第七十三話 動き出す戦況
まだ体の節々が痛むが、動けないこともないだろう。
誠哉は、足元に小さく魔方陣を描いて、その効果が働いていることを願いながら誠哉は、アリスの方を見た。
一連の動きから、誠哉の意図を感じ取ったアリスは、徐々に盾の範囲を狭めていく。
「行きます!」
「おう!」
オリーブの攻撃が弱まったのを見定めて、アリスが盾を解除して誠哉は横へ飛んぶ。
「そっちから出てくるなんて助かっちゃうかもね!」
チャンスだといわんばかりにオリーブは、誠哉に向けて弾を打ち出す。
誠哉は、それを的確に見切ってよけて行った。
なんとなくであるが、オリーブが悔しそうな表情を浮かべているのが分かった。
*
いきなり動かれたので何か、射程を間違えたのだろうか?
とりあえず、セイヤはあまり動ける状態ではないという確信を持って彼に向けて狙いを定める。
「今度こそ!」
そして、穴をすべて開けて彼に向けて弾を一斉に発射した。
これは、よけられないはず。
そう思っていたのだが、確かに彼を狙っていた弾は、全弾外れて地面へと落ちて行った。
「どういうこと? まさか、補正が復活しているの? いや、そんなはずは……」
「どうやらオリーブは、ボクを倒すことに傾倒しすぎて面倒なことにボクの仲間のことを考えていなかったみたいだね」
「なっ!?」
いつの間にか、背後に立っていたセイヤの姿に疑問は一気に噴き出していった。
「なんで、ここに……」
彼の手にはナイフが握られている。
どうやって中に入ったかわからなお。だが、彼が……セイヤが何かしらの方法で壁を抜けて中に入ってきたのだけは事実だ。
「面倒なことに自分でもどうやったかわからない……なんてことは言わないけれどね。さっきもいったけれど、君はボクにばかり注意を向けすぎていたんだよ」
「なにを……」
言いかけて、彼の言葉の意味に気づいてしまった。
そうだ。自分が戦っているのは、彼だけではないと……
はっきり言って、普段は非戦闘員であるアリスのことを全く考慮していなかった。
しかしながら、彼女のおかげでセイヤはいまだに自分の前に立って戦っていられるのだ。
妖精の力というのは、いまだに解明されていない部分が多い。となると自分の思いもよらないことができる可能性だって十分あったのだ。
「なるほど……それを考えなかったのは私の失敗ということですね……解!」
オリーブの周りに形成されていた巣のような塊が一瞬にして消え去り、セイヤは空中に投げ出される。
そんな姿を見ながら、オリーブは下に大量の葉を出現させて着地の衝撃を和らげた。
「ですけど、あなたこそこのフィールドが私自身だっていうことを忘れてるみたいですね」
彼と会話している間に気づかれることなく高度を上げるのは大変だったが、結果的に成功し彼を地面にたたきつけることに成功した。
あれほどのクッションを布いてもなお、体が痛むがこれぐらいならすぐに回復するだろう。
もうもうと土煙が出ているあたりに彼が落ちたのだろうとあたりをつけて、針を二三本そこへと投げる。
これには、毒を塗ってあるので当たったらいくら傷をふさげたところでただでは済まないはずだ。
それが煙の中に消えて行くのを確認して、オリーブはそこから背を向ける。
「ごめんねセイヤ君……あなたとの迷宮探索楽しかったわ……でも、私は観測者だから、観測者としての使命があるの……悪く思わないでちょうだい」
今一度振り向いてそんなことを言ってみるが、どうせ、本人には聞こえていないだろう。
そう思いながら歩き出したその時だった。
「へぇ……そんな風に思ってくれてたんだ。それならちょっとうれしいかもな」
背後からセイヤの声が聞こえてきたのだ。
振り向くと、晴れてきた土煙の向こうに自らの脚でしっかりと大地を踏みしめているセイヤの姿があった。
「どうして……」
彼の落ちた場所を見誤ったのだろうか? それともあの針が外れていたのだろうか?
様々な憶測が頭の中を巡る中、セイヤは懐から愛用の魔道書を取り出して、開いた。
「さて、めんどくさいけど反撃と行こうかな……」
セイヤの顔には、余裕の笑みが浮かんでいた。




