第百九十三話 予言者の頼み
「……頼み?」
「そうよーちょっと、私のお願い聞いてくれるかしら?」
フローラはのんびりとした口調で語りかける。
「内容にもよるな」
「そうねーだったら、先に言わせてもらうけれど……私たちと手を組まない?」
「たちってことは、預言者と手を組めと」
「そうよーこれは、私たち預言者の総意よ」
彼女は手元の扇子をぱたんと閉じた。
「預言者ね……どうしてまた、ボクと?」
「考えれば、わかるんじゃないかしら? あなたは、マアサ国を引っ張って行く存在よーそんなあなたとお近づきになりたいのは当然じゃない」
そういった途端、フローラの持つ雰囲気ががらりと変わり、小さいながらもしっかりとした声で続ける。
持っている扇子の先を誠哉へ向けられた。
「それとも観測者との方が良かった? まさか、誰の手もとらないなんてことはないでしょうね?」
彼女の言動をみる限り、観測者や預言者は国のトップと手を組むのは当然だということだろう。
誠哉は、フローラの方へゆっくりと歩み寄る。
「あらーこれで握手して成立ってところかしらー」
「いや、ボクは君たち預言者と手を組むつもりはない。もちろん、観測者とも……面倒だけど、断るときも相手の正面に立つほうが好ましいでしょ?」
誠哉の言葉に対してフローラの顔にあからさまに動揺の色が浮かぶ。
「頼みを断ったことがそんなに意外?」
「……知らないわよ。天界とつながりを持たない国がどんな末路をたどるかその身を持って知りなさい」
信じられないものを見るような目つきで誠哉をにらんでいたフローラはピンクの光となって桜が散っていくかのように消えていった。
誠哉は、しばらくその場所をしずかに見つめていたが、再び書棚の方を向いて、本の片づけの続きを始めた。
*
天界のどこかにある部屋にアルドンサとオリーブの姿があった。
「バカね……予言者と手を組まなかったことは幸いだけど、上の助けもなしに成り立たない国なんて存在しないのに……」
「わからないわよ。彼だった今までの常識なんて打ち破ってくれてもおかしくないわよね。そう思う私は彼を買いかぶりすぎなのかしら……」
アルドンサは、小さく笑みを浮かべてオリーブの方をみる。
「えぇ。とんだ大バカ者ね。世界を変えようとするなら、まずは常識にのっとり、それをしっかり理解した上で動かないと痛い目を見るだけよ」
「あら、それをしないからこそ変えられるものがあるんじゃないかしらね」
「どうかしら? 私はそうは思わないけれど?」
そういうと、アルドンサは立ち上がった。
「どこに行くの」
「ちょっとそこまで……すぐに戻るわ」
彼女は踵を返して入り口へと向かった。
「そう。まぁいいわ」
オリーブが紅茶に口をつけたのを横目に見ながらアルドンサは部屋を後にした。
「はぁでも、あいつがいうことも一理ありあもね……」
世界を変えようとするならその世界のシステムについて詳しく知る必要があるというのは、もっともな意見だ。
しかし、それを知ることによって、彼が前に進めなくなるのではないかという心配もある。
それは、この世界のことを知れば知るほど世界の改変がいかに困難か思い知らされることになるのだ。
天界サイドの力は絶対であり、逆らうことは許されない。
その考えが根底にあるからだ。
「……にしても、あいつの言葉も気になるわね」
予言者フローラが残した言葉が少し引っかかっていた。
いや、彼女の言葉に限ったことではないが、オリーブが知る限り、観測者をはじめとする天界と手を組まなかった国を知らないため、その国がどんな運命をたどるかとどうなるかという知識を持ち合わせていないのだ。
「少しおもしろくなりそうね」
観測者が普段していることを考えればなんとなく結果は予想できるがそれは推測の域をでない。
その結果がでるのか楽しみだと感じてしまうのは長い間、観測者という立場に身をおいていたからであろうか?
「せっかくですから、私も楽しませてくださいね。セイヤ」
オリーブの声が誰かに届くことはなかったが、それは確かに下界で国づくりに携わっている青年へと向けられたものだった。
読んでいただきありがとうございます。
前と間隔があいてしまいすいません。
しばらくの間、投稿ペースが落ちると思います。
これからもよろしくお願いします。




