第六十六話 遺跡の真実
誠哉の言葉に反応するように石碑は、光り輝きやがて目の前だけ結界が解かれたことを感覚的に理解した。
「行くぞ」
「はい」
短い会話だったが、二人の意志を確認するには十分だった。
中に入ると後ろに結界が形成されなおされていくのがわかった。
「これは……面倒なことに相当高度な結界だったんだな」
外から見る限り、そこに広がるのはただの森だったのだが、中に入った瞬間、目の前に大きな遺跡らしきものが現れたのだ。
高さは、誠哉の170センチある身長の3倍ほどで、横幅もかなり広いことがうかがえた。
「良くあの大きさの結界でこれほどのものを隠せましたね」
「そうだな……面倒なことにこれが神様ってやつの実力なのかもな」
目の前にそびえたつ遺跡をついつい見入ってしまったが、それどころではないと気を引き締めて中へと足を踏み入れる。
そして、中に入ったとたんに再び景色は激変した。
「えっこれは……いったい……」
アリスが困惑の表情を浮かべていた。
それはそうであろう。建物の中にあったのは、この世界にありそうな水晶だとかそんなものではなく、黒塗りの巨大なコンピュータだった。
それも、一つではなくいくつも黒い箱が置いてあるように見える。
自分たちが今、立っている廊下とコンピュータが置いてある場所は、ガラスで仕切られていて、壁と床は白塗りとどこかの研究所を思わせるような場所だったのだ。
「これは、かなりめんどくさい予感がしてきた……」
誠哉の予想が正しければ、ここは異世界ではなく電脳世界で、出来損ないの神様というのはおそらくGMを示しているのだろう。
簡単に整理すれば、何かしらの理由でゲームが暴走し、取り込まれたとかそんな具合なのかもしれない。
「とりあえず、あの部屋の入り口を探そうか」
窓をぶち破るということも考えたのだが、それによりコンピュータが置かれている環境が変わり、何かしらの異変が起きてしまってはたまらない。
そもそも、誠哉にはコンピュータの知識などオンラインゲームのやり方ぐらいしかないのだから、部屋まで行っても何かができる可能性は低いように感じた。
しかし、だからと言ってここで踏みとどまっているわけにもいかない。
「主。でも、あの部屋には入り口があるようには見えませんよ?」
「面倒だけど、探すしかないんじゃないかな? まったく、入り口がないわけじゃないだろうし」
そう言って、誠哉が廊下を歩き出すのに従ってアリスも移動し始めた。
*
「主。なんだか不思議な感じがします」
天井の蛍光灯がまぶしいぐらいに照らしている廊下に誠哉のくつが床を叩く音だけが響く中、口を開いたのはアリスだ。
「かもな……ボクがもといた世界では意外とこういう場所があったから、アリスほど驚かなかったけれど……」
正直、驚くことには驚いたが、アリスと驚く方向が違った。
見たことのないような……彼女の基準でいえば非常識がなことだと驚いている横で、誠哉はこの場が電脳世界なのかと驚いていた。
これが、二人の大きな認識の違いだ。
そうなってくると、これまでの現象もいくつか説明できてくる。
そもそも、観測者が言う歴史の修正というのは、何かしらの形でCPUに介入し、メモリを書き換えるということなのだろう。
そうなると、観測者というのは外部の人間……さらに言えば、相当クラッキングに手馴れている人物だとみて間違いない。
そんなことを今、考えても仕方ないのだが、目の前に永遠と続く廊下を見ていると、何か他事を考えていないとおかしくなってしまいそうだからだ。
「主。この廊下、いつまで続くんでしょうか?」
アリスの声は、廊下の奥へと吸い込まれていくように消えて行った。
誠哉は、それにただ首を振ってこたえて、歩き続けた。




