幕間 神様の行方
今回は少し短めとなっています。
マアサ国の首都の一角。
中級層の人々が住むこの地区に最近、新しい人物が住み始めた。
「あら、あなたが最近、ここに住み始めたっていうリーフさん?」
ここの近所に住む女性が声をかけると、前を歩いていた少女が振り返った。
彼女は、白い帽子を深くかぶっていて、その端からは長くて黒い髪がのぞいていた。
「えぇ。そうです」
彼女は、にっこりと笑顔を浮かべる。
観測者を裏切った少女の手引きによってヒトハが天界を脱出してからというもの、人の芽から隠れるように移動していた。
しかし、それでは拉致が開かないと判断したため、リーフという偽名を使ってこの場所に住むことにしたのだ。
運がいいといっていいのか知らないが、近頃ではマアサ国、特に首都周辺へ向けての観測者の介入が以前よりも減っているのだという。
こういった情報自体、入ることが少ないし信ぴょう性も疑わしいものがあるのだが、今行動を共にしている元観測者のアマーリア・ドミティッラ・セルヴァの妹であり、現在も観測者を続けているフィアンマ・ジョイア・セルヴァからの情報なのだから、これは確実なのだろう。
彼女が言うには、近頃、マアサ国内では観測者よりも預言者の力の方が強まっているそうである。
その原因は定かではないが、魔王が死んだことにより、観測者の長であるアルドンサ・マリ・モンテジョルが直接、魔王城へ介入する手段を失ったからということが主因ではないかということだ。
そもそも、観測者が国へ介入するためにはそれぞれのパイプが必要である。
しかし、アルドンサを始めとした観測者にはマアサ国の建国はあまりにも予想外だったのだ。
だからこそ、観測者はマアサ国内……特に中央で急速に力を失いつつあるのだ。
また、もう一つの原因として観測者自体の瓦解があげられる。
オリーブ・ラン・プランターの裏切りを始め、アマーリア・ドミティッラ・セルヴァもオリーブの側に回り観測者を裏切ったのだ。
残りのメンバーもはっきり言って、団結しているとかそういうわけではなく、その状態そのものが観測者の力を弱まらせているのだ。
「まぁこのあたりも大変でしょうけれども……リーフさん?」
「あぁいや、すいません。近頃、引っ越しの片づけやらで忙しくてついついボーとしてしまって……」
女性が心配そうな顔を浮かべているので笑顔で問題ないとアピールする。
「ならいいですけれども……でしたら、今度落ち着いたらみんなでお茶いたしません?」
「いいですね。それでは、また今度」
「えぇ。また今度」
そう言って、お互い別の方向へ向けて歩き出す。
やはり、繁栄しそれにおごってしまったものはいづれ滅びる運命なのだろう。
観測者という組織の立ち上げ当時からアマーリアはその栄枯衰退を見ていたのだろうか。
そもそも、彼女たちの目的はこんなところになかったはずだ。
世界を観測し、世界を均衡に保ち、世界を安定的に発展させる。
それが本来の観測者の立ち位置だ。
「どこで間違ったんでしょうね。神々も観測者も……」
ヒトハは空を見上げて、そうつぶやいた。




