第百九十五話 道中での再会
秋の訪れを感じさせるように木々が葉の色を変え始めたころ、誠哉の姿は北へと向かう駅馬車の中にあった。
小さな車内には北へと向かう多くの旅人でにぎわっており、誰もかれもが活気づいていた。
今、走っている場所は首都を出てすぐのあたりで後方に巨大な町、右手に迷宮、残りは高くそびえる山脈が見える程度で山脈まで伸びる平原には広大な田畑が広がっていた。
このあたり一帯は、有数の農産地帯という一面も持っており、首都はもちろん周辺都市の食料もここで生産されている。
ノエルの話によると、次の駅ぐらいまでは比較的なだらかな地形が続き、やがて険しい山に差し掛かるのだという。
誠哉が目指しているのは、その山を越えたすぐ先にあるコリーヌだ。
コリーヌは、南側に大きさ山脈が迫っている丘陵地帯に位置しており、首都から北の山脈を越えられる唯一の道に位置しているため、古くから交通の要所として栄えた町だ。
つまり、仮にそこで反乱がおき、反乱軍に制圧されるような事態になれば北部への伝達や物流がままならなくなる可能性があるということだ。
「それにしても、面倒なことになったな……」
首都の防衛という意味でこの場所は最適なのだろう。
四方を迷宮と山脈に囲まれているこの場所は、敵からすれば非常に攻めづらい。ニンゲン側からいえば迷宮さえ攻略すれば攻めやすい場所ではあるが、国内からの反乱は難しいといえるだろう。
ここまではまだいいとして、迷宮がある東を除く北、南、西の山脈を越えるルートがそれぞれ一つずつしかないのがそもそもの問題なのだ。
やはり、これは備えながらも反乱はないという慢心から来たものなのであろうか?
そんなことを考えているうちに駅馬車は減速し、途中駅である小さな町に停車した。
「おやおや、こんなところであるなんてそこはかとなく奇遇だな」
ちょうどその時、聞き覚えのある声を耳にしたのだ。
誠哉が声の方を向いてみれば、迷宮に住む魔女、冬川鈴菜が乗り込んでくるところだった。
彼女は、偶然あいていた誠哉の横に座った。
「どうしてここに?」
「まぁそうだな。そこはかとなく答えさせてもらうと私の住居は迷宮だけじゃないってことだ。もう少しいえば、たまには魔法以外の手段で移動したくなったから、ここにいる」
めんどくさい奴と会ってしまった。
誠哉は、心の中でため息をつく。
迷宮での出来事もあってか、彼女とは少し接しづらいところがある。
「……まぁいいよ。そっちこそなんで駅馬車なんかに? 君だったら、国王さんに頼んで飛ばしてもらうような気すらするけれど」
「まぁ面倒なことにボクにはボクなりの事情があるの」
「そう。まぁそこはかとなく詮索はしないでおくけれど……私への隠し事は無駄よ。きっとね……」
彼女はどこか含みのある笑みを浮かべる。
その姿を見ていると、なんだか裏がありそうで怖くなる。
「まぁそうね。たぶん、目的は似たようなものじゃないかしら? どうせ、都合が悪くなれば観測者からの介入があるでしょうけれど、今回は比較的フリーで動けそうね」
彼女は、そういうと窓の外へと目をやった。
「知っているのか? コリーヌのこと」
「えぇ。私は魔女だからそこはかとなくどっちにもつかないけれどね」
鈴菜の目的は全くと言っていいほどわからないが、邪魔をする気はないということなのだろう。
誠哉もまた、彼女と同じように窓の外に目をやる。
風景はいつの間にか森林に変わり、近くを小川が流れているのが見えた。
馬車に乗っているのは誠哉と鈴菜以外は数人しかいなくて、先ほどまでの活気がウソのようである。
そんな馬車は、森を切り開いて作られた都市に入って行った。




