第二百話 反乱軍の幹部
コリーヌの一角にある酒場。
そこの扉をくぐると大柄の男たちが酒をあおっているのが見えた。
誠哉は迷うことなくその男たちの間をすり抜けて店の奥にある扉を開けた。
中に入ると、店の大きさに反してかなり広い空間があり、そこに男女合わせて数十人もの人が集まっていた。
誠哉がそこへ足を踏み入れると、一番入口にいた少年が誠哉に声をかけた。
「セイヤか。遅かったな」
「まぁちょっと、面倒なことになってね……まぁ問題ないレベルだからいいよ」
そう言って誠哉は“手土産”を少年に渡す。
その中身は、近くの武器やで調達してきた武器類だ。
やろうと思えばかなりの量を購入できたのだが、あまりやりすぎるのは不自然なため、自分が使う分と少しといった具合の量に抑えてある。
「悪いな」
「いや、いいよ。それよりも、色々と話を聞かせてもらってもいい?」
「もちろんさ、約束だからな」
手土産を持った少年は意気揚々とさらに奥に作られた部屋へと走っていく。
「セイヤ。大丈夫だってさ」
「そうか。だったらさっそく行こうか」
誠哉がこれから会うのは、この反乱軍の中心的メンバーの一人だ。
一応、手土産を用意で来たら市民が立ち上がった理由等々を聞かせてもらえるのだという。
これがまったくわからないというところがあったのでまず第一の目標だ。
なお、スパイとして潜入する際は表向きの理由として魔王城側の新政策への反対ということを上げておいた。
多少、難色は示されたが入れたところを見るとあながち間違ってはいないはずだ。
「こっちきて」
誠哉は、少年に導かれ奥の部屋へと入って行った。
*
案内された部屋ではこれまた大柄の男が腕を組んで椅子に座っていた。
「お前がオキムラセイヤか。そこにかけてくれ」
男は誠哉の姿を認めるなりそういった。
誠哉が椅子に座ると、男は少年に下がるように言った。
「私がこの部隊を任せてもらっているバシリオだ」
「改めて沖村誠也です」
バシリオと名乗った男は、誠哉の顔をじっと見つめた後、小さく息を吐いた。
「……お前。何も知らずにここに来ただろう。そもそも、潜入するぐらいならちゃんと下調べをするべきなのではないか?」
「えっ何を言って!」
変な動きをした覚えはない。
しかし、男は誠哉の素性を見破っていたのだ。
「俺の魔法だ。見ただけで相手がどんな目的で近寄ってきたかわかる。もっと言えば、相手の所属とかもな……まさか、魔王城から直々に来るとは思わなんだ。まぁ早々滅多に使うわけじゃないがな。来る人来る人みんなに使っていたら俺がつかれちまう。だが、お前だけは少々空気が違うように感じたからな。悪いが使わせてもらった」
「あらま。いきなりばれちゃったよ……それで? どうするつもり? 生かしておいても面倒だからってさっさと始末する?」
誠哉のあきらめにも近い言葉に男は笑い声をあげた。
「はっはっはっまさか、そう来るか。いいぞ、面白い……気に入った。ここにいていいぞ。ただし、お前にもたらされる情報が正しいか否かは自分で判断しろ。それにしばらくいれば俺たちが正しいんだと理解できるだろう……一つだけ、お前のために言うなら誰もお前の新政策には反対していない。俺たちはあくまでコリーヌ城主に不満があるだけだ。一応、これだけはコリーヌ城主に報告しておけ」
「わかりましたよ。取り合えずは判断がつくまでおとなしく付き合うよ」
それだけ言うと、誠哉は立ち上がり部屋を後にした。
しばらく満足げな笑みを浮かべていたバシリオはそれをふっとひそめた。
気づけば彼の背後には観測者のアルドンサ・マリ・モンテジョルが佇んでいた。
「それで? これぐらいで十分か? 観測者様よ」
「えぇ十分よ……まぁセイヤはあまり魔法には詳しくないし、それに気づく頃にはあなたのそばにはいないでしょうから……」
「そうかよ。まぁいい。二重スパイとして利用できそうなやつを手に入れさせてくれたことは礼を言う。ただ、力を借りるのは今回までだ」
「えぇこちらもそのつもりですもの……せいぜい、無様な姿だけは見せないでちょうだい」
それだけ言うとアルドンサは光の粒子となって消えてしまった。
その空間には少々つまらなそうな表情を浮かべているバシリオの姿だけが残っていた。




