれているもので、自らを神と自称する一葉は、本来ならGMと呼ばれる存在らしいわね。そして、あなたはこの世界の主人公。勇者や魔王を差し置いてずいぶんなご身分よね」
「そりゃどうも……」
「妬ましいわ。あの一葉は、あなたのためだけにこんなバカげた世界を造ってしまったんだもの……世界とやらがどんな構造になっているか知らないけれど、私が主導権を握れれば、もっとみんなが住みやすい世界を造れる。私の理想を実現できるのよ。だから、魔物の件は、維持装置が何とかしてくれるだろうから、あんたたちはおとなしく魔王と勇者の戦いの行く末でも見ていなさい……まぁ観測者のルールは絶対だから、今頃魔王が死んだ頃だと思うけど……」
ユキは、再びクスクスと静かに……それも不気味に笑い声をあげる。
彼女がいるだけで、この空間の温度がいくらか下がっているように感じるのは、気のせいであろうか?
「どうしたのよ。呆けた顔しちゃって……そうか、自身のあまりのバカさ加減に気が付いたのかしら? まぁいいわ。どうせ、今からあなたにも消えてもらうんだから……」
そう言って、アルドンサが両手を広げた時である。
彼女が、信じられないものを見るような目で誠哉たちの背後を凝視していたのだ。
「なん……で……」
誠哉が振り向くと、そこにはアンナ、マアサ、オリーブの三人が立っていた。
これに関しては、誠哉も驚きを隠せなかった。なぜなら、本来ならば三人のうち二人は死んでいなければおかしいのだから……
「まさか……マアサ。あなた」
「えぇ。私は、私の意志を持って行動いたしておりますの。ですから、こういった形にさせていただきましたわ。まぁもっとも、あなた方に私がまちがいなく死ぬと思わせるのが大変でしたが……」
「私も同様ですよ。あなたにしては、珍しいですよね? ちゃんと死亡確認行わないなんて」
三人は、ゆっくりと歩いてきて誠哉たちの横に来た。
「さぁさぁお兄様。どういう状況なのかわかりませんが、とりあえずあの生意気な観測者をぶっ飛ばせばよろしいですのよね?」
「そっか、その方がマアサを倒すよりもずっと楽よね」
「その通り、私としてもそっちの方がいろいろと片付きますしね」
「お前ら……」
それぞれの理由を口にしながら、三人は臨戦態勢を取った。
「よし! 面倒だから、さっさと片付けるぞ!」
「おう!」
こうして、世界の命運をかけた戦いの幕が切って落とされた。




