幕間 とある神様の独り言
陽の光も届かない真っ暗らな牢屋にひとりの少女がつながれていた。
目が覚めるような金髪にブロンズの目を持ち、肖像画の女神が来ているような真っ白な服に身を包んだ少女は、うつろな瞳で真っ暗な天井を見上げていた。
神は信仰こそが命。
しかし、人々は私をできそこないの神様だと呼ぶ。
おろかな人間たちは、真実に気づかないで表面だけを見ながら私のことをそう呼ぶのだ。
どんなけ鋭い天才だといわれている人でも、このことに気づくことはない。むしろ、もっとおとしめようとする。
なぜ、私が人類の都合がいいように世界を造らなければならないのだろうか?
別段、魔物が発生したのも人間が生まれたのも自然な進化だ。いや、魔物についてはドラゴンが見たかったので少しばかり手を加えたのだから、全くの不介入ということはないか……
ともかく、私は勝手に発生して勝手に増えて行った人間たちのせいで非常に狭苦しい思いをしている。
妖精たちなんかは、神のことを厚く信仰してくれているため、実態を保っていられるが、“一部勢力”が妖精たちを攻撃している今現在、それをいつまで保てるかすら怪しい状態だ。人間たちときたら自分たちが勝手に想像し造りだした神を信仰しているのだからたまらない。
「さっきから何をぶつぶつといってるの? やめて頂戴」
「わるかったわね。というか口に出ていたかしら?」
「あら、珍しく素直ね。それはそれでつまらないわ」
いつの間にか部屋にいた観測者と呼ばれていて、『闇夜の人形遣い』なる二つ名を持つ少女アルドンサ・マリ・モンテマジョルは、醜悪そうな笑みを浮かべながら私を見下ろしていた。
そもそも、自分を拘束するこの足枷さえなければこのような半端者に負けるわけがないという確信がある。
彼女を筆頭として、『白老の騎士』タルクウィニオ・ランフランコ・プッチャレッリ、『聖なる双子』姉のアマーリア・ドミティッラ・セルヴァと妹のフィアンマ・ジョイア・セルヴァ、『楽園の断罪者』マリーズ・アドリーヌ・エルプなどが私が直接会ったことのある面々だ。
それ以外にも3人ほどいるらしく、全部で8人いるらしい。
「まぁそんなことはどうでもいいか」
「どうしたのかしら? “出来損ないの神様”?」
見た目だけでは年端のいかない少女は、その顔には似合わない悪意に満ちた顔で私の顔を覗き込んでいた。
「ふん、出来損ない? 最高の褒め言葉ね。だって、世界はそうなるように仕組まれているのだもの」
「あっはっはっはっ! 見苦しいわ! 見苦しすぎて殺しちゃいたいぐらい笑えちゃう! どうせ、計算はずれの連続だったんでしょ? だったら、それをただし方向へ治してあげている私たち人類にちゃんと敬意を払いなさいよ!」
ひとしきり笑い終わったアルドンサは、あごをぐっと持ち上げて一気に顔を近づけて小さいながらも十分に恐怖を与えられるような口調でゆっくりと語りかけた。
「わかってるんでしょう? 神様……この世界の支配権は我々観測者にある……間違いないわよね」
「そんな質問にイエスと答えるとでも?」
「思わないわ。だって、思ったよりも強情なんだもの。私が気になっているのは、そこら辺のニンゲンと大して変わらないあなたがなぜ、世界の創生できるのかという点なの。それさえあなたが吐いてくれればあとは、自由の身何だから楽になりなさいよ。私を支配者と認めてさっさとその方法を教えなさい」
その問いに対して、私はどんな表情を浮かべているのだろうか?
もしかしたら笑っているのかもしれない。
アルドンサの機嫌が悪くなっているのを肌で感じながら私はあえて強気で答えた。
「教えてあげてもいいかもしれないけれど、あなたは私じゃないんだから、私と同じ方法で自分の都合いいように世界を造ろうなんて考えない方がいいわよ。どうやら、介入はかなりできるようになっているみたいだけど、登場人物が偶然、手に入れた力に頼っているようじゃまだまだといったところかしら」
「にしても、あの子たちが違うとなると主人公は誰なのかしらね?」
「さぁ? それは、私にもわからないわ。どうせ、私が放置したせいでとんでもないことになっている世界なんですもの」
「そうね。あなたには頼らないことにするわ」
それだけ言うと、アルドンサは光の粒子となってその場から消え去った。
そして、この牢には再び私だけが残され、永遠に続くかと思わせるような孤独の時間が再び訪れた。
読んでいただきありがとうございます。
次の章から森の迷宮の魔物発生の原因究明および解決編となる予定です。
これからもよろしくお願いします。




