第二百四話 コリーヌに来たノエル
今回は少し短めです。
「遅い」
開口一番それであった。
場所は、コリーヌの一角にある小さな小料理屋。
椅子に座り縮こまる誠哉の前には鬼のような形相をしたノエルである。
「どうして遅刻したんですか?」
「あの……うまく抜け出せなくてですね……」
「それと小耳にはさみましたが、相手方にスパイだとばれたのだとか?」
「はい」
ノエルは完全に機嫌が悪いようだ。
誠哉は、これ以上彼女の怒りを買わないようにただただ頭を下げる。
ノエルは、その姿を見て小さくため気をつくといつも通りの表情を浮かべて誠哉に顔を上げるように言った。
「まぁいいでしょう。相手も情報を暮れるといいますし、何よりも魔王城に反乱の気がないのなら、それがわかっただけでもよいでしょう」
そういうと、彼女は伝表を持って立ち上がる。
「まぁ好きなように動いてください。ただし、国に不利益になるような行動は慎むように……ただ、仮にコリーヌ城主の悪政がこれを招いていて、反乱軍の方が正しいと思うのなら……それもまた、あなたの自由にどうぞ」
ノエルは伝表をひらひらと泳がせながら立ち去っていった。
*
料理屋を出た誠哉は、大通りにいた。
アジトに戻る前に少し買いたいものがあるのだ。
周りを見ると、相変わらず人はまばらでしまっている店も多い。
そんな中でやっとのことで菓子屋を見つめて、立ち寄った。
「いらっしゃい」
誠哉が店に入ると、おばあさんが出迎えてくれた。
店の中には、少量で袋分けされたお菓子が置いてあり、安い値段で売られていた。
その光景を見ていると、子供のときに立ち寄った駄菓子屋を思い出した。
「あまり見ない顔じゃのう」
「まぁちょっとね、面倒なことにしばらくここにいる予定だよ……それよりも、おすすめとかはある?」
「おすすめかい? そうだねぇ……これなんかはどうかの? 昔、異世界から来た人が作り方を教えてくれたお菓子でのう……マヒンとか言ったか?」
そう言って、おばあさんはマフィンを指した。
「あぁマフィンか……」
マフィンは緑や赤など色鮮やかで三つで一つの袋に入っていた。
「おぉマヒンを知っておるのか?」
「まぁね。うん。じゃあこれをもらおうかな」
誠哉は、おばあさんに代金を渡してマフィンを一つ手に取った。
「ありがとうね」
「また来るよ」
おばあさんに見送られ誠哉は店を後にした。
*
コリーヌのはずれ。
ノエルは、従者もつけずに一人で歩いていた。
「物騒ねぇ……国王様がそんなのでいいの?」
そんな彼女の背後に現れたのは預言者のフローラである。
彼女はいかにも胡散臭そうな笑みを浮かべて、ノエルに話しかける。
「無視かしらぁ?」
「……別に気にしなくてもいいですよ。とりあえず、あなたは誰でしょうか?」
「またまたぁ……預言者のフローラよ。フルネームでいえば長ったらしい名前があるけれど、そんなものは知りたくないでしょう?」
「そうですね、興味はありません。ご用件は?」
そこで初めてノエルは立ち止まって振り返る。
「用件ねぇ。簡単に言えば面白い未来が観測できたから話をしに来たのよーどうかしら? 聞きたいかしら?」
フローラは不敵な笑みを浮かべてノエルを見据えていた。




