第七十二話 オリーブの実力
次から次へと飛んでくる攻撃をすんでのところでかわし、アリスと少し話をしてまたかわす。
戦いは完全な消耗戦となっていた。
ずっと、攻撃を続けているのだから相手にも疲労がたまっているはずなのだが、オリーブの攻撃は弱まることを知らない。
「まったく、めんどくさくてたまらない」
「そうです……主! 左後方からです!」
「了解!」
もっと言ってしまえば威力は格段に上がってきている。
最初は木製の矢が多かったのだが、今飛んできたのはとげとげとした植物の塊だ。
「ともかく……」
「主! 伏せてください!」
「えっ?」
よく状況が呑み込めずにそんな声を上げてしまったその時だ。
ドンッという大きな破裂音とともに誠哉の体は熱風にあおられて勢いよく右に投げ出された。
「今のは……ぐっ!」
言いかけて、誠哉は口から血を吐いた。
見ると、体のあちらこちらにやけどや打撲の跡があるのが見て取れた。
「爆……弾?」
「見たいですね。大丈夫ですか? 主」
いつの間にか上空へと避難していたアリスが、心配そうな表情を浮かべて降りてきた。
誠哉は、体の節々に力を入れて何とか立ち上がった。
「これを見て、大丈夫だと思えたらすごいと思うよ……」
「ですね……とりあえず、彼女のコアを探すのはいったん止めて、主の防御と治療に専念した方がよさそうですね……」
「やっぱり、両方は無理だったんだな……まぁ面倒なことにコアを探すって話になってから、盾を使ってなかったことでなんとなく気づいていたけれど……」
仮に両方使えるのなら、誠哉がこれほどのけがをすることはないだろう。
実際は、とっさにアリスが盾を造っていたので“この程度のけがで済んだ”のだが、それを知るのはもっと後になる。
「あら、死ななかったのね。運がいいやら悪いやら……素直に死んでくれれば楽に逝けたでしょうに」
すっかりと焼け野原となってしまった森は、木々が勢いよく成長してあっという間に元の形へと再生していく。
そんな中を日傘を差したオリーブが悠々と歩いていた。
「主人公補正なしでもその運と仲間の強さ……いや、うらやましくなるね……まぁこの空間じゃいつまでもつかわからないけどね」
「オリーブ! ごほっ」
「主!」
声が出すのがつらい。
大きな声を出した途端に咳き込んで地面に血が落ちた。
「まったく……あなたは誰に向かって口をきいているのかしら?」
地面が盛り上がり、そこから飛び出した木の根が誠哉ののど元の前まで迫った。
「いい? 生かすも殺すも私の自由なの。いや、ここで殺しちゃってもいいんだけど、人形遣いがうるさくてね……そういうわけだから、殺さない程度にいたぶってあげるわね……森林よ、我の声にこたえよ。温かき生を守る巣を造れ」
地面から飛び出してきた無数の木の根がオリーブの周りを囲むように形を作っていく。
目の前にある球体は、いつかテレビで見たスズメバチの巣のような形で、それと違う点は出入り口が見当たらないところだろうか?
球体の側面に無数の穴が開いて、無数の針が飛び出した。
アリスが前に出て木の盾を造り、それを横へはじいた。
「主。少し後ろへ」
「えっあぁ」
アリスの言われるがまま後ろに下がると、木の矢が先ほどまで自分が立っていた場所へ降り注いだ。
「あっぶな……」
「主も気を付けてください。攻撃は、どこから飛んでくるかわかりませんので……」
目の前の現象にばかり目が言っていたが、最初に彼女が使った森と同化する魔法もいまだに解けていない。
規模に限らず魔法を二つ以上同時に使うというのは、相当な技術を要するし、それぞれ単体で使うよりも魔力を消費することがあるのだという。
だから、いま起きているこの現象そのものが彼女の実力をありありと語っていた。
「よけてばかりじゃ勝てませんよ? そっちから仕掛けてきたらどう?」
「はぁはぁ……まぁ……面倒なことにそれは、難しいだろうな……」
もしもの時のためにとマアサに教えてもらっていた治癒魔法が功を奏し、傷はすべてふさがった。
体力もそこそこ回復してきて、誠哉は二本の脚でしっかりと大地を踏みしめて立ち上がった。




