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魔王の兄は旅をする  作者: 白波
第十七章 王宮と魔王城と
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第二百三話 反乱軍と観測者と

 コリーヌの一角にある小さな店。

 表向きの店がどういったところかはともかく、ここは反乱軍の拠点の一つである。


 誠哉は、そこの入り口に入ってからすぐにある椅子に座っていた。


「それで? 話っていうのは?」


 誠哉のちょうど向かいに座っているのは反乱軍幹部のバリシオだ。

 彼は、小さくため息をついた。


「そう焦るな。時間はたっぷりとある。それにスパイと分かったうえで情報をくれてやると言っているんだ。今すぐにというわけにはいかないが、まずは交換条件の提示をしに来た」

「交換条件ね……それを同行したところで残念ながら、君たちからもたらされる情報をどこまで信頼していいかわからないけれどね……」

「だろうな。それにこちらとしてもただで情報をくれてやるなんて言わない。コリーヌ城(そちら側)の動きを逐一教えてくれればいい。まぁそちら同様もたらされた情報を丸呑みするわけじゃないがな」

「なるほど……つまり、面倒なことにダブルスパイでもやれと?」


 思っていたよりも面倒な事態に陥ってしまった。

 コリーヌ城などにいるときは反乱軍側、反乱軍側にいるときはコリーヌ城側として動くということになる。

 むろん、このようなこと断っていもいいのだが、その場合どう考えてもコリーヌの反乱軍に関する調査に悪影響が出るだろう。


「わかったよ。ただ、わかっていると思うけれど」

「情報はお互いに信用しきらない。そうだろう?」

「その通りだね。まぁ互いにそんな確信まで触れないだろうし……」


 そう言って、誠哉は立ち上がった。


「それでは、このあと少し人と会う約束をしているので……これで失礼します」

「おや、もう行っちまうのか?」

「まぁちょっと……何せ時間に厳しい人なので……」


 これから誠哉に待っているのはノエルへの定期報告だ。

 基本はコリーヌ城主の方に逐一情報を持っていくのだが、ノエルもこの問題にはかなり関心を持っているようで定期的にコリーヌを訪れるから情報がほしいと言っていたのだ。


「まぁいい。そういうことなら、詳しい話はまた後日ということで」

「はい。それでは……」


 誠哉はバリシオに頭を下げてその場から立ち去って行った。




 *




「……時間に厳しい人ね」

「ノエルかしら……前に時間に遅れた彼にかなり起こっていたから」


 去っていく彼の背中を見ながらバリシオがつぶやくと帰ってくるはずのない返事が返ってきた。


「また、あんたか」

「えぇまたまた来させてもらったわ。何せ、ちょうどよさそうな暇つぶしなんだもの」

「……あなたたちにとって暇つぶしでもこちらは必死なんですけれどもね」


 彼の背後に立っていたのは観測者のアルドンサ・マリ・モンテジョルである。

 彼女はクスクスと笑いながら彼の言葉を聞いていた。


「それがニンゲンと観測者……いえ、永劫の時を生き続けるという拷問を強いられている者たちとの違いよ……あなたも不老不死にでもなってみればわかるわ」

「ぜひともわかりたくない感覚だな。それはともかく、何の用だ?」

「別に……ただ、彼の扱いは少々気を付けた方がいいわよ」

「警告か?」

「えぇ警告よ……あなたたちの目的がどれだけ高尚でもやり方が間違っているだとか、正しく思いが伝わらなくて、妙な誤解の末にマアサ(この)国に大きく仇名すと判断されたら問答無用でつぶしに来るわよ。まぁそうなったら、どうなるかしら?」


 バリシオの肩に手を置きそう語っている彼女はまるで愉快な演劇でも見ているかのようにとても楽しそうだった。


「言いたいことはそれだけか?」

「……こんなこと言うためにわざわざ来るとでも思うの? ちょっとした取引よ……幹部を名乗りながら実際はボスであるあなたにね」

「ったく、結局お前らは何がしたい?」

「それはあなたが知るべきことではないわ。ちょっと事情が変わったのよ……だから、あなたはこれから私の言う通りに動きなさい。そうすれば、あなたの目的も私たちの目的も達することができる。悪い話ではないと思うけれど?」


 そういう彼女はゆがんだ笑みを浮かべていた。


 それを見て、バリシオはなぜか心の底から恐ろしいという感情がとめどなく湧き上がってくる。

 この人に逆らってはいけない。彼の本能がそう告げていた。


「……そんなことはさておき、取引というのは……」

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