第六十五話 あなたは正義は?
その昔、世界はひたすら平坦で何もありませんでした。
それがつまらないと考えた神様は、山を造り、海を造りました。
それでもつまらなかった神様は、世界を階層状に変えました。
それでも、つまらなかった神様は、生物を造りました。
生物は、神様の意志とは関係なく勝手に進化していきました。
進化を続けた生物は、神様の意に反して魔物となり、世界中で暴れまわりました。
困った神様は、魔物が倒せるような高い知能を持った生物を造りました。
最初は、協力していたものたちは、魔物がいなくなると対立し、分立していきました。
片方は、人間と呼ばれ、もう片方は魔族と呼ばれました。
二つの種族はとても仲が悪く、常に戦っていました。
そして、いつの間にか神よりも強い力を持った人間と魔族が現れて、それぞれの神様となりました。
仲の良かった二人の神様は、これ以上大きな戦いが起きないようにするためにはどうしたらいいか考えました。
そして、ある日考え付いたのです。
それぞれの代表が戦うことによって世界を安定に導こうと、そうすれば代表以外が戦うことはないのだからと考えたのです。
こうして、人間の神様は勇者を造りました。
対して、魔族の神様は魔王を造りました。
それからというもの、それぞれの称号を受け継ぐ者たちが代々争うようになり、二人の神様の目的は達成されたのでした。
でも、それが面白くない人たちもいました。
その人たちは、神様になるために天に昇りました。
その人たちは、観測者となりました。
この世界は、出来損ないの神様が造りだした出来損ないの世界なのです。
でも、出来損ないの神様はそれでいいと考えていました。
なぜなら、世界が変化するのは自然だと考えていたからです。
しかし、観測者はそれを良しとはしませんでした。
観測者たちは世界を思い通りに動かそうと考えたのです。
観測者たちは、神様を捕まえて世界の造り方を聞こうと考えました。
出来損ないの神様は、観測者の罠にかかって捕まってしまいました。
神様は、本当の正義の心を持つものを待っていることでしょう……
この話を呼んで、あなたは何を思っただろうか? これは、古の物語……遥か昔より紡がれてきた物語だ。
世界を造った神様は、何を願ってこの世界を造ったのだろうか?
所詮、出来損ないと呼ばれているのだから、この世界が造られたという結果は、結果は出来損ないなりのものであろう。
それ故に痛いところをつつかれ、改変され、封印されていく。
はたして、これまでの行いは正しかったのだろうか? はたして、これからする行いは正しいのだろうか?
私は、これまでの行いが間違っているとは思わない。しかし、これまでの行いが必ずしも正しいとは限らないだろう。
そう、これは誰にも決められないことなのだ。
だからこそ、後世にこれを託そうと思う。
勇気ある、希望に満ちたものよ。
そなたの心にあるのは、真の正義であると信じ、それを強く念じよ。
その願いにこめられた力をもってして、勇気と希望を持ち、未来への扉を開け放たんと願う。
まず、ここから左へ一歩、後ろへ一歩、右に一歩、前へ一歩。
そこで自らの正義を願え。
さすれば、扉が開かれるであろう。
*
「どういう意味でしょうか?」
最初にたどり着いた場所から小一時間ほど歩いた場所にある石碑の前でアリスは首をかしげていた。
「何かの暗号っぽく見えなくもないけど……とりあえず、ここに書いてある通りに動いてみるか」
「はい。そうですね……」
そんな会話をして、石碑に書いてある通りに足を動かす。右に一歩、後ろに一歩、左に一歩、前に一歩……そして、再び石碑の前へ戻ってきた。
「ところで、これに何の意味が?」
「えっと、とりあえずその続き行きませんか?」
「まぁそうだな……」
とりあえず、正義について考えてみる。
そもそも、これを造った人物は、何を持って正義を判断しているのだろうか?
そうだ。正義だ。正義……
大きく脱線しかけた思考を強引に戻す。
正義、正義か……
「そうだ。ボクは、ボクの正義は……」
誠哉は、まっすぐと石碑を見据えながら自らの正義を小さく……しかし、はっきりと告げた。




