第五十九話 森の人形遣いの実力(前編)
一気に視界いっぱいになるほどまで増えた人形たちは、各々が何かしらの武器を持っていた。
「確かに面倒なことにただの人形遣いってわけでもなさそうだ」
「えぇ。私のことを侮ってると痛い目を見るわ。さっきは、長々と話しちゃって気分が悪いしさくっと終わらせちゃいましょう」
「あぁそうだな……にしても、面倒なことにこれもまたただの時間稼ぎか?」
「さぁどうでしょうか? 汚れ役なんて常に買っているようなものだから、私自身ももうわからないわ。あえて言うなら興味本位ってやつかしら」
「興味本位ね……めんどくさくてたまらないな」
槍や剣、盾を構えている姿は、さながら小さな部隊のようだ。
人形たちが出現した途端に押しつぶされそうなほど重い、プレッシャーにも近い魔力を体で受けていることで彼女の実力が相当なものだと思い至るのは容易だった。
お互いが動かずににらみあいが続いている間にも刻一刻と事態は進行しているのだろう。
「それにしても、あなたたちってそこはかとなく課題が山積みよね。魔物の発生の原因すら突き止められていないのにさ……そうだ。私自身に一撃でもあなたの攻撃があたったら、迷宮の秘密教えてあげましょうか? そこはかとなく魔物の発生原因を突き止めるヒントになるわ」
「それは、どうも……まぁそっちまで攻撃を届かせるなんて相当面倒な気がするけどね」
鈴菜は、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに元の無表情に戻った。
「あら、よく気がついたわね。大抵は、こんな人形くらい、蹴散らしてやるってぐらいのこというのに……そこはかとなく振り返ってみると初めての反応かもね」
「そうか……それはまた、そこはかとなくめんどくさいな」
「あら、私のまね? 意外と余裕ね」
彼女が言い終わるか、どうかというたいみんぐで誠也は大きく踏み込んで一番前にいる槍をもった人形にナイフで攻撃した。
「勝てないとわかっての不意打ちかしら。そこはかとなく面白いわね」
この攻撃の意図が違うところにあるなどとは知らずに彼女は、余裕の笑みを浮かべていた。
ともかく、この攻撃が人形に当たったということは、今現在彼女は、誠也の心を読んでいるわけではないということだ。
それを確認できた誠哉は、彼女の方を見ながら作戦を練り始めた。
自分が負けることはないと考えているのか、鈴菜は、動く気配を見せなかった。
「余裕だな」
「あら、私から見ればあなたにも少し余裕があるように思えるわ。攻撃しないならら今度はこっちから行かせてもらおうかしら」
たくさんの人形たちが部屋中に散らばり、光の線でつながれていった。
「ってまさか!」
「気づいたところで遅いわよ。巨大な魔方陣をいちいち書くのは骨が折れるのよ。だから、こうやって人形を使って描いてみれば楽っていうこと。どう? 降参する?」
「いや、面倒だけどボクはしぶといんでね」
「そう。なら仕方ないわ」
そんな会話をしている間に人形たちは体制を整えて、誠哉は最大出力で防御結界を張った。
ちょうど、それらがほぼ同じタイミングで発動し、部屋中に紫電が走り、誠哉は分厚い結界でその攻撃から身を守る体制をとる。
しかし、思ったよりも相手の魔法が強く、ピシリという嫌な音を立てて結界にヒビが入っていくのが確認できた。
「あら、あなたのちんけな結界じゃ私の攻撃を防げないみたいね」
「これでも最大出力なんだけどね。面倒なことに魔王ですら突破できないこの結界にひびを入れれるなんて、どんな量の魔力何だか……魔女って恐ろしいな」
「残念ながら、私が特別性なのよ。魔女の中では最強だと自負してるわ。さすがに神様には勝てないともうけど……」
これほどの攻撃だ。
相当な量の魔力を消費しているはずなのに鈴菜は、涼しい顔で紅茶を飲んでいた。というか、彼女は何杯紅茶を飲む気なのだろうか?
「そんなこと気にしてる場合?」
「結局、心を読んでいるってことか」
「えぇ。さっきからね。暇だったから」
これほどの攻撃を片手に暇だとよく言ったものだ。
そろそろ結界が限界だと判断した誠哉は、紫電のわずかな隙間を縫って移動しようと試みるが、行動がすべて読まれているがために非常に難易度の高いものとなっていた。
しかし、もう一度あの結界を張ることができない以上、彼女の攻撃がやむまでよけ続けるしかないのだろう。
誠哉は、紫電を見極めよけ続けながら、攻撃の糸口を探って行った。




