第百七十九話 日本の区割り
図書館を出た誠哉はノエルの部屋へと向かっていた。
そもそも、図書館へと向かった目的はあの本を返しに行くということが一番だったのだが、あそこの図書館を自由に利用できるかどうかということを気にしてのことであった。
たとえば、王宮図書館であれば貸し出しはおろか閲覧……そもそも、出入りすら厳しく制限されている。
それに対して、魔王城の図書館は借りるときに一声かければいいというだけで出入りいや閲覧に制限はかけられていない。
こういった意味では、王宮に比べて蔵書数は圧倒的に少ないが、気軽に訪れられるという意味ではいいのだろう。
「セイヤ様。どこに行かれていたのですか?」
廊下を歩いていた誠哉に声をかけたのはマリナであった。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもありませんよ。ノエル様が探して言いました。支給部屋まで来てくれということです」
「あぁなるほど。まぁ面倒なことに今、偶然にもノエルの部屋に向かっていたわけだけれど、用件は?」
誠哉が聞くと、マリナは小さくため息をついた。
「お忘れですか?」
「お忘れって?」
聞かれてみて、誠哉は空を仰いで考えてみるが思い当たらない。
そもそも、自分がどうしてノエルの部屋に向かっていたのか半ば忘れかけていた。
「区割りの件ですよ。一応、具体的にニホンの例について話すといっていたじゃないですか」
「あぁそうだった。道州制と都道府県の話だよね。ごめんごめん。すぐに向かうよ」
「はい。お願いしますよ」
そういうと、ノエルは頭を深く下げて立ち去っていく。
誠哉は少し急ぎ足でノエルが待っているであろう執務室へと向かった。
*
「遅い」
執務室に入った誠哉を出迎えたのは、そんな一言とあからさまに不機嫌そうなノエルであった。
もともと、ノエルは感情の起伏が少ない印象があったため、彼女のそんな表情を見るだけで緊張が走った。
「あなたが言い出したんですよね? なのに遅れるとはどういった魂胆ですか?」
ノエルはスッと立ち上がって誠哉のほうへと歩み寄ってくる。
「さて、ご説明願いましょうか」
そういって、ノエルは誠哉の顔を覗き込んだ。
「いや、あのボクもいろいろとやることがあるわけで……」
「おや、具体的には?」
「しっ資料集めの為に図書館へ……ついつい時間を忘れてしまいまして……」
図書館へ入っているのでウソではないはずである。
正確には長らく借りっぱなしになっていた魔道書を返却しに行ったのだが……
「まぁいいでしょう。ともかく、遅刻はできる限りやめてください。こちらとしても、待つのは嫌なので」
「はい」
どうやら、ノエルに対しては遅刻は厳禁というのはしっかりと頭に入れておかねばならないだろう。
「それで? 説明して頂戴」
「えっはい。そもそも都道府県というのは日本を四十七の地域に分けてそれぞれを1都1道2府43県に分けたもので、その中でさらに市、町、村の三つに分かれていたんだ。そして、つい最近、都道府県をさらに大きな区域で編成し直したのが道州で北海道と東北州、関東州、中部州、近畿州、中国州、四国州、九州、沖縄州の1道9州と東京都、大阪都、中京都の3都で構成されている行政区割りのことだよ。まぁこれはあくまで一例だから、他にもいろいろな分け方があるけどね」
「なるほどね……参考にさせてもらうわ」
「はい。それじゃ、今度は気を付けるので……失礼します」
「えぇ。また、用事があったら呼びますのでその時はお願いします」
誠哉は、頭を下げて部屋から退室する。
部屋を出た誠哉は、大きく息を吐いた。
「はぁ本当に気を付けないとな……」
誠哉のそんな声は魔王城の長い廊下へと吸い込まれていった。
読んでいただきありがとうございます。
道州制につきましては、自分で集めた情報に少し着色を加えたものとなっています。
これからもよろしくお願いします。




