第四十一話 村の大木
妖精の村の中心まで戻ってきたアンナたちは、皆一応に白い紐を持っていて、村の大木の幹の周りにそうように立っていた。
大木を少し上がった場所には、誠哉がいて、そのわきにはアリスとフーリの姿があった。
「にしても、本当にうまくいくものかねぇ」
「主のことを疑うんですか!」
「そういわれても……」
「面倒なことにボク自身も半信半疑だから、仕方ないよ。でも、迷うぐらいならやってみないと結果なんてわからないじゃないか」
誠哉が目を付けたのは、空が虹色になっている場所の中心に村の大木があるということであった。
そのため、この場所に断罪者を名乗る少女が何かを仕掛けた可能性が高いというものであった。もう一つ付け加えるならば、村の長老曰くそこまで厳重に結界を張った記憶はないのだという。つまり、村が自衛のために張った結界以外にも結界が張られていたということなのだ。
このことも加味すれば、村の大木に何かあるという可能性は非常に濃くなる。
「さてと……始めますか」
「えぇ」
「そうね……ぐだぐだいっていてもしかたないし……」
誠哉が木の幹に手を触れるのと同時にアリスとフーリが大きく手を振って合図を出す。
「主。行きますよ」
「まったく、なんでこの役が私たちなんだろうね。いやじゃないけどさ」
フーリが白い紐の端をアリスの体に括り付け、アリスが誠哉の正面に回ってその小さな唇を誠哉の唇と合わせた。
木の幹を囲んでいる人たちが持つ魔力がアリスを通じて流れてくるのを感じながら、誠哉は大木全体の探索を始めていた。
白い紐には、持った人の魔力をある一定量まで吸い取る効果があり、それをどこかにためるて必要に応じて出すことができるという代物だ。
今回の場合は、アリスの体を魔力タンクとして魔力を貯蓄し、もっとも魔力を流しやすい口移しで誠哉へ魔力を供給しているといった状態だ。
また、妖精の村にあるものだからか、魔力タンクにできるのは妖精のみという制約までついているため、アリスを介する必要が出てきているのだ。
普段ならば、このような回りくどい方法をとる必要はないのだが、ただでさえ先ほどの戦闘で魔力をかなり使っているうえにこの巨大な木の隅々まで迅速に調べようとするとこれまた大量の魔力を消費してしまうためにいくら、魔力を豊富に持っている誠哉でも魔力切れを起こす可能性が出てきたのだ。
幸いにも白い紐は、魔力を吸い尽くしてからすようなことはないため、ほとんど形式的とはいえアンナが触れていても全く問題がない。
「どう? 見つかりそう?」
「もう少し……なんとなくわかってきた気がする」
自分の立っている位置から始まり、下の根っこまで調べ終えて上方向を調べ始めた時である。
一瞬、上の方から強い力を感じたのだ。
徐々に徐々に意識を上へ移しながら慎重に調べていく。
「これだ!」
「見つけたんですか!」
アリスが口を話したことにより、魔力の供給が途絶えるが、すでに場所を特定していたため、そこにマーキングすることができた。
疲れ切ってへなへなと座り込んでしまった誠哉の下にアリスとフーリ、少し遅れてアンナとオリーブがやってきた。
「こんな状況ということは……見つかったということですかね?」
「に決まってるじゃない。彼はこんなことでへこたれたりしないもの」
オリーブとアンナの会話を聞きながら、誠哉は自分たちが立っている場所よりもはるか上にあるしるしを見つめていた。
「それともかく、面倒な場所に仕掛けてくれたな」
「面倒なって……あぁあんな高いところだったんだ」
誠哉の視線をたどってマーキングされた場所を見つけたらしいアンナは、感心するような口調だった。 オリーブがうなづいているところを見ると、彼女もしるしを見つけたらしい。
「それで? どうやってあそこまで行く気?」
「そうだな……」
誠哉は、少し間をおいてアリスの方を向いた。
「アリス。お前に頼みたいことがある」
「えっ? 私?」
突然の指名にアリスは、驚いている様子だったが、小さくうなづくと誠哉の方へと近づいて行った。
「それで、私は何をすればいいのですか?」
アリスは、まっすぐと誠哉を見つめていた。




