第百九十七話 山を越える馬車の中で
教会で夕日を見た次の日。
誠哉と鈴菜の姿は、北へ向かう馬車の中にあった。
あの後、ちょうど馬車のところに戻ると出発する寸前だったのだ。
乗客は誠哉と鈴菜それと、旅人と思われる男性の三人である。
「それにしてもだ。コリーヌに着いたらどうするつもりなんだ?」
先に口を開いたのは、誠哉だ。
「私か? そこはかとなく、状況を見て判断するよ。魔女というのは、そういうものだ。逆に言えば、誰かと最初から手を組んでいるようなやつは本当の魔女とは言えない。個人的には、そこはかとなく王宮図書館館長は魔女を語る天界側のニンゲンだと思うんだよな。まぁそこはかとなく本人にあったことはないから何とも言えないがな」
「推測か……面倒なことに確証はないんだろ?」
「まぁな。ちなみにセイヤが図書館館長殿からどんな頼みを受けたか……その内容まで把握しているよ。ちょっと情報筋から仕入れたものだから、正しいはずだ……まぁ本人の前でいうのもなんだが、図書館への入館許可ごときで背景も対して考えずにホイホイと依頼を受けるというのは、そこはかとなくよろしくないかもな。まぁそういったことを生業にするのなら別だが……」
「結局、なにが言いたいのさ」
誠哉が聞けば、彼女はヒョイッ眉を上げた。
「おや。まだそこはかとなく意図を読み取っていなかったのか。まぁ簡単に言わせてもらうと、セイヤはもう少し行動を考えた方がいい。この世界の常識もしっかりと受け入れたうえで動かないと、君は勝手に自滅するだけだ」
「どうも、面倒だけど気を付けるよ」
「面倒か……いろいろと大変なことになってからは、面倒事っていうレベルではないぞ。セイヤはこの世界のことはあまりにも知らなさすぎる……まぁ私も最初のうちはこの物語の主人公にでもなったつもりでいたけれど、所詮は神に代わり稼働している天界の都合ですべてが決定する世界……彼らの権限がどこまで私たちに観賞できるのか詳しくは分からないけれど、下手なことはしないに限ることね……一応、ここまでがそこはかとなくある人に頼まれた言伝だったりするのだが……コリーヌの一件では、もっといろいろと世話になりそうだから、よろしく頼む」
「わかったよ……」
この人の行動に対して深く突っ込んではいけない気がする。
そうしみじみ感じた誠哉であった。
*
気が付けば、馬車は山へと入って行った。
山道を地道に進んでいくが、がけっぷちの不安定な道のため、とても馬車はとてもゆっくりと進んでいた。
「まぁ時間がかかりそうだな」
「そうでしょうね。首都をぐるりと囲む大山脈はかなり厳しいからね。そこはかとなく時間がかかって当然だろう」
「そうか。確かにそうかもしれないね。大山脈っていうぐらいだから、相当なものだろうな」
「あぁそうだ。ここは比較的穏やかで南北をつなぐ通路として使われているんだ」
「なるほどね……穏やかか……」
これのどこが穏やかなのだろうか?
下の川までもはとてつもなく、深いだろうし、馬車がやっと通れるぐらいの幅の道は、時々小石が谷の下へと転がっていく。
「しかし、防衛のためだか何だか知らないけれど、もう少し交通の便がいいところに町を造ってもよかったんじゃないかな?」
「あぁもともとそうだったみたいだけど、いつかの代の魔王が城を引っ越すとき、街ごとあそこへ持って行ったらしいんだけど、そこはかとなくすごい出来事だな。当時の資料はほとんどないから、どこまで本当かはわからないが……」
「へーなるほどね」
誠哉は、ふと窓の外を見てみる。
でも、いくらなんでもこんな場所というのはないだろうに……
そんなふうに思えてならない誠哉であった。




