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魔王の兄は旅をする  作者: 白波
第六章 世界の中心
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第八十七話 ユキの過去

 本日、三話連続で投稿しております。ご注意ください。

「どうして……私の名前を?」

「ある人から聞いたの。その人から聞いたあなたは、今のあなたとは全然違う! もっと、こんな形じゃなくても笑える子だったんですよね? そう聞いていますけど」


 フーリから聞いた情報が正しければ、この子はもっと純粋な子なのだ。

 こんなふうに猟奇的な行為を楽しむ子ではないはずなのだ。


「うっユキ……ユキって呼ばないで。それは、お姉さまにもらった名前だから、お姉さまが居なければ私は誰なのよ?」

「あなたは、ユキ。それ以外の何者でもないはずです。あなたと“お姉さま”の話。聞かせてもらってもいいですか?」

「……わかった」


 最初の彼女はどこへ行ったのかというぐらい、おとなしくなったユキはポツリポツリと自らの過去を話し始めた。




 *




 ユキが生まれたとき、世界にはただただ広い世界が広がっているだけだった。


 そして、世界にはユキと“彼女”しかいなかった。


「ここは?」

「ここは、私が造った世界よ。そして、あなたを造ったのは私」


 黒い髪と黒い瞳を持ち、一糸まとわぬ姿で立っている彼女の姿は、とても美しかった。


「私わね、この世界をみんなが笑って過ごせるような世界を造りたいの。でも、それは私の力だけじゃできない。私が一から完璧に造ったらつまらないじゃない。自分が思ったように動くだけじゃダメ、私が操作しているだけじゃ私の理想の世界は造らない。私が今から造るのは出来損ないの世界。そのためにも、あなたにも手を貸してほしいし、至らない私の代わりに管理者になることだってありえる。そういう覚悟でいてほしい」


 静かに語った少女は、ユキの頭をなでながら優しい口調で告げた。


「真っ白な肌ね……まるで雪みたい……そうだ。あなたの名前はユキにしましょう……私の名前は、オキムラヒトハ。この世界を造った神様よ」

「神様?」

「そう。神様よ」

「すごいすごい!」


 ユキは、ヒトハに抱き着いた。

 ヒトハは、女神様らしく慈悲にあふれた笑みを浮かべてユキの頭をなでていた。


「ユキ。あなたは、笑っているといいわ。あなたの笑顔、笑いは、きっと人々を幸せにする力がある……だから、あなたはずっと笑っていなさい」


 ヒトハは笑顔でユキの頭をなで続けていた。




 *




 それからというもののヒトハと過ごす日々はとても楽しかった。


 山を造り、海を造り、生物を造り……でも、必ず不完全になるようにした。悪く言えば、二人で出来損ないの世界を造って行ったのだ。


 だが、二人に大きな変化はなかった。

 変わったところと言えば、ヒトハの髪が黒からブロンズに変わったところだろうか?


「ねぇユキ。私の世界はよくなってると思う?」

「はい。お姉さまの造っている世界は素晴らしいと思います」

「そう。ありがとう」


 ユキは、ヒトハに頭をなでてもらうのだが大好きだった。


 彼女に褒めてもらうためにユキは次々と仕事をこなしていった。


「ありがとう。さすがユキね」

「えへへへへ」


 ユキは照れくさく、頭をかいた。


 ニンゲンたちが現れるころになると世界の中心に大きな施設を造って、そこで世界の発展する様子を見ていた。


「それじゃ、ユキ。ちょっと、待っててね」


 施設の中に用意されている一番大きな部屋には、たくさんの人形が置いてあった。

 これは、ヒトハが人形を使った魔法を好んだからだ。


 彼女は、世界を創造する一方で人形作りに打ち込んでいた。


 そして、いつしかニンゲンの子供と同じぐらいの背格好をした完全自立の人形を作りだしていた。


「ユキ。今度の人形どうかしら?」

「すごいです! お姉さまの人形は素晴らしいですね!」

「えぇ。今度からは、この子にも手伝ってもらうから」


 その人形はかつてのヒトハの姿を模したのか、黒い髪と黒い瞳を持ち、真っ白なドレスを着ていた。


「へぇ名前はなんていうんですか?」

「えっそうね……この子の名前は……」


 その数年後、事件は起こった。




 *




「結局、お姉さまは帰ってこなかった。それから、ずっとずっと私はお姉さまを待っているのに……私がいけない子だから、お姉さまが帰ってこなくなっちゃった……」


 うつむいて泣いているユキの頭にアリスがポンと手を乗せる。


「ずっとさびしかったんですよね? だから、来た人に帰ってほしくなくてこんなことしちゃったんですよね?」

「うん」


 アリスは、優しくユキの頭をなで続けていた。

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