第八話 魔王再び
夕食を終えた誠哉とアンナ、アリスは就寝の準備をしていた。
ご察しの通り食料は底をつき、誠哉が頭を抱えるのを見てさすがのアンナも悪いと思っているのか、小さく縮こまっていた。
「さてと……」
手元の魔道書を見ながら魔法陣に間違いがないか確認して焚火のそばに戻る。
「面倒なことも終わったしね寝るか」
「ねっねぇ!」
アリスをローブの中に入れて寝転がったその時、アンナが話しかけてきた。
「何? 早く寝たいから早めに済ませてくれる?」
「えっと……その……あのね……ついつい、疲れてて食べ物全部食べちゃって悪かったっていうか……その……だから、えっと……一緒に寝る?」
「はい?」
どこからどうつながって一緒に寝るに至ったのか理解できなかった。
その会話を聞いていたらしいアリスの「えっ?」という声がローブの中から聞こえてくる。
「いや……別に変な意味とかないんだけど、その……別にさみしいとかそんなわけじゃないの……仲間だってその気になれば……」
なぜか顔を真っ赤にしながら話しているアンナは、あの昼間の気の強そうな彼女と同一人物とは思えなかった。
誠哉は、少し空を仰ぎ考えをまとめてから彼女に返事をする。
「もしかして風邪か? 調子が悪いようだったら、面倒だけど薬草ぐらい探すよ?」
「ちっ違う! そういうことじゃなくて! その……魔物と戦ったときとかもさ……助けてくれたから……」
「あれか? あぁアンナがいて、結構助かったよ。とにかくこじらすと面倒だから早めに寝た方がいいよ」
風邪を引くとひと肌が恋しくなるのはよくわかる。
だが、だからといってここで一緒に寝てしまうというのはいけないと思ってしまうのは、主に妹のせいだろうか?
“まったく……主ったら……”なんていう妖精の声を聴きながら誠哉はアンナから少し離れた場所で眠り始めた。
*
翌朝。
目を覚ました誠哉は起きるに起きられない状況であった。簡単に言えば、いつの間にか横に来ていたアンナが左腕をつかんで離さないのだ。
いつもなら起きているアリスもなぜか寝ているし、一番の問題は……
「また城を抜けてきやがったなこいつ」
魔王マアサが誠哉の右腕に抱き着いているのだ。
何時の間に来たのだろうか? まぁ魔王の力をもってすれば誠哉の魔法など意味ないのだろうが、あのメイド長の目を盗んでこれほどの短期間で抜け出してくる彼女もすごいような気がする。
「めんどくさいな……」
なんだか、自分を挟んで平和そうな顔で寝ている二人を見てると起こすに起こせない。
マアサだけでも起こしておかえり願いたいのだが、そのやり取りの途中でアンナが目覚める可能性も十分ある。
つまり、今考えるべきことはこの状況を脱することよりもこの場で世界の命運をかけた最終決戦を始めさせるのを阻止することだろう。
「お兄様」
「わっ!」
考え事をしているときに唐突に呼ばれたため、思わず大きな声が出てしまった。
急いでアンナの方を確認すると、彼女は相変わらず熟睡していた。
「起きていたのか」
「えぇまぁ。お兄様がにっくき勇者とつるんでいるなどという噂を耳にしたもので」
「どんなルートでそんな情報が入るんだ」
魔王の情報網恐るべし。もしかしたら、何かしらの魔法を使って監視しているのかもしれない。
「とりあえず、メイド長の正式な許可はいただいてますの。それと、私はこのあたりを収めている伯爵家の長女でお兄様はその家の次男ということになっておりますの。もちろん私が妹ですわ」
「わかった。つまり、いつも通りでいいんだな……けど、行動は慎めよ。頼むから」
「えぇ。わかっておりますの。それにしても、お兄様に置かれましてはもっと私好みの下着を身に着けてほしいものですわね」
その一言を聞いたとき、こいつ絶対わかっていないと思わずため息をついてしまった。
はたして、勇者と魔王は目の前で派手な戦いを起こしたりしないだろうか……世界が滅びるとかそういうのよりも前にそっちの方が心配になってしまった。
早々に魔王が再登場です。かなり行動力があるお方なので自らスパイとして勇者のところへ行く(という建前で)誠哉の旅に合流しました。
しばらくマアサ、アリス、アンナの三人との迷宮探索が続く予定です。(もしかしたらもう一人ぐらい追加するかもしれません)
それと勇者のキャラ変わりすぎだろ! ということの理由に関しては後々。
これからもよろしくお願いします。




