第四十三話 種さがし(中編)
くぼみの中へ向けて身を乗り出しているのか、視界が穴の中をぐるりと回ったり、上下したりと少々動きが激しかった。
「アリス。くぼみの中、入れそうか?」
『はい。特に問題はなさそうです』
視界が真っ暗になった直後に、小さな光が順々とあたりを照らす。
光が当てられた場所がもうすぐ一周しようかというその時、アリスは壁の違和感に気づいたようで、一部の壁に接近していった。
『主。この壁、何かおかしくありません?』
そう言いながら、アリスはコンコンと周りの壁とそこの壁を交互にたたき始めた。
確かに、その場所と周りでは、壁の色が少し違うし音も若干違うように聞こえてきた。
「面倒だけど、もう少しその壁調べてくれる?」
『わかりました……と言いましても、周りの壁にぴっちりとはまっているみたいですし、どこかから開けられるというわけではなさそうですね……』
アリスの言う通り、見る限りではどこかに穴が開いているだとか、隙間があるだとかいうことがなかった。
誠哉は、いったん両目を閉じてこれまでの経緯を振り返り始めた。
「セイヤ君。状況はどう?」
「……アリスが怪しいくぼみを発見して調べている。一か所だけ壁の様子が違ってるんだけど、面倒なことに隙間がなくきっちりとはまってて取れそうにないらしい」
「なるほど……」
オリーブは、しるしの方を見てため息をついた。
「相手は一度締めたら開ける気はないのかもね……それも“楽園の断罪者”ともなると、相当厳重に魔法をかけているだろうしね」
楽園の断罪者を名乗った彼女の実力は確かに凄まじかった。
自分だけの世界を持っていたり、一撃で周りを壊滅に追い込める威力の攻撃など、並大抵の魔力でないはずだ。
「ねぇその相手の人って弱点とかなかったの? 一応、倒せたんでしょ?」
「んーそうだな。面倒だけど、暗闇が弱点みたいだ。攻撃全般が光を使うもの何だけど、光が存在することを許さない闇の中なら、彼女の攻撃は意味をなさないみたいだ」
「なるほど……じゃあ、あの空を造った原因の装置も闇に弱かったりするんじゃないの? たとえば、アリスに闇の魔法を使ってもらってくぼみの中全体を今までよりも真っ暗にしてもらうとか」
「なるほど……それも一理あるな」
彼女自身、自身の能力に絶対の自信があるように感じた。
つまり、こういったことにもそういったたぐいの魔法を使っている可能性が高いのかもしれない。
「アリス」
『ご心配なく。すべて聞こえていました』
どうやら、ここでの会話は彼女に筒抜けだったようだ。
誠哉は、木の上の方……彼女がいるあたりを見ながら話しかけた。
「そうか。できそうか?」
『いえ、私はちょっと……ただ、フーリならできるかもしれません」
「フーリが?」
『はい。彼女は、外の世界によく出ていまして、魔法使いの人とよくあっているらしいです。なので、彼女なら外の魔法を知っているので……』
「ありがとう。いったん、切るから少し待っていてくれ」
『はい』
彼女の答えを聞き届けると、いったん魔法を解除してフーリの方を向いた。
別に彼女との受け答えが聞こえててまずいということはないのだが、はっきり言ってあの状態を維持するのが限界に近づいていたのだ。
魔力といったものの消費は少ないため、そういった意味では問題ないのだが、自分が本来見えているのとは別のものをずっと見続けているからか、テレビやパソコンを使っているよりも目の疲労が激しかったのだ。
「フーリ。闇の魔法って使えるか?」
「えっ? まぁ使えないことはないかな? どうして、そんなことを……」
フーリはいったん言葉をきり、少し間をおいてから納得した様子でうなづいた。
「そういうことか……要するに、敵さんの弱点が闇魔法だから、アリスのところまで行って使ってきてくれってことでしょ?」
「そうだよ。面倒だけど、頼んでもいいかな?」
「別に私は問題ないよ。それじゃ、行ってくるから」
そういうなり、彼女は勢いよく飛び立って木の上の方へと消えて行った。




