第五十話 森の中の家
人形遣いに案内され、一行は森の中を進んでいた。
何でも、森の中に彼女の別荘のようなものがあるらしく、そこに連れて行ってもらえるということだ。
「それにしても、あなたたちは迷宮に魔物があふれている原因の調査に来たのね」
「まぁそうですね」
冬川鈴菜と名乗った少女の周りには、何体かの小さな人形がふよふよと浮いている。
歩いているうちに徐々に森の風景が変化していき、やがて木が少なくなって周りがこれまでよりも明るくなってきた。
「どういうことだ?」
「広場でもないのにこんなに明るいなんて……ということかしら。本来、迷宮っていうのは正規のルートを外れないように通るから迷うのよ。別にゲームじゃないし、道を大きく外れたら二度と帰れないなんて迷信を信じきるのはどうかしてるわ。簡単に言うと、迷宮で森が深いところの真ん中を貫いているのは正規の道でそれ以外の道が抜け道ないし枝道ってところかしら。まぁ正しい道を知っていないと正規の道以上に迷うことがあるのは否定しないわ」
「だったら、面倒だけど迷うっていうのは本当じゃないのか?」
「でも、二度と帰れないなんてことはないわよ。そうね、しいて言うなら上級者コースってところかしら」
彼女が道を覚えているというのは本当のようで時々ある分かれ道をすいすいと進んでいく。
先ほどの泉を出発してから30分ほど経っただろうか? 森が少し開けた場所に小さな家が建っているのが見えた。
「あそこが私の別荘」
「いつの間にか迷宮の中にまで造っていたとは……相変わらず物好きのようですわね」
「確かに、私たちの村以外で迷宮にある家というのは初めて見た気がします」
「そりゃそうだろうね。私しては、家自体よりもどんな暮らしをしたるかのほうが気になるかな」
「わかるわ。迷宮では食料はおろか、水の確保も難しいから」
誠哉たちのように一時的に迷宮に入り探索するならともかく、家を構えて生活するとなるとまったく次元が変わってくる。
実際、どれくらいの期間この別荘にいるか知らないが、保存食だけでは厳しいものがある。
「でも、木の実と保存食だけでも私は十分生きれるわ。だって、とっくの昔にニンゲンを捨てたの。本来なら食事なんて必要ないのよ。でも、正真正銘のニンゲンだったころの習慣ってなかなか抜けなくてね」
「人間捨てたってどういうことですか?」
「まんまの意味よ」
どこか抽象的な答えしか得られないアンナの横でマアサは、小さなため息をついていた。
「そのお方は、確かにニンゲンではありませんわ。種族でいえば魔女ですわね。弱点を突かれない限り、絶対に死なないという厄介者ですわ」
「魔女か。面倒そうだから、あまり敵対したくない連中だよな」
「あら、そう来るのね。まぁ間違ってはいないけど……」
魔女というのは、ある一定どの魔法を使えるようになった魔法使いが昇華することができ、ニンゲンには高度の魔法が使えないということの大きな理由はある程度の魔法を習得すれば魔女になるからだ。だが、魔女になるというのはいいことばかりではない。
実際、彼女と接していて感じたことでもあるのだが、魔女になると人間としての欲求の多くを失う。食事をとらない、睡眠もとらない、水分も摂取しない。それでも、死ぬことはなく、魔法を行使し続けることができるそうだ。
内面的なことを言ってしまえば、感情に乏しくなり人間らしい考え方をするのが難しくなるのだという。
噂程度ではあるが、魔法を使って昇華できるのは魔女だけではなくもっと別のものになることもできるという話も聞いたことがあるのだが、それに関してはあまりにも信ぴょう性が薄いので眉唾かもしれない。
そんなことを考えている間に一行は鈴菜の別荘にたどり着いた。
読んでいただきありがとうございます。
なんと、この話で50話目となりました。
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