第百九十九話 コリーヌの城主
コリーヌに到着した誠哉の姿は、街の中心地にある古城にあった。
この城は、もともと首都へ攻め入る敵を防ぐ目的で造られたものだ。
しかし、実際にはそのような事態は起こらずいつの間にかこの町を治める城主の下ということになっていた。
そんな歴史はさておいて、石造りの壁と赤いじゅうたんが続く廊下を歩く誠哉の横にはこの城の城主が歩いていた。
「それで? その反乱の毛がある団体っていうのは?」
「はい。北西部の酒場を拠点としているということ以外は詳しいことは……ただ、これほどのことをしよとするならば、何かしらの後ろ盾はあるものと考えていいと思います」
「なるほどね……結構、面倒なことになりそうだね」
「はい。できれば王宮の方の手は煩わせたくなかったのですが、事が起こってしまってからでは手遅れですので……」
「その判断は正しいと思うよ……一応、ボクはその組織に仲間として潜入すればいいんだよね?」
「はい」
そもそも、謁見室などではなく廊下で歩きながら話すというのはある程度意味があってやっていることだ。
謁見室で話せば目立つし、逆に変に隠れてコソコソしていても相手に気づかれる可能性がある。
誠哉は、彼がいう後ろ盾がこの城内にいるという可能性を捨てていないためだ。
城の内部事情に精通しているものならば、攻め入るのに有利なタイミングを知ることができるし、この城の内部構造を把握できれば弱点をついて攻め落とすということも可能だからだ。
だからこそ、誰が聞いているかわからない城内の中でも普通に考えれば重要な話をしなさそうな場所であるここを選んだのだ。
誠哉は名目上護衛ということになり、城主は護衛を一人つけて場内を移動中、その通路はすべて人払いをしたといった具合である。
彼は、よく移動中に襲われる可能性を考慮して廊下などを歩くときに他人を近寄らせないとかでそこまで不自然にはならないだろうとのことだ。
ただし、盗み聞きをしようとすればいくらでも可能なのであまり重要な話はせず、書状に書いてあったことの軽い確認だけだ。
もしも聞かれたところで誠哉は魔法を使って姿を変えているし、この話をする前日にすでに潜入を始めているため、問題なく潜入を続けられるはずだと考えていた。
普通に考えればそんな考え甘々の甘ちゃんなのだが……
「それでは、セイヤ殿。あとは頼みますぞ」
「まぁやれるだけやりますよ」
城主に返事を返して、誠哉はその場から立ち去っていく。
道をふさいでいた兵士たちは誠哉の姿をみとめると左右に分かれて道を造った。
「それじゃ、行きますか」
誠哉は城を出て昼さがりのコリーヌの町へと消えて行った。
*
天界の一角にある小さな部屋にアルドンサの姿があった。
この場所は、普段下界を見ている部屋とは別にアルドンサ個人に割り当てられている部屋である。
部屋に設置されている棚には大量の人形が置かれ、小さな作業台以外はほとんど人形で埋め尽くされている。
机に向かって針を手に人形作りをしていると誰かが訪ねてきたのか、扉がこんこんとノックされた。
「誰?」
「オリーブです。少し話しませんか?」
向こうから聞こえてきた声に思わずため息をついてしまう。
ついさっきまで一緒にいた彼女が何の話だろうかと……
ただ、それを拒絶したいほど気分が悪いわけではなかったのでどうぞと言って彼女を部屋に通した。
「相変わらずですね。少しはかたずけたらどうなの?」
開口一番それである。
「それだけだったら帰って頂戴」
「まさか、わざわざあなたに片づけを促すためだけに来るわけないでしょ?」
さっさと帰ってほしいアルドンサとしてはそれぐらいの方がちょうどよかったのだが、本当にそれだけだったら彼女を消し炭にするだろう。
「それで? 用事は?」
「勝負のことで……なかなか面白いことになっているので報告を」
「……あらあら、それはぜひとも聞きたいわね」
オリーブの言葉に興味を持ったアルドンサの顔には先ほどとは違う感情が僅かながらに現れていた。




