第四十四話 種さがし(後編)
フーリが木の上の方に向けて飛んで行ったのを見届けると、再びアリスと視界をつないだ。
ものの数分でフーリがくぼみの中に入ってきたことを確認すると、アリスにいったん外へ出るよう促した。
『主。大丈夫でしょうか?』
「問題ないよ。相手が闇に弱いのは事実だ。装置自体はどうか知らないけれど、少なくとも壁ぐらいは突破できると思うってオリーブが言ってる」
『なるほど……わかりました。私もしばらく状況を見守ってみます』
「そうしてくれると助かる」
やがて、ただでさえ薄暗いくぼみの中がより深い闇に包まれた。
おそらく、フーリが中で闇魔法を使っているのだろう。
十分ほどすると、徐々に落ち着いてきて元の状態へ戻って行った。
『アリス、入ってきな』
『はい。わかりました』
フーリが何か見つけたのかもしれない。
穴の中に入ると、先ほど見つけた不自然な壁のところにその形通りに穴が開いていて、奥まで続く通路が薄暗い光で照らされていた。
『これまた、すごいな』
『えぇ。なんといいますか……少し薄気味悪いですね。奥に入ってみますか?』
おそらく、最後はフーリに対してではなく誠哉に対してであろう。
「どうしたの?」
「んーどうやら、面倒なことに隠し通路みたいなのが出てきたらしいよ。それで、どうするって」
「なるほどね。つまり、入り口に魔法をかけて簡単に開かないようにしてそこに何かを隠してるってところかな。そう考えてると結構面白いね」
「まぁ面倒なことに何かとそれどころじゃないけどな……」
どちらにしても、通路の奥を調べないことには始まらない。
アリスに置くまで見てもらうように頼んで、状況を静観することにした。
『結構、深くもぐりますね』
「そうだな。面倒なことに根元付近まで来ているみたいだ。木の中から、アリスの魔力を感じるよ」
『っていつから感知やってたんですか!』
「さっき木の中に入ったときぐらいからかな? 面倒だけど、現在地はちゃんと確認したかったし」
そう言いつつ、誠哉は再び目をつぶった。
そろそろ見つけてもらわないと目が限界かもしれない。そう思っていた時であった。
『主! 何かありますよ! 見てますか?』
「おう。ごめんごめん」
アリスの呼びかけで目を開けると、目の前に小さな装置が見えた。
装置は、顕微鏡のような形をしていて、台座の上には光を帯びた小さな種が置いてあった。
『へーこりゃこの種が力の発生源かもね』
ヒョイッと何の疑問も持たずにフーリが種を持ち上げる。
興味深そうに彼女がのぞいていると、横でアンナが大声を上げた。
「空! 空が元に戻ってきてる!」
「あぁ本当だね、どうやらうまくいったみたいだね」
「ありがとう。アリス、フーリ。とりあえず、その種を持ってこっちに戻ってこれそうか?」
『はい。すぐに戻ります』
彼女の答えを聞き届けた誠哉は、魔法を解除した。
そうした途端にどっと疲れが押し寄せてその場にへなへなと座り込んでしまう。
「おやおや。セイヤ君でも魔法の使い過ぎで疲れるなんてことがありえるんだね」
「そりゃ面倒なことにボクだって人間だからさ、疲れるときは疲れるよ」
それにしても、世界を破滅に追い込もうとしたものがあんな小さな装置とそれよりも小さな種だったなど信じられなかった。
そもそも、なぜあんなところにあんなものが仕掛けられたのかというところに大きな疑問符が付く。
「いったい、彼女はどうしたかったんだろうな」
あとで動機を聞こうと思って縛っておいた少女は、いつの間にか姿を消していた。
村人数人が絶えず監視していたはずなのだが、彼らは“忽然と消えてしまった”というだけで、彼ら自身何が起きたのかよくわかっていないようだ。
「なんだか、とんでもなく面倒な気がするな」
「そうね。こればかりはあなたに賛同するわ」
アンナがそういったとき、ちょうど空から種を持ってアリスが下りてきたのが見えた。
「主! ただ今戻りました!」
思い切り飛び込んできた小さな体を優しく抱き込んだ。
「お帰り。アリス」
「はい!」
その時、誠哉に見せたアリスの笑顔は今までにないほどかわいらしいものだった。
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この話で第三章は終了です。
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