第七十七話 森林結晶発動
誠哉は、茂みの中に隠れて攻撃のタイミングを狙っていた。
はっきり言って、意外とガードが甘くしようと思えばいくらか攻撃のチャンスがあったのだが、ここはあえて隠れることに徹していた。
「にしても何をやってるんだ……」
なんとなく魔力の流れからオリーブの魔法に発動までのタイムラグがあることは分かっていた。
だから、いろいろな魔法を次々と仕掛けることによりそれをごまかしていることもよくわかっていたのだ。
なんだかよくわからないが、いつもの感覚が少しずつであるが戻ってきていた。
考えられる原因としては、アリスを抑えるために使った魔法でオリーブの魔力の限界を超えてしまったために強制的に一部の魔法が解除されているというものだ。
つまり、彼女は無意識のうちに誠哉の能力を抑え忘れている可能性が非常に高かった。
だからと言って、この場ですぐに出ていく気はない。
「なるほど……能力を超える覚醒か……面白いわね」
その声とともに後ろに気配を感じた。
振り向くと、そこにはアルドンサの姿があった。
「久しぶりってほどでもないか……セイヤ」
「そりゃどうも……面倒なタイミングのご登場で」
「えぇ。私は、どうせめんどくさい人間でしょうね」
アルドンサは、くすくすと笑いながら誠哉の方へと歩み寄った。
「それで? あの子に勝っちゃうのかしら? どうせそうなるなら、生半可に生かしておかないで壊してくれるとうれしいわ」
「何を……」
「だから、ちゃんと殺すのよ。まぁちっとは抵抗あるかもしれないけれど、こっちとしては粗大ごみを片付けるいい機会なのよ。だから、ちゃんとやりなさい」
スッと、アルドンサの体が透けて、一気に霧散する。
「おい! 待て!」
声を上げるが、彼女から答えは返ってこない。
何よりも厄介なことに今、上げた声のせいでオリーブに感づかれてしまった。
「何だそこにいたのね。かくれんぼはおしまい……」
彼女は、手をぐっと広げたが、誠哉は彼女の口元を注意深く観察した。
すると、やはりかすかだが彼女の口が動いているのが分かった。
「やっぱりか……」
「やっぱり?」
「あぁ。面倒なことに君の魔法には発動までタイムラグがあり、それをごまかすためにいくつもの魔法を仕込み、スイッチを切り替えるみたいに使い分けている……そんなところじゃないのか?」
オリーブが苦虫をかみつぶしたような顔を浮かべた。
どうやら、図星のようだ。
よくよく考えれば最初からおかしかったのだ。
かなりの魔力を消費していると思われる一方で攻撃には大きな波があり、動作がいちいち大きかった。
つまり、彼女の攻撃には魔法によるもの、発動までのタイムラグをごまかすために行うそれ以外の攻撃の二通りがあるということだ。
「私は観測者よ……負けるわけがない!」
「そんな立場にしがみついて何が楽しいんだよ!」
「私は! 私は! こうでなければならない! こうして、世界を見守るべきなのよ! だから、邪魔者は排除する! 大体、種がばれたからって何? 仕込んでいる魔法は一つじゃない! 森林結晶、動!」
オリーブの頭上にエメラルド色の巨大な結晶が浮かび上がっていた。
それからはとてつもない魔力を感じた。
「私は……私は! 先生の意志を守る! 先生の考えを守るためにもこうするしかない!」
「面倒なことに君が何を守ろうとしているのか知らないけれど、ボクはボクなりに守りたいものがあるからね……」
攻撃を仕掛けようとして、先ほどのアルドンサの言葉を思い出していた。
彼女は、オリーブのことを粗大ごみと呼んでいた。
おそらく、自分がまけたところでオリーブの帰る場所はないのだろう。
「ぼさっと暇してるなんてあるのかしらね? まぁどちらにしてもいかせてもらうけれど……我が力の前にひれ伏せ! 森林結晶!」
エメラルドから無数の光がはなたれ、そのうちいくつかが誠哉に向かって迫ってきていた。




