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魔王の兄は旅をする  作者: 白波
第五章 森の中央
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第八十話 決着、オリーブVS誠哉(後編)

 二つの攻撃は、フィールドの中央でしばらくぶつかり合ったのち、徐々にアルドンサの方に押し戻されていった。


「へぇなるほど……そう来るわけ」


 アルドンサは、ふっと力を弱めて誠哉の攻撃を一身に受ける。

 なぜ、この時彼女がこんな心境を持ち、行動したのかは今ものちもわからない。


 ただ、わかることは誠哉の攻撃が彼女の体を突き抜けたという事実だ。


「ごほっ……私に一発当てるなんて上等じゃない……」


 治癒魔法で傷口をすぐさま塞いだアルドンサは、左手に魔道書を持ち、それを開く。


「転生 人形たちの乱舞……集え、囚われの人形たちよ!」


 アルドンサの周りにたくさんの西洋人形が出現する。


「どう? 私のコレクションは……見とれる暇もないぐらいに瞬時で殺してあげるわ!」


 人形たちは、それぞれ形の違う銃を構えて、誠哉たちに向けて一斉に発射した。

 アリスが、瞬時に作り上げた木の盾のおかげで直撃こそ免れているが、周りに次々と木くずが飛んで行っていることから考えるに確実に盾は、ダメージを受けているようだ。


「これはまずいですね……早く、どうにかしないと3分立つ前に盾の方がダメになってしまいます」

「みたいだな……さて、どうするか……」


 このままではこちらの負けは明確だ。

 異世界から召喚した技の効果を傍受できる時間も限られているうえに、彼女には幻影は通用しないようなのでこちらはあまり頼りにならないだろうし、もう一度技を取り込むには、いささか時間が足りなさすぎる。


「面倒だけど、地面に穴をあけて脱出するしかないか……母なる大地よ。我に地を進むすべを!」


 手のひらを地面に押し付けると、轟音と共に地面が割れていく。

 その隙間にアリス、オリーブ、誠哉の順で中に入って行った。


「オリーブ。大丈夫か?」

「……えぇ。たぶん……」


 彼女の顔色は真っ青で、あまり状態は良さそうではない。

 とりあえず、上の盾が持っている間はここにいることはばれないだろうと、あたりをつけてしばらく様子を見ることにした。


「それにしても……よく、私なんか……助ける気に、なったわね……」

「それはそうだ。だって、お前は仲間だろ?」

「仲間……ね……」


 オリーブは、どこか懐かしいようなあいまいな笑みを浮かべていた。

 彼女の過去に何があったのかわからないが、今の彼女なら、誠哉たちの仲間としてもう一度旅ができるかもしれない。

 そんな風に思っていたその時である。


 一発の銃弾が、オリーブの心臓を打ち抜いた。


「えっ?」


 オリーブの体がゆっくりと崩れ落ちる。

 それと同時に頭上から声が聞こえてきた。


「これで時間ね……結局、そのごみの処分しかできなかったわ……」


 冷たい口調と冷たい表情でたくさんの人形を引き連れたアルドンサが穴に下りてきた。


「防衛一方で勝てると思ったのかしら? あぁ私に勝つよりも3分持ちこたえるのを優先したってわけね……まぁいいけれど……どちらにしても、あなたの勝ちよ。私としては、かなり不服だけど……」


 アルドンサは、拍手をしながらこちらに近づいてきた。

 気づけば、背景はオリーブの世界から元々の研究施設のような場所へと戻っていた。


 無機質な床を真っ赤な血液が塗りつぶしていく。


「こっちの勝ちなら、約束は守ってもらえるんだよな?」

「えぇ。ここから先は、進路オールグリーン……迷わず進みなさいな。それと、オリーブ・ラン・プランターはあくまでこっちの駒だから、こちらで回収させてもらうわ」

「おい! 約束と違うんじゃないのか?」

「あら、私はあくまであなたとそこにいる妖精のことを言っていたつもりだったんだけど……まぁそういうわけだからせいぜい頑張りなさい」


 それだけ言うと、アルドンサはオリーブの遺体とともに光の粒となって消えて行った。


「待て!」


 誠哉がそういったときには、アルドンサの姿はすでになく、床にたまっている血液だけが彼女が……オリーブがここに倒れていたということを証明していた。


「オリーブさん……なんで……」

「面倒だけど、今は悲しんでいられない。先に進むぞ」


 こうして、オリーブと誠哉の戦いは思わぬ乱入者の手によって幕を下ろされた。


 彼女と過ごした日々は短かったが、誠哉たちの胸に確かに刻まれていることだろう……

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